コロナ禍で外出を控えがちになり、小児科への受診が3割ほど減っているという報道がありました。乳幼児健診や予防接種も控えておこうと考えている方も多いかもしれませんが、厚生労働省は予定通りの受診や接種を勧めています。特に予防接種は遅らせることで赤ちゃんの免疫がつくのが遅れてしまうので注意しましょう。今年10月からこれまでの任意接種から定期接種となった、ロタウィルスワクチンの必要性や気になる副反応について、予防接種に詳しい崎山小児科院長 崎山 弘先生に聞きました。
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今年8月1日以降に出生した赤ちゃんは、ロタウィルスワクチンが「無料」で接種できるように
2020年10月1日から、ロタウィルスワクチンが定期接種になり無料で受けられるようになりました。対象は2020年8月1日以降に生まれた赤ちゃんで、1回目の接種は生後14週6日(生後3ヵ月半過ぎ)までに受けなくてはいけません。対象の赤ちゃんは受け忘れがないように注意しましょう。
ロタウィルスワクチンは2種類。1回目はどちらも生後14週6日までに接種を
ロタウィルスワクチンは、2種類あります。どちらも口から飲むタイプの経口ワクチンで、効果は同じです。
[ロタリックス]1価・2回接種
1回目は、生後14週6日(生後3ヵ月半過ぎ)まで。2回目は、4週間隔で生後24週(168日)までに接種を完了する。
[ロタテック]5価・3回接種
1回目は、生後14週6日(生後3ヵ月半過ぎ)まで。4週間隔で3回受け、3回目は生後32週(224日)までに接種を完了する。
どちらも定められた月齢以降は、接種ができないので注意してください。
ロタウィルスは感染力が非常に強く、乳幼児がかかると重症化しやすい傾向が
これから迎える冬が流行期。生後3カ月~2歳が最もかかりやすい年齢
ロタウィルスワクチンを受けると、ロタウィルス胃腸炎になっても重症化が防げます。ロタウィルス胃腸炎は、ロタウィルスによって引き起こされる急性の胃腸炎で感染力が非常に強いのが特長です。とくに乳幼児はかかりやすく、大人よりも重症化しやすいです。最もかかりやすい年齢は生後3ヵ月~2歳ごろです。また5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウィルスが原因とされています。流行時期は冬~春です。
主な感染経路は接触感染です。たとえば感染者のふん便や嘔吐物の処理後に手洗い・手指消毒が不十分だと、手指を介して感染が広がります。また部屋で嘔吐したときなどに掃除や消毒、換気が不十分だとウィルスが乾燥して空気中に舞い、空気感染することもあります。
かかったときの症状は
症状は、白っぽい水のような下痢、吐き気、嘔吐、発熱、腹痛などです。回復には1週間程度かかりますが、脱水症状がひどくなると点滴や入院が必要です。
また厚生労働省のホームページでは、ロタウィルス胃腸炎による死亡者は、日本国内で毎年2~18名と発表されています。主な死因は、けいれんや意識障害を起こす脳炎・脳症です。「単なる胃腸炎」と考えるのは間違いです。
ロタウィルスワクチンは、ヒブワクチンなどとの同時接種が一般的
1回目のロタウィルスワクチンは、ヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎ワクチンと同時接種することがほとんどです。同時接種は日本では2011年から始まりましたが、以前から海外では一般的に行われていました。
同時接種のメリットは、
①予防接種のスケジュールが立てやすい
②小児科に行く回数が減らせる
③必要な免疫を早くつけられる
④体調不良による接種の延期を防ぎやすい
⑤予防接種の受け忘れを防げる
などです。
「一度に、何本も注射を打つなんて可哀想」と思うお母さんもいるかも知れませんが、泣くのは一瞬のことです。また日本では、同時接種が原因による重大な副反応は起きていません。
接種後は、腸重積症に注意! 1週間は子どもの様子をよく見ましょう
ロタウィルスワクチンを受けた後、注意して欲しいのは腸重積症です。
腸重積症は、腸の中に腸の一部が入り込む病気です。ロタウィルスワクチン接種後は、通常より腸重積症のリスクがやや高まるため、接種後1週間、とくに接種後3~4日は子どもの様子をよく見ましょう。次のような様子がいくつか同時に見られたら、大至急受診してください。
次のような様子に注意を!
□機嫌がよかったり、不機嫌になったりを1時間の間に何回か繰り返す
□複数回、嘔吐する
□いちごジャムのような血がうんちに混じっている
□顔色が悪い
ロタウィルス胃腸炎を防ぐのに、最も効果的なのが予防接種です。かかりつけ医を見つけるいい機会と考えて
新型コロナウィルスの感染を心配して「できたら小児科に予防接種を受けに行きたくない」と考えるお母さんもいるかも知れません。しかしロタウィルス胃腸炎は、乳幼児の場合、家族からうつりやすい病気です。幼稚園や保育園、小学校などで集団生活をしている上の子がいるご家庭は、さらに注意が必要です。
ロタウィルス胃腸炎を防ぐのに、最も効果的なのが予防接種です。
また多くの小児科クリニックは、院内感染を防ぐために一般診療と予防接種の時間帯を分けています。。
ロタウィルスワクチンは、1回目を生後14週6日までに受けるため“初めての小児科”と言うお母さんもいると思いますが、かかりつけの小児科を見つけるいい機会と捉えてください。予防接種を受けながらクリニックの雰囲気や医師・スタッフの対応などをよく見て、かかりつけ医に適しているか判断するといいでしょう。
記事監修
崎山小児科院長 崎山 弘先生
三重大学医学部卒業後、東京大学病院小児科、都立府中病院小児科などを経て、1989年に崎山小児科を開業。国内における乳幼児の予防接種の治験(新しいワクチンの安全性と有効性を確認するための調査)に協力。ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合、日本脳炎、ロタ、インフルエンザなど数多くのワクチンの治験を行う。また全国の予防接種率、予防接種の事故予防について調査・研究を行っている。著書は「予防接種の事故防止ガイド」(健康と良い友だち社)ほか。
取材・構成/麻生珠恵