NPO法人Safe Kids Japan代表を務め、小児の傷害・事故予防を専門とする山中龍宏先生に、家の中で起こりやすい事故の応急処置について伺いました。
もし、子供が倒れて息をしているかわからない状況になったら、どうしたらいいでしょう。
心臓や呼吸が止まり、脳への血流がとだえると5分で生命が危うくなります。救急車も5分では到着できないので、ひるまずに救命処置をとりましょう。救命講習は地域の消防署や保健所、町内会 などでも開催されるので積極的に参加して体験しましょう。
呼びかけても子供の反応がない!
応援を頼み、胸骨圧迫(心臓マッサージ)スタート
119番に電話して救急車を呼ぶと同時にやるべき応急処置を聞く。近くにAEDを備えた施設があれば、持ってきてもらう。
「救急車を呼んで! AEDを探して!」
「わかった!」
胸骨圧迫(1歳以上の方法)
呼吸がないとき、おかしいときは、胸骨を強く早く押して、血流を促す。基本は「強く早く絶え間なく」。両手を重ねて指を組んで押すが、片手でもかまわない。子どもの胸の厚さの3分の1まで沈む強さで1分間に100回が目安。
※通常時は子どもを相手に練習してはいけません。
胸の真ん中を
手のひらの根元で
胸の厚さの 1/3沈むくらい
強く早く 絶え間なく行う
1分間に100回以上押す
■人工呼吸ができる場合
胸骨圧迫30回
くり返す
人工呼吸2回
胸骨圧迫だけでも救命率が上がるが、可能なら人工呼吸を組み合わせる。あごの先を持ち上げて頭を後ろにそらせて、気道を確保。子どもの鼻をつまみ、自分の口を大きく開けて子どもの口をすきまなく覆う。子どもの胸が上がる強さで1秒間息を吹き込んだら口を離す。これを2回くり返し、変化がなければ胸骨圧迫に戻る。
■AEDが使える場合
AEDは心臓の状態を自動的に判断、必要な場合に電気ショ ックを与える医療器具。ふたりいれば、ひとりが電極パッドをつける間にも胸骨圧迫を続ける。電源を入れ、音声ガイドの指示に従う。電気ショックの指示があれば、子どもから離れるが、その後はすぐに胸骨圧迫を再開する。
子供が誤飲した!
基本的に吐かせるが、下の場合は吐かせずに急いで病院へ ! 判断に迷うときは医療機関に問い合わせる。
■こんなときは吐かせないで、すぐ病院へ!
磁石・ボタン電池
ボタン電池は、30分〜で腐食が始まる。磁石は腸を挟んでくっつくと、腸に穴があくこ ともあり危険。
除光液・灯油
ガソリンやシンナーなどは揮発性のガスを吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある。
漂白剤・トイレ洗剤
強力な酸性・アルカリ性のものは吐かせると食道などにも被害が拡大する。パイプ洗浄剤も同様。
ピアス・画鋲
ホチキスの針、ガラスの破片も同様に、とがったものはのどを傷つける危険がある。
中毒110番
公益財団法人日本中毒情報センターによる電話情報サービスです。化学物質やたばこ、動植物の毒などによる急性中毒が対象。情報提供は無料。通話料は自己負担。
大阪 072-727-2499(365日24時間対応)
つくば 029-852-9999(365日9~21時対応)
たばこ専用電話 072-726-9922(365日24時間対応)※テープ方式
子供ののどに何か詰まった!(気道異物)
呼吸があるかないかで対応を変えて
呼吸ができている→無理に叩いたり、ゆすったりせず病院へ
呼吸がない→救急車を呼び、下の処置をくり返す
反応がなくなったら→左図の胸骨圧迫に移る
1歳以降は上腹部をつきあげる
後ろからかかえ、子どものへその上あたりで片手を握りこぶしにし、その手をつかんで一気に上に押し上げる。
乳児からは背中を叩く
ひざの上で子どもをうつぶせにする。頭が胸よりも低くなるようにして、手のひらの根元で背中をし っかり叩く。
子供がやけどした!病院は?
すぐに流水で患部を冷やす
20~30分流水にあてて冷やす。服の上からやけどしたとき、服は無理に脱がせずに服の上から流水をかける。発熱時の冷却シートや軟膏類は使用しないこと。水ぶくれは破らないようにする。
本人の手のひらより広い やけどは、すぐ病院へ
範囲が広いときや、関節部分、手のひら、顔のやけどは、患部を冷やしながらすぐに医療機関を受診する。患部の色が白や黒になっているときも重症なので、受診すること。
救急車の呼び方
119番に電話する。消防車と同じ番号なので「救急車をお願いします」と伝える。住所と目印を伝えるが、携帯電話の場合は都道府県名も言う。患者の年齢や状態、通報者の氏名を伝え、応急処置の指示を受ける。
判断に迷うときは・小児救急電話相談事業 ♯8000に電話
♯8000では、医師や看護師が夜間休日の小児救急電話相談に応じている。ただし、自治体によって時間帯など対応が異なる。地域の救急指定病院やかかりつけの医師にも相談を。
お話をうかがったのは
記事監修
事故による子どもの傷害を予防することを目的として活動しているNPO法人。Safe Kids Worldwideや国立成育医療研究センター、産業技術総合研究所などと連携して、子どもの傷害予防に関する様々な活動を行う。
出典:『ベビーブック』2017年5月号