オゾン層とは
オゾン層は、私たちが生きていくうえで重要な役割を果たしています。具体的にどのようなものなのか、役割とともに紹介します。
成層圏に存在する気体の層
大気圏は地表・対流圏・成層圏に分かれており、オゾン層は上空約10~50kmの成層圏にある気体の層のことです。オゾンと呼ばれる酵素原子3個からできている気体が層になっていて、大気中の約90%のオゾンが成層圏に集まっています。
オゾンの体積は、圧力と温度によって変化します。大気中のオゾンのほとんどが存在していると聞くと分厚い層だと思うかもしれませんが、地上と同じ標準状態(1気圧・0℃)であれば約3mmの厚さにしかなりません。
有害な紫外線をカットする働きがある
太陽から注がれる紫外線が人体に有害であることは、広く知られています。オゾン層は地球に届く紫外線を弱めてくれる働きがあり、人間だけでなく地球上のさまざまな生物を守ってくれているのです。
オゾン層がなかった頃の地球では紫外線が直にあたっていたため、生物や植物が生まれませんでした。しかしあるとき、紫外線が到達しない水深10m付近で「藻類(そうるい)」が誕生しました。光合成によって酸素が増えたことでオゾン層が形成され、陸地にも生物や植物が誕生したのです。
オゾン層は破壊されている?
かつて、オゾン層の破壊が世界的に大きな問題となりました。具体的にどのような状況だったのでしょうか? 現在の状態についても見ていきましょう。
南極上空にある「オゾンホール」
オゾン層の世界的な観測が開始されたのは1960年代中頃で、20年ほどは大きな変化がありませんでした。しかし、1980年代から1990年前半にかけて劇的な減少が見られました。
1982年には、日本の観測隊が南極の上空に「オゾンホール」を発見しています。実際にホール(穴)ができているわけではなく、オゾン層が薄くなってホールのように見える状態のことです。
その後、対策を講じたことで大規模な減少は見られず、どうにか破壊の進行を防ぎ止められています。
オゾン層破壊の主な原因は「フロン」
オゾン層破壊の大きな原因は、人工的に作り出された化学物質「フロン」です。もともとオゾン層は、オゾンが自然に分解・生成することで、一定のバランスが維持されていました。
しかし、地上付近では分解されず成層圏にまで達してしまう性質を持つフロンが、エアコンや冷蔵庫、スプレーなどに使われるようになったことで、オゾンの分解・生成のバランスを崩してしまったのです。
フロンが成層圏に届くと、紫外線によって分解されて塩素を発生させます。この塩素が、オゾンをどんどん壊してしまうことが分かっています。
オゾン層がなくなるとどうなる?
オゾン層がなくなると、有害な紫外線が直に地球に到達します。植物は成長に必要な光合成を妨げられ、育ちにくくなるでしょう。農作物の生育にも悪影響を及ぼし、収穫量が減ることが予測されます。植物性プランクトンが減少することで魚のエサも減少し、漁獲高も減少するでしょう。
人々の健康にも悪影響を及ぼします。紫外線を直に浴びることで、皮膚がんや白内障などを患う人が増えるといわれています。そのほか、免疫力の低下が起こるとされているため、病気にかかりやすく、かつ治りにくくなる人も増えるでしょう。
オゾン層を回復させるための取り組み
世界各地でオゾン層を守り回復させる取り組みが行われています。どのような取り組みなのか確認し、自分にできることから始めてみましょう。
フロン類の回収・ノンフロンの促進
まずは、オゾンホールの原因となるフロン類の回収に協力することが大切です。現在使われている製品の中には、フロン類を使用したものが少なくありません。必要なくなったときにそのまま捨ててしまうと、大気中にフロンが放出されてしまう可能性もあるため、きちんと定められた方法で適切に処理することが大切です。
近年は代替品の開発も進み、フロン類を使用しないノンフロンの冷蔵庫なども販売されています。買い替える際にはノンフロン製品を選ぶことも、オゾン層を守ることにつながります。
徐々に回復しているという報告も
世界気象機構(WMO)が公表した「オゾン層破壊の科学アセスメント:2018」という報告書によると、規制によってフロンなどのオゾン層破壊物質が減少し、2000年以降の10年間で成層圏のオゾンが1~3%ほど増加しているそうです。
南極のオゾンホールも悪化しておらず、進行を防ぎ止められています。2060年代には、1980年代の状態まで回復する見通しです。
回復の兆しは喜ばしいことですが、成果を持続させることが重要です。環境保護に関心を持ち、フロン類の回収などに積極的に協力しましょう。
自分ができることから始めてみよう
オゾン層は有害な紫外線をカットしてくれており、人間だけでなく、地球上で暮らす生物にとって必要不可欠なものです。オゾン層の破壊は食い止められ、回復も見込まれていますが、今後も成果を持続していくことが大切です。
環境保護に関心を持ち、フロン類の回収やノンフロン製品を選択するなど、できることから取り組み始めましょう。
さらに理解を深めるために
構成・文/HugKum編集部