「読書感想文」で言葉力に差をつけよう!取り組み方のコツを麻布中学・高等学校国語科教諭が伝授

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言葉の力に差がつく「読書感想文」の取り組み方とは

はじめての読書感想文。ただ原稿用紙を埋めさせるだけではなく、この読書感想文を機に、本の世界へと子どもをいざない、言葉の力を伸ばすには、どんなサポートができるでしょうか?国内屈指の進学校、麻布中学校・高等学校の国語科教諭である中島克治先生に伺いました。

「子どもの心が、本の世界を楽しんで旅しているか?」見守りましょう

Point1 読む本を選ぶ

図書館や書店で「何に興味を持つか?」と観察する

図書館や書店の児童書コーナーにお子さんを連れていって、少しの間、お子さんがどんな行動をとるかと見守ってあげてください。何に興味を持つでしょう? どんな本を自ら手に取るでしょうか? 最近は、子どもが本を自由に読めたり、知育玩具で遊べたりするスペースを設けている図書館や書店もあります。ほかのお子さんが夢中で本を読んでいる様子を見て、学ぶところでもあるのです。

もしお子さんが飽きているようなら、小声で読み聞かせをしてあげましょう。
図書館や書店の読み聞かせ会に参加するのもいいですね。読み聞かせの間、表情を見ていると、どこで子どもが反応しているのかがわかります。子どもは、大人が思ってもみないような意外なところを面白がるものです。

親が読ませたい本を、無理やり押し付けることはできません。それよりも、本を読んだり聞いたりしている間、子どもの心が本の世界をちゃんと楽しんで旅しているかどうか、見守ってあげることが重要です。

子どもが自ら本を手に取りやすくする環境をつくるのも、本を読み始めるきっかけになります。リビングや寝室、トイレなど、子どもの居場所に、見えるように本を置いておくことで、自然と手に取るようになるでしょう。

Point2 感想を書く

誘導尋問より親の〝本当の感想〟が効果的

本を読んで「楽しかった」「面白かった」と思っていても、いきなり感想を言葉にできないお子さんも多いと思います。まずは、親御さん自身がその本を読んで思ったこと、一番よかったところを自然と伝えてあげてもよいでしょう。子どももまねして、自分の思ったことを口に出しやすくなります。

【声かけ例】

1年生だと、感じたことや思ったことがなかなか言葉としてまとまらないかもしれません。自然と引き出された感想の言葉を、一言二言でもいいので、紙に書き出してあげるとよいでしょう。

書いたことを「こう思ったんだね」と確認しながら、さらに話の流れで、「どの部分に対してそう思ったのか」を聞き出してあげると、さらに具体的に書くことができます。

【声かけ例】

こうして子どもの感想が引き出せたら、五〇字でも一〇〇字でもかまわないので、まずは書いて仕上げてしまいましょう。立派なことを書こうとするより、本人が本当に感じたことを言語化するのが重要です。

〝本の世界〟と〝自分の体験〟対話することで豊かな表現に

本の中の世界観に近い体験をすることで、自分と本の世界を重ね合わせることができ、豊かな表現につながることもあります。

たとえば『なつのいちにち』(はた こうしろう作/偕成社)は、暑い夏の日、クワガタのいる山に向かって一心不乱に走る少年を描いた絵本です。夏の青空の下、自然とたわむれながら遊んだ実体験があれば、絵本の中で描かれている情景や、登場人物の解放感が、まるで自分のことのように感じられるでしょう。体験が、その子ならではの感想や言葉を引き出してくれるのです。読書に関連した体験ができると、本の世界をより深く味わい、感想を引き出すことができるかもしれません。

物語を復唱する効果がある「あらすじ」

「読書感想文には、物語の要約を書くべきなのか」と気にされる方もいると思います。あらすじは、必ず書かなければいけないわけではありません。先生ごとに指導方針もあると思いますが、私自身は、文字数を稼ぐためにあらすじを書くのでは、あまり意味がないと思っています。

ただ要約するプロセスの中で、物語を復唱し、再び味わうことには意味があります。1年生ひとりで、長い物語を要約することは難しいかもしれません。先ほどの声かけ例のように「誰がでてきた?」「その人が何をしたの?」「その結果どうなったの?」などとたずねながら、お子さんがうまく物語を自分の中で反復し整理できるように、親御さんがサポートしてあげるとよいでしょう。

読書感想文を書く工程では、なかなかお子さんが言語化できず、親御さんのほうが焦ってしまうこともあるかもしれません。ですが本来は、感想が出てこないほど関心のない本を読ませる必要はないのです。普段からあまり本を読まない、というお子さんなら、難しい本から始める必要はありません。スポーツに興味を持っているのなら、スポーツ雑誌や、活躍している選手の伝記を読んでもいい。興味を持っていることや、現実世界の中で動いていることと本の中の言葉を重ね合わせられると、自然と心が動き出し、言葉にもつながるはずです。

 

Point 言葉の力を伸ばす

言葉の指導より親子で一緒に〝体験〟することが大事

実は、言葉そのものを教えようとするよりも、親子で一緒に共通の体験をすることが、言葉の力を伸ばすことにつながります。

たとえば普段のお手伝いで、洗濯物を畳んでもらったり、料理でできる範囲のことを手伝ってもらったりしてもよいでしょう。もちろん、すべてを手伝ってもらう必要はありません。子どもが楽しんでやりたがるようなことを、やらせてみてあげてください。

親子で同じことをしていると、自然と会話が生まれます。「うまくキャベツがむけたね」「きれいに畳めたね」などと褒める機会も増える。そうした生活の何気ない経験が広がることで、興味が広がり、同時に言葉の世界も広がっていくのです。

ルーティンになってしまうと、子どもも〝やらされている〟と思ってしまいがち。ときどき親のお手伝いをしてもらうくらいがいいかもしれません。

五感が刺激されると言葉が出てくる

親子で一緒にお散歩をするのもオススメです。私自身、雨上がりに子どもと散歩していたら「雨の後の道路のにおいが好き」と言うので驚いた記憶があります。

子どもは、五感で感じたことをふいに喋る瞬間があります。散歩の途中、気になるものを見つけて動かなくなってしまったときも「それ何だろう?」「これは何色?」などと話しかけてあげてください。親御さんがわかっていたとしても、あえて聞いてあげると、子どもは五感で感じたことを表現しようと言葉を探します。あるいは「家に帰って調べてみよう」となり、そこから新たな語彙が身につくこともあるでしょう。

長期休みは、さまざまな体験ができる時間です。花火大会でも、バーベキューでもかまいません。ぜひ、お子さんの心が動きそうなもの、お子さんと一緒に同じことに取り組む時間を作ってあげてください。体験のあとに「あのときこうだったね」と、記憶を掘り起こす時間を作ってあげると、お子さんが感じたこと、考えたことを言葉にするよい機会になるでしょう。

五感で感じたことを言語化するのをフォローしましょう

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