【新連載・榮太樓のお菓子歳時記 】お花見の季節の定番「桜餅」のヒミツ。関東と関西でこんなにちがう!

和菓子には、季節や行事に合わせて四季楽しむ日本人の心が表されています。「白い黄金」と称された貴重な砂糖をつかった和菓子は、まず、富裕層向けに京都で発達し、将軍のお膝元である江戸に広まりました。

文政元年に、江戸・九段に出府を果たした榮太樓總本鋪。およそ160年前に、現在の日本橋の地に店を構えて営業を続け、創業200年を迎えました。和菓子を庶民に届け続けてきた榮太樓本舗がお届けする「和菓子歳時記」。ふだんの暮らしで親しんできた和菓子にまつわるエピソードをお楽しみください。

桜餅は江戸の桜の名所・隅田川から生まれた

「一文字」(奥)の白い皮の餡はこし餡、紅の皮は、小豆餡と白餡を合わせた半小豆餡。「道明寺」は、こし餡(白)、つぶし餡(紅)、こし餡(草)。ちなみに「一文字」の皮は機会ではなく、手焼きにこだわっている。二つのタイプの「桜餅」が、2月中旬から店頭に並ぶ。

 

春と言えば桜。桜を象徴する和菓子といえば桜餅ですね。

東京は向島で生まれた、長命寺の桜餅が発祥とされています。

江戸時代、八代将軍吉宗は隅田川沿いに桜の木の植樹を命じ、隅田川堤は花見の名所となりました。向島の寺、長命寺の門番をしていた山本新六が、隅田川堤の桜の葉が大量に落ちているのを惜しみ、塩漬けを作って、餡の入った皮を包むということを思いつき、餅菓子として売り出したところこれが大層な人気を博して「桜餅」として広まったと伝えられています。

その由来から、桜餅のことを別名「長命寺」とも言うそうですが、皮を焼くときの形が漢数字の「一」の様に見えるところから「一文字」とも呼ばれています。ちなみに榮太樓本舗では「一文字」を通称としています。

関東と関西では、こんなに違う「桜餅」

水で溶いた小麦粉を薄く焼いた生地を皮にして餡をくるむ関東の桜餅「一文字」に対し、関西の桜餅は、ぼってりとしたおはぎのような形です。餅米が原材料の道明寺粉を使って作ることから「道明寺」と呼ばれています。道明寺粉の歴史は古く、河内の道明寺で約千年前から作られていた保存食「道明寺糒(どうみょうじほしい)」が元になっています。

関西では「桜餅」と言えば「道明寺」を指すことが多いようです。なので、関西では、関東で「道明寺」と呼ばれているものを「桜餅」として販売しているお店も多くあるとか。

「一文字」と「道明寺」は、形と皮は違いますが、塩漬けの葉を使っていることは共通しています。

榮太樓總本鋪では、関東版の「一文字」と、関西版の「道明寺」の両方を販売しています。

塩漬けの葉は食べる?食べない?

桜餅をくるんでいる桜の葉は、そのほとんどが、柔らかく毛が少ない伊豆諸島中心に分布する「大島桜(オオシマザクラ)」の葉を使っています。「大島桜」は、桜餅が発祥した江戸時代からあった品種。

現在、桜と言えば「染井吉野(ソメイヨシノ)」が有名ですが、元々あった「大島桜(オオシマザクラ)」と「江戸彼岸(エドヒガン)」の交配種で、明治時代以降に広まった品種です。

桜の生の葉はほとんど香りませんが、塩漬けにすることで、あの独特な香りの成分・クマリンが出て桜餅の風味になるのです。因みに榮太樓總本鋪では、夏の風物詩の「水ようかん」にも同じ大島桜の葉を使っています。

ところで、この「塩漬けの桜の葉」は食べていいのかが気になりますよね?

店頭でもよくお尋ねいただくのですが、食べ方に正解はありません。

葉をはがして食べて、最後に口直しに葉の先をかじる、というこだわりの食べ方をされる方もいらっしゃるとか。

どうぞ、お好きな食べ方で楽しんでください。

 

餅に移った桜葉の香りを楽しむことも、甘い餅と一緒に葉の塩味を楽しむこともできる「桜餅」。
お花見に彩りを添える定番のお菓子を、今年も味わってください。

 

監修:榮太樓總本鋪(えいたろうそうほんぽ)の歴史は、代々菓子業を営んできた細田家の子孫徳兵衛が文政元年に江戸出府を果たしたことに始まります。最初は九段で「井筒屋」の屋号を掲げ菓子の製造販売をしておりました。が、やがて代が替わり、徳兵衛のひ孫に当たる栄太郎(のちに細田安兵衛を継承)が安政四年に現在の本店の地である日本橋に店舗を構えました。数年後、自身の幼名にちなみ、屋号を「榮太樓」と改号。アイデアマンであった栄太郎は代表菓子である金鍔の製造販売に加え、甘名納糖、梅ぼ志飴、玉だれなど今に続く菓子を創製し、今日の基盤を築きました。

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構成/HugKum編集部 イラスト/小春あや

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