食物蛋白誘発胃腸炎は、元気だった子が急に激しい嘔吐を繰り返すのが特徴
食物蛋白誘発胃腸炎は、近年、増えている食物アレルギーの1種です。しかし一般的な食物アレルギーとは異なります。
一般的な食物アレルギーは、アレルギーの原因物質を食べると30分~1時間ぐらいで、じんましんや赤み、かゆみなどの皮膚症状をはじめ、くしゃみ、咳、ゼーゼーするなどの呼吸器症状が主に見られます。
しかし食物蛋白誘発胃腸炎は、アレルギーの原因物質(乳製品、大豆、卵黄、お米など)を食べると1~4時間後に、急に顔色が悪くなり、激しい嘔吐を繰り返すのが特徴です。嘔吐は1日でおさまりますが、そのあと下痢が続くこともあります。一般的な食物アレルギーのように皮膚症状や呼吸器症状は見られません。また、アラフィラキシーショックを起こすこともありません。
元気だった子が、急に激しく吐き続けたときは食物蛋白誘発胃腸炎を疑ってみましょう。
近年は、卵黄が原因で発症する子が増えている
牛乳以外の固形食物によって誘発される食物蛋白誘発胃腸炎の症状は、離乳食を始める5ヵ月以降から多く見られます。牛乳、大豆、お米のほか、近年は卵黄によって症状が誘発される子が増えています。加熱不足などは関係ありません。
こうしたことを言うと「怖いから、離乳食で卵は与えないほうがいい」と考えるママやパパもいるかもしれませんが、ご両親の判断で除去などはしないで、離乳食の基本に沿って適切に進めてください。
万一、離乳食を食べて1~4時間後に激しく嘔吐をしたら、吐く前に何を食べたかメモしておきましょう。離乳食日記をつけておくといいでしょう。同じことがもう一度、起きた場合は受診してください。
上記の図は、一般的な卵アレルギーと食物蛋白誘発胃腸炎の違いを表しています。一般的な卵アレルギーは、主に卵白を食べることでじんましんなどのアレルギー症状が誘発されます。一方、食物蛋白誘発胃腸炎は、主に卵黄を食べることで、激しい嘔吐などのアレルギー症状が見られます。
「おかしい!」と思ったら、小児アレルギー専門医がいる病院へ
食物蛋白誘発胃腸炎を疑う場合は、小児アレルギー専門医がいる病院を受診しましょう。食物蛋白誘発胃腸炎は、まだ一般的に広く知られている病気ではないので専門医でないと診断がつきにくいです。小児アレルギー専門医がいる病院は、厚生労働省と一般社団法人日本アレルギー学会が運営するアレルギーの専門サイト「アレルギーポータル」の「医療機関情報」から「アレルギー専門医」を検索できます。
小児アレルギー科を受診した際には、症状や嘔吐する前に何を食べたか聞かれるので離乳食日記を持参するといいでしょう。
血液検査や、皮膚ブリックテストでは診断できない
一般的な食物アレルギーでは、血液検査(特異的IgE抗体)や皮膚プリックテストが診断の参考になりますが、食物蛋白誘発胃腸炎では血液検査や皮膚プリックテストは参考になりません。確定診断をするには、アレルギーの原因が疑われる食物を実際に食べて症状の有無を判定する食物経口負荷試験を行うこともあります。
診断がついた場合は、除去食が中心の治療法
また、食物蛋白誘発胃腸炎は、実はまだ治療法が確立されていません。そのため診断がついた場合は、医師の指示に従い、正しく除去食をすることが中心になります。成長するに従い、アレルギー反応がおさまっていくこともあるので、定期的に受診や検査をして経過を見ていくことが必要です。
記事監修
森田英明先生
医学博士。2001年慶應義塾大学医学部卒。専門分野は小児科学、アレルギー学、免疫学。
取材・構成/麻生珠恵