誤嚥による窒息で亡くなった子は6年間で70名にも。改めて振り返りたい、丸飲み・ほおばる食べ方の危険性

厚生労働省の人口動態調査によると、2014年から2019年の6年間に、食品を誤嚥して窒息したことにより亡くなった子は、14歳以下では80名にのぼります。そのうち5歳以下は73名で9割を占めていました。食品の誤嚥事故を防ぐ方法や万一、のどに詰まった場合の対処法について、子どもの事故に詳しい、大阪大学人間科学部 安全行動学研究分野 特任研究員 岡真裕美先生に聞きました。岡先生は、子どもの事故について保護者向けに幼稚園や小学校でも講演会を行っています。

節分の豆や大粒のぶどうを誤嚥して亡くなった子も

2020年2月、島根県の認定こども園で、節分の豆まきをしたところ4歳の子が豆を詰まらせて亡くなった事故がありました。死因は、大豆が気道に詰まったことによる窒息です。

2020年9月には、東京都の幼稚園で、4歳の子が給食で出たぶどう(直径約3cm)を詰まらせて亡くなっています。この子は意識不明のまま救急搬送されて、約1時間半後に亡くなったそうです。

消費者庁などが注意喚起を促しても、ママやパパには情報が届きにくいのが課題

硬い豆やナッツ類は、5歳以下の子どもには食べさせてはいけないって知っていますか?

こうした誤嚥事故が起きるたびに、消費者庁などからは注意喚起が促されますが、残念なことに情報が行き渡らず、注意喚起が周知徹底されないのが現状です。

2020年2月に発生した、節分の豆を詰まらせて亡くなった子の事故以降、消費者庁や専門家らは、事あるごとに5歳以下の子どもには硬い豆は食べさせないように注意喚起を促しています。

しかし、私が子育て・教育関係の部署にいる某県職員約100名が出席する講演会に登壇した時、県職員に聞いた際のことですが「硬い豆やナッツ類は、5歳以下の子どもには食べさせてはいけないって知っていますか? 知っている人は手を挙げてください」と言ったところ、手を挙げたのはわずか3人でした。

保護者向けの講演会でも「硬い豆やナッツ類は、5歳以下に食べさせてはいけないなんて知らなかった!」という声が多く聞かれます。

誤嚥に限らず子どもの事故の情報は、報道などで大きく取り上げられないと周知徹底されにくいという課題があります。

“口いっぱいにほおばるのは危険な行為”という認識をもって

子どもの誤嚥事故は、珍しい食べ物を与えて起きている訳ではありません。一般的に食卓に並ぶ食ベ物で起きているので、ママやパパには他人事とは思わないでほしいです。

またSNSで、口いっぱいにほおばっているわが子の写真を「かわいい!」「おもしろい!」などと紹介してるママ、パパもいますが、窒息につながる危険な行為ということをわかってください。

誤嚥しやすい食べ物は、与え方に要注意!

日本小児科学会では、子どもの誤嚥事故を防ぐために次のような食品には注意するように呼びかけています。

【丸いもの】

プチトマト、ぶどう、さくらんぼ、うずらの卵、球形のチーズ、カップゼリー、ソーセージ、こんにゃく、白玉だんご、硬い豆類など

これらの食品を与えるときは、1/4にカットしたり、ソーセージは縦半分に切るなど、小さくしてひと口ずつ与えましょう。料理にはこんにゃくは使用せず、代わりに1cmぐらいに切った糸こんにゃくを使いましょう。硬い豆やナッツ類は5歳以下には与えないでください。

 【飲み込みづらいもの】

もち、ごはん、パン類、焼き芋、カステラ、せんべい、のり、煮魚、ゆで卵など

これらの食品を与えるときは、水分を摂ってのどをうるおしてから、ひと口ずつ与え、よく噛んで食べるように伝えましょう。のりは刻みのりにしたり、ゆで卵は細かくしてあえるなどしたほうが安心です。

【噛み切りにくいもの】

エビ、貝類、りんご、イカ、肉類、生のにんじん、キノコ類、グミなど

これらの食品を与えるときは、小さく切って与えましょう。エビ、貝類は2歳以上から、グミは4歳以上から与えましょう。

また理想は食事中に子どもから目を離さないことですが、家事などで目を離すときは、誤嚥の危険性がない食べ物を出すようにしましょう。

誤嚥による死亡事故は小学生でも。家庭で、のどや気管に詰まらない食べ方を伝えて!

誤嚥は、乳幼児特有の事故ではありません。20217月には、新潟県の小学校で5年生の子が給食のパンを詰まらせて亡くなるという、痛ましい事故が起きています。

そのため「小学生だから、もう大丈夫!」とは思わないでください。子どもの命を守るためにも、「よく噛んで、丸飲みしない!」「そんなに口にほおばらないよ!」など誤嚥事故を防ぐ食べ方を教え続けましょう。

子どもの手の届くところに食べ物があるのは危険

きょうだいがいる場合は、上の子が下の子に誤嚥しやすい食べ物を与えないように注意することも大切です。親が目を離したすきに上の子が、赤ちゃんにいくらを与えて詰まり、救急搬送された事故もあります。赤ちゃんは一命をとり留めましたが、搬送時は心肺停止状態でした。

またベランダや庭でプチトマトなどを栽培していると、目を離したすきに子どもが取って食べて、丸飲みする危険性もあります。そのため食卓だけではなく、子どもの手の届くところに食べ物は置かないようにしましょう。

誤嚥したらすぐに救急車呼ぶと同時に、胸部突き上げ法などで吐かせて

万一、子どもが誤嚥した場合は、すぐに救急車を呼ぶと同時に1歳未満の乳児には胸を圧迫して吐き出させる「胸部突き上げ法」と背中を叩いて吐き出させる「背部叩打法」を繰り返します。1歳以上の幼児にはお腹を圧迫して吐き出させる「腹部突き上げ法」を行ってください。窒息を防ぐためにも、一刻も早い処置が必要です。

これらの処置の仕方は、YouTube 東京消防庁公式チャンネルで紹介されています。防災訓練と同じで日ごろから訓練をしておかないと、いざというときパニックになってしまうので、動画を見て処置の仕方を覚えておきましょう。

乳児編 胸部突き上げ法

乳児編 背部叩打法

小児 腹部突き上げ法

 

記事監修

岡真裕美先生|大阪大学人間科学部 安全行動学研究分野 特任研究員

奈良女子大学文学部卒。大阪大学大学院人間科学研究科博士前期課程 修了。2012年、自宅近くの河川敷でジョギング中だったご主人が、小学生と中学生が溺れているのを見つけ、川に入って助けようとして命を落とす。その経験から大学院に入学し、子どもの事故について研究を始める。高1、中12人の子どものママでもあります。

取材・構成/麻生珠恵

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