
おでんのルーツは、田楽だった
そろそろ「おでん」の美味しい時期ですね。「おでん」はお好きですか?私も大好きです。そこで今回は、その「おでん」という名称についての話です。
ご存じの方も多いかもしれませんが、「おでん」は「田楽 (でんがく)」という古くから伝わる芸能から生まれた語です。「田楽」は、田植えの時に田の神をまつるため、笛や太鼓を鳴らして田のあぜで歌い舞った「田舞(たまい)」に始まるといわれています。「田舞」は天智天皇(てんじてんのう)(在位668~671年)の時代には宮中でも行われていたという記録が残っている、古くからある歌舞です。ただ、現在は廃れています。
ではなぜこのように古くからある芸能の名称が「おでん」になったのでしょうか。古くからある「でんがく」という料理は、現在主流の煮込みおでんではなく、焼き豆腐やこんにゃくにみそをつけるものでした。実はそれが語源の謎を解く鍵なのです。

芸能としての「田楽」は、踊り手が白い袴 (はかま) に赤、黄、青など色変わりの上衣を着て、鷺足(さぎあし)、あるいは高足(たかあし)と呼ばれる一本の長い棒の上で舞を演じるものでした。鷺足(高足)には上の方に横木が付けられていて、踊り手はそれに乗って舞を舞うのです。この長い棒の上で舞う姿が、白い豆腐に色変わりのみそをつけた料理に似ていることから、料理も「田楽」と呼ばれるようになったというわけです。
田楽→お田楽→おでん
「おでん」という語は、「田楽」におの字をつけて「お田楽」となり、「楽」を省略して「おでん」となったものです。
煮込みおでんは江戸時代後期に生まれましたが、最初はみそ味だったようです。しょうゆ味のだし汁で煮込んだ今風のおでんは、明治時代になってからのものです。関西では煮込みおでんは「関東煮 (だき)」とも呼ばれていますが、この煮込みおでんが関東に逆移入され、全国的にこの形態になったという説もあります。
ところで「おでん」の種(たね)は何が好きですか?私はがんもどきと大根、ジャガイモなどです。あと、関西の人には謎の食べ物かもしれませんが、「ちくわぶ」も大好きです。「おでん」はその名称の由来も面白いのですが、中に入れる種についての話も楽しいと思います。
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記事監修

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。