三浦春馬最後の主演映画『天外者』が、本日公開
三浦春馬最後の主演映画『天外者』が、本日12月11日(金)より公開となりました。タイトルの“天外者(てんがらもん)”は、鹿児島の方言で「すさまじい才能の持ち主」を意味しますが、映画を観ると、いろんな意味で三浦さんにふさわしい役どころだったのではないかと、いろいろな想いがこみ上げてきます。
三浦さんが演じたのは、薩摩藩士から明治政府役人を経て、商都大阪の礎を築く実業家、五代才助こと、のちの五代友厚役です。来年スタートする吉沢亮主演の大河ドラマ『青天を衝け』の主人公は、新一万円札の顔としても知られる実業家の渋沢栄一ですが、「東の渋沢栄一、西の五代友厚」と称されるほど、五代も日本経済において多大な功績を残したキーマンです。お茶の間では、NHKの朝ドラ「あさが来た」で、ディーン・フジオカが演じたことも記憶に新しいところです。
激動の幕末から明治初期を駆け抜けた才助は「名もいらぬ、実もいらぬ、ただ未来のために」と、大胆な発想力と恐れを知らぬ行動力で、自らが信じる道を駆け抜けました。彼の盟友となるのが、坂本龍馬(三浦翔平)と、三菱財閥を築いていく岩崎弥太郎(西川貴教)、のちに初代内閣総理大臣の伊藤博文となる利助(森永悠希)らで、才助は彼ら3人と志を共にしていきます。
監督が三浦春馬を絶賛「あんなにきれいな大人になれるものなのか」
メガホンをとったのは、『利休にたずねよ』(13)や『海難1890』(15)の田中光敏監督ですが、三浦春馬さんのキャスティング理由について「大人の男性の魅力がある。美しくて芯をしっかり持っている役者なので、彼に五代友厚をぜひやってもらいたいという思いがありました。あんなにきれいな大人になれるものなのかっていうのが、最初に会った時の第一印象でした」と語っています。
確かに、才助の一点の曇りもないきれいな眼は、三浦春馬さん自身の魂の美しさを感じさせます。どんな時も決して私利私欲に走ることなく、視野を世界に見据え、日本社会の未来を信じて行動していく才助。スクリーンに映し出された雄姿には、非常に説得力を感じます。
才助たち4人が牛鍋を囲み、互いの夢を語り合うシーンが生き生きとした若さのきらめきを感じさせ、なんとも味わい深いです。残念ながら、坂本龍馬は志半ばで命を落としてしまうことは周知のとおりですが、その後、才助は友が果たせなかった夢も背負っていくことに。また、途中で袂を分かつことになる岩崎弥太郎は、その後に大阪で商会を設立していきますが、後半には才助との大一番が用意されていますのでお楽しみに。
観終わったあと、余韻が深まるラストシーン
奇しくも、ラストシーンは非常に静かですが、人のために尽力しつくした五代友厚の人となりが感じられる感慨深いシーンとなっています。恐らく映画を観た人は、友厚が残した功績を改めて目にすると共に、生前の三浦春馬さんを偲び、深い余韻に包まれるのではないかと思います。
公私共に春馬さんと交流が深かった三浦翔平さんは、舞台挨拶で「このあと、上映をご覧になったあと、きっといろんな感情を受け取ると思いますが、どうか彼の熱量を、必死に生きた五代友厚の熱量を、しっかり目に焼き付けて帰ってほしいです」とおっしゃっていました。
私もこの映画を観たあと、2つのことを思いました。1つは、まだまだ続くコロナ禍において、このような誠実な作品を残してくれた三浦春馬さんに、改めて哀悼の意を表したいという気持ち、もう1つはスクリーンのなかで永遠に生き続ける三浦春馬という名優の熱演を、今後何度でも観続けていこうという想いでした。本作は、未来への希望を託す映画でもあるので、ぜひ親子でも観にいっていただきたい映画です。
監督:田中光敏 脚本:小松江里子
出演:三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵/蓮佛美沙子 生瀬勝久…ほか
公式HP:https://www.tengaramon-movie.com
文/山崎伸子
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