円安と円高の違いを解説
円安も円高も、経済ニュースでよく見聞きする言葉です。どちらも日本円に関する話題ですが、「安い」と「高い」では何が変わるのでしょうか。
【円安】円の価値が下がること
円に限らず、通貨の価値は他の通貨との比較で決められます。基本的な比較対象は、国際通貨の中心であるドルです。
円安とは、ドルに比べて円の「価値」が下がっている状態です。例えば、アメリカ旅行に行くのに1000ドル必要だと仮定しましょう。
1ドルが何円に相当するのかを表す、通貨間の交換比率を為替レートといいます。為替レートが1ドル=100円前後で推移している時期なら、銀行や空港に10万円持って行けば1000ドルと交換できます。
しかし、1ドル=110円になると、1000ドルとの交換に11万円払わなくてはなりません。ドルに対して円の価値が下がったことで、円安となったのです。
【円高】円の価値が上がること
円高とは、円安とは逆に円の価値が高い状態を指します。
為替レートの例でいえば、1ドル=100円だったものが、1ドル=90円になった状態です。このときは、9万円あれば1000ドルと交換できます。1ドル=110円のときに比べると、円の価値がずいぶん上がったことが分かるはずです。
ただし、人によっては、なぜ90円のほうが110円より「高い」のか分からず、混乱してしまうかもしれません。
1ドルに対する円の値段が安いほど「円の価値が高い」という意味ですので注意しましょう。
円安のメリット・デメリット
円安になると、私たちの生活にどのような影響があるのでしょうか。円安のメリット・デメリットを解説します。
輸出産業の利益が増える
円安では外国における日本製品の価格が下がり、輸出品がよく売れるようになります。
10万円の商品を日本から輸出する際、1ドル=100円のときは1000ドル、1ドル=110円だと約909ドルになるのです。
また、アメリカで販売中の商品が1000ドルで一つ売れた場合、輸出元の日本企業の売上は以下のように変わります。
・1ドル=100円のときは10万円
・1ドル=110円のときは11万円
企業側が何もしなくても、円安になっただけで利益が増えることになるのです。円安は輸出産業にとって、強い追い風といえるでしょう。
また、海外資産を所有する個人にとっても、円安はメリットがあります。海外資産で得られる収益を日本円に換算すると、円安になるほど金額が増えるのは明らかです。
国内の物価が上がる
一般消費者にとって、円安はデメリットのほうが大きいかもしれません。円安になると、これまで10万円で輸入していた1000ドルの商品が、11万円に値上がりしてしまいます。
円安になる前の価格で販売すると輸入業者の利益が減ってしまうため、販売価格も上げざるを得ません。
日本はさまざまな物資を外国からの輸入に頼っているため、円安が続くと国内の物価が一気に上がってしまう可能性があるのです。
小麦や油、衣類などの生活必需品も例外ではなく、家計が苦しくなるおそれがあります。
円高のメリット・デメリット
円高は個人的にうれしいメリットがある反面、長引くと日本経済に悪影響を及ぼします。円高がもたらすメリット・デメリットを見ていきましょう。
輸入品を安く買える
円高になると、外国の製品やサービスをより安く利用できます。輸入業者は、10万円で仕入れていた1,000ドルの商品を9万円で仕入れられるので、販売価格を下げても利益が出ます。
そのため、国内の物価が下がり、個人の生活にもゆとりが生まれるでしょう。海外旅行がお得になるのも、円高のメリットの一つです。
例えば、アメリカ旅行に行くとき、1ドル=90円なら10万円で約1,110ドルと交換できます。1ドル=100円のときよりも旅先で使えるお金が増え、いつもよりぜいたくな旅行ができます。
海外資産の価値が下がる
円高のデメリットは、主に以下の3点です。
・海外資産の価値が下がる
・日本製品が売れない
・来日する外国人や、外国人が日本で使うお金が減る
海外資産を持っている個人は、円高になることで日本円に交換したときの収益が減ります。また、日本の大企業の多くは自動車産業をはじめとした輸出がメインなので、海外で商品が売れなければ業績が悪化し、経済全体に影響が出ることもあります。
そのほか、円高では日本円に交換したときの金額が通常よりも少なくなるため、外国人観光客が減ってしまい、観光地にとっても厳しい状況となるでしょう。
円安・円高になる理由
為替レートは日々変化しており、あるタイミングで急激に上下することもあります。一体どのようにして決まるのか、円安・円高になる主な理由を見ていきましょう。
国境を越えた投資
外国の銀行に預金したり株を売買したりする国際的な金融取引は、為替レートに影響を与えます。外国に投資する場合、自国の通貨を投資対象の国の通貨に換える必要があるからです。
例えば、アメリカ人が日本の銀行に預金、または日本の株を購入するときは、ドルを円に換えます。逆に、日本人がアメリカで同じことをしようとすれば、円をドルに換えなくてはなりません。
アメリカから日本への投資額が、日本からアメリカへの投資額を上回ると、円の需要が増えて円高になり、逆の場合は円安になるのです。
近年は金融のグローバル化が進み、国境を越えた投資が活発になっているため、為替レートに与える影響も大きくなっています。
日本の輸出の増加
貿易も、円安・円高を引き起こす理由の一つです。貿易では基本的にドルで決済するため、輸出企業は受け取ったドルを円に換えることになります。
反対に、輸入企業は円をドルに換えてから商品代金を支払います。そのため、輸出量が増えれば円の需要が増えて円高に向かい、輸入量が増えると円安に向かうのです。
日本を訪れる旅行者や、インターネットで日本の製品・サービスを購入する外国人の増減も、企業の貿易と同じように考えることができます。
インフレ率が影響
インフレとは、物の価値に対してお金の価値が下がることです。例えば、1パック100円で買えた卵が200円になった、と考えると分かりやすいでしょう。
アメリカでインフレが起こった場合はドルの価値が下がるため、相対的に円高となります。逆に、日本でインフレが起これば円安傾向となります。
このように、投資や貿易といった通貨の需要に関係なく、国内の物価の動向が為替レートに影響するケースもあることを覚えておきましょう。
金利差が要因に
国によって金利に差があるのも、円安・円高の要因です。
預金や投資をするときは、多くの収益を得るために、金利が高いほうを選ぶのは基本です。そのため、国際間での取引においては、金利の高い国に人気が集中します。
例えば、アメリカと日本で同じ期間の国債が発行された場合、アメリカ国債のほうが金利が高ければ、円をドルに換えてアメリカ国債を買う日本人が増えるでしょう。
他の国の人も、日本国債ではなくアメリカ国債を投資先として選ぶはずです。こうなると、ドルの需要がどんどん上がって、円の価値は下がっていきます。
生活に影響が出る円安・円高について知っておこう
円の価値が他の国の通貨に対して変化する仕組みは、国際的な経済感覚を身に付ける上で欠かせない知識の一つです。
円安・円高の意味や起こる理由、メリット・デメリットを理解して、将来を担う子どもたちにしっかりと伝えてあげましょう。
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文・構成/HugKum編集部