ナメたら怖い、子どもの人生の質を左右するお口の機能
ママやパパのがんばりのおかげか、近年、子どものむし歯は減少傾向にあります。しかし、堀先生によると、子どもの口に関しては、むし歯だけではなく、しっかり噛むことができるか、唾液がよく出ているか、舌は正しい位置でよく動いているか、など、気をつけたいことがいろいろあるそうです。
口腔機能というと「食べる機能」だけを思い浮かべがちですが、「話す」「呼吸する」機能にもかかわっているとのこと。食べる機能が育たないと、成長に必要な栄養摂取が不安になりますし、話す機能が十分育たなければ、コミュニケーションや学習面に悪影響が及びます。鼻で呼吸できず口呼吸になると、むし歯や歯周病が起こりやすくなるほか、集中力の低下なども懸念されます。つまり、歯のケアは、歯だけで完結せず、子どもの人生の質そのものも左右するのです!
近年、寿命は大幅に伸び、私たちは約80年もの長い間、永久歯を使うさだめにあります。堀先生は、「子どもが一生使える永久歯列をつくることを目指してほしい。子どもが高齢者になったとき、よく噛める歯と口でよかった、パパやママが歯や口を大事にしてくれたおかげだ、と思ってもらえるように、子どもの歯や口を大切にしてほしい」とエールを送ります。
一生ものの歯や、歯並びは、食べ物で決まる?
一生使える永久歯列をつくるには、「親がしっかりとした食生活を子どもにさせること」と、堀先生はいいます。
こんな実験があるそうです。
加工食品を排除した原始時代と同じような食事をし、歯磨きをしない生活を山の中で数十人が行い、その前後で歯や口の細菌の状態を調べたところ、実験前に歯周病だった人の歯ぐきの状態が改善したとか。つまり、食べるものの質によっては、むし歯・歯周病も咀嚼回数の減少も、問題にはならないことがわかります。ということは、加工食品に頼らざるをえない私たちの食生活では、予防と咀嚼させる工夫が重要ということ!
「よく噛むことのほか、よい食習慣を身につけることも大切」と、堀先生の、耳が痛いお話は続きます。
う~ん、もう何度も口酸っぱく言われていることですが、実際に30年以上も患者のお口を見つづけている歯医者さんである堀先生に言われると、説得力が違うかも……。そのほか、デンタルケアを怠けると全身の健康に大いに影響を及ぼす怖いお話や、歯磨きだけでなく歯間ブラシの正しい使い方や舌そうじのやり方、さらにマスク生活ですっかり衰えてしまったお口周りの筋肉を生き返らせる“お口の筋トレ”法など、もっとデンタルケアについて知りたい方は堀先生の最新著書『ウイルスも認知症も生きづらいのも、すべて歯のせい?』をおすすめします。
健康寿命にふかくかかわるお口ケアの教科書 誕生!
「歯の調子が悪ければ、歯医者さんにいけばいい。自分でできるのは歯磨きくらい」というあなた。その考え方、時代遅れです!!
アメリカでは、Floss or Die?(フロスしますか、それとも死にますか)というスローガンもあるほど、歯と全身の健康はふかく結びついているのです。なんと、ウイルスによる感染症・心臓病・肺炎・がん・認知症の原因にも!
しかもコロナ禍で、私たちは一年中マスクを装着。口腔ケアのプロである歯科医は警告します、「今が人類史上、最悪な状態」!
この本を読んで、今こそ健康寿命も人生も、好転させましょう。
記事監修
堀滋(ほり・しげる)
1959年生まれ。日本大学松戸歯学部卒業。昭和大学歯学部付属歯科病院口腔外科勤務ののち、日本橋中央歯科診療所などを経て、堀歯科診療所を開設。診療の傍ら、スウェーデンのイエテボリ大学で実践されている歯周病臨床実践コース、同アドバンスコース、ペンシルバニア大学アドバンスインプラントコース受講など、海外の最新治療を学び、治療に取り入れている。2021年、全身の健康につながる医療を追求するため、東京都港区内に自由診療専門のサウラデンタルクリニックを開設。院内には、顔まわりから全の筋肉ケアのためのリラクゼーションサロンも併設。テレビ朝日『林修の今でしょ!講座』などに出演。著書に『歯のメンテナンス大全 人生100年時代の正しいデンタルケア88のリスト』(飛鳥新社)。