全国に約25万人いる長期療養の子どもたちにスポーツ体験を!闘病中の子どもたちが湘南ベルマーレの選手に?

長期療養中の子どもたちにスポーツを通じて、前向きに生きる活力をサポートする認定NPO法人Being ALIVE Japan。取り組みに参加している湘南ベルマーレの活動について、実際に選手として参加した小野楓君や担当者の方にお話をお伺いしました。

1年間、ベルマーレの選手として活動!

病気と闘いながら湘南ベルマーレの選手として活動した小野 楓君とママにお話を伺いました

楓くんは算数とサッカーが好きで、小3の夏にリフティング150回を達成したほどの努力家。一昨年夏に小児脳腫瘍を発症し、現在は通院治療を続けています。湘南ベルマーレの選手として活動した1年間について楓君とママにお話を聞きました。

―活動に参加したきっかけを教えてください

楓君ママ:夫婦で湘南ベルマーレのファンで、HPで活動を知ったのがきっかけです。息子が病気になり、ベルマーレの力を借りて少しでも楽しいことを見つけられればという気持ちで応募しました。

活動に参加した息子に変化が

―楓君の成長を感じたことはありますか?
楓君ママ:入団式の日に、たくさんの人の前で記者会見をすることになったのですが、とても緊張してしまったようでした。始まる直前に廊下でしゃがみこんでしまい、どうしようかと思いましたが、いざ始まったら堂々と受け答えができていて頑張ったなと思いました。

―活動に参加したことで、ご家族に変化はありましたか?
楓君ママ:いままで、病気の話をすることが多かったのですが家族の会話がベルマーレ中心になり、毎日明るく楽しい会話ができるようになりました。活動が終わった後も、ベルマーレの活躍など共通の話題ができました。

―参加してよかったことは何でしょうか?

楓君ママ:ベルマーレの皆さんも優しく接してくださり安心して子供を任せられました。卒団式のときにリフティングのテストがあるので、家でも空いている時間に練習をしたり、目標に向かって頑張っている姿を見ることができました。普段の生活の中で楽しいことを見つける機会ができ、参加して本当によかったです。

楓君にも1年間の活動についてコメントをいただきました

―湘南ベルマーレの選手になって思い出に残っていることはありますか?

楓君:スタジアムの中でサポーターの皆さんに挨拶したことが、とても思い出に残っています。活動の中では、試合に勝った後に選手と一緒に勝利のダンスをするのが好きでした。練習に参加して、リフティングが上手にできるようになって、いまでも家でたまにやっています。チームの皆さんには、1年間ありがとうございましたと伝えたいです。

湘南ベルマーレが取り組む「TEAMMATES」の活動

「TEAMMATES」の活動に参加している湘南ベルマーレ。元プロサッカー選手で現在フットサル選手として活躍しながら、「TEAMMATES」の担当している島村 毅選手に活動内容などについてお話をお伺いしました。

湘南ベルマーレ 島村毅さん

―「TEAMMATES」の活動を通じてチームで変わったことはありますか?
島村さん:病気と闘っている子どもたちが、チームメイトとして近くにいる環境はなかなかないことなので、自分に何ができるかということをチームのみんな考えさせられます。選手たちが自ら子どもたちと接したりコミュニケーション取ったり、非常に良い活動だと感じています。
選手たちは、サッカーをやるだけではなく多くの人に影響を与える活動に積極的に参加して欲しいと思っています。ベルマーレは、「地域の為に」が合言葉になっていて、小学校でスポーツを教える活動なども行っています。私は「TEAMMATES」のパイプ役になって4年経ちますが、とてもやりがいを感じています。

-「TEAMMATES」に参加した楓君の様子はどうでしたか?
島村さん:入団式のときにとても緊張していたので心配でしたが、本番では堂々と話すことができました。スタジアムでマイクを使って話す時も緊張してはいるのですが、きちんと話せるんです。その姿を見て僕も嬉しい気持ちになります。

この活動の中では敢えて、緊張を乗り越える場を作っています。スタジアムに入ったお客さん1万人の前で話す機会なんてなかなかない経験だと思います。「1万人の前で話せたんだから!」という自信がついたらいいなと思いますね。クラスの30人の前で話すことが楽になったら嬉しいと思います。参加した子どもたちが中学・高校生になったときに、この経験を振り返り成功体験に繋がると嬉しいですね。

ベルマーレのサポーターの方も「TEAMMATES」の活動に協力的に参加してくださり、ブースで一緒にグッズを販売したり、子どもたちはそういう交流も嬉しいみたいで喜んでいます。

―参加してみたいと思っているご家族に向けてメッセージをお願いします。
島村さん:この活動に参加する状況というのはポジティブではないと思いますが、今までの取り組みを見ていただき、子どもの成長にもつながる活動ですし、積極的に活動することで同じ環境の子どもたちに勇気を与えるような役割を担ってほしいと思います。ぜひ一緒に活動しましょう。

「長期療養中の子どもたちに青春を」認定NPO法人Being ALIVE Japanの活動とは?

Being ALIVE Japan 理事長 北野華子さん

―Being ALIVE Japanの活動は、長期療養の子どもたちのスポーツ参加を促すこと

北野さん:長期療養しているお子さんが全国に約25万人いて、現在も多くのお子さんが病院に入院しているだけではなく、退院した後も定期的な治療や療養をしているお子さんがたくさんいます。治療をしている中で大事な子ども時代に青春を諦めないような小児医療社会をつくっていきたいと思い、この団体を立ち上げました。
活動としては、療養中の子どもたちがスポーツに参加することで身体面だけではなく精神面、社会面の自立支援など、長い治療生活で一緒に寄り添ってくれる存在を地域社会の中につくっていくということに取り組んでいます。

理事長の北野さんにも、長期療養の経験が

北野さん:私自身、子どもの頃に長期療養をしていたというのが一番のきっかけです。5歳の時に発症したのですが、18歳のときにやっと病名と治療法がわかり、治療生活を終えることができました。

なかなかゴールが見えない、長い治療生活の中で頑張り続けられたのは、「学校に行きたい」「友達と一緒に遊びたい」など、叶えたい青春が目の前にあったことが大きな理由です。そこで、長期療養している子どもたちに病気で諦めてしまう小児医療や人生ではなく、治療しながら青春が送れるような医療の現場づくりや社会をつくっていきたいと思い、活動をはじめました。

「TEAMMATES」に参加したご家族の様子は?

―「実際に「TEAMMATES」の活動に参加した子どもたちや家族の変化や反応についても教えてください。

北野さん:湘南ベルマーレの楓君も、数か月後の活動を見ていくと自ら進んで行動している様子を見ることができました。チームの人との会話も頷くだけだったのが、自分からちゃんと「楽しかった」など気持ちを伝えてくれるようになりました。

「TEAMMATES」に参加したお子さんからは、終わった時に「仲間にしてくれてありがとう」という言葉をよくいただきます。どのお子さんも退団時には、自信をもっていろいろなことに取り組めるようになり、行動や考え方の変化を感じます。

―「TEAMMATES」に興味を持っている方へ
北野さん:チームの一員として1年活動するとなると、活動を最後まで続けられるのか、練習が大変なのではないのかなど心配になることもあるかと思いますが、お子さんの体調や予定に合わせて、できる範囲で気軽に参加できるのでご安心ください。

運動や競技が好きだから参加しているお子さんもいますが、半数の人は治療生活の中でお父さんお母さん、お医者さんだけではなく、さまざまな人と関わりながら長い期間病気と向き合っていく中でモチベーション維持するために参加されます。

スポーツキャンプや1dayのスポーツイベントなども開催しているので、ぜひ気軽に参加して欲しいと思います。

仲間と一緒にできることを増やしていく

できないことではなく、できることを仲間と一緒に増やしていく「TEAMMATES」の活動は、病気療養中の子どもたちの青春そのもの。活動内容の詳細については、Being ALIVE Japan湘南ベルマーレのHPでもご確認いただけるので、気になった人はぜひチェックしてみてください。

お話を伺ったのは…

認定NPO法人Being ALIVE Japan 理事長 北野華子さん
<プロフィール>
チャイルド・ライフ・スペシャリスト
セラピューティック・レクレーションスペシャリスト

慶應義塾大学環境情報学部卒業、京都大学大学院医学研究科社会健康医学専攻を修了。資格取得のために米国に留学し、アトランタパラリンピックのレガシー団体「BlazeSports America」やシンシナティ小児医療センターでの実践を経て帰国。帰国後、埼玉県立小児医療センターで、こどもとご家族の心理的な支援をする米国専門職「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」として勤務しながら、国内でも新しい入院中の子どものスポーツ活動、長期療養児のスポーツチーム入団事業を展開。
現在はNPO法人の代表として、世界でも新しい難病児支援や小児医療現場におけるアスリートやスポーツチームの社会貢献活動を企画提案し、全国に活動を展開している。

認定NPO法人Being ALIVE Japan サイトは>こちら

写真提供/湘南ベルマーレ

北野さん撮影/五十嵐美弥
取材・文/やまさきけいこ

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