『学校に行かない君が教えてくれたこと』(オーバーラップ)は、漫画家でデザイナーの今じんこさんが、息子「もっちん」の不登校に戸惑い、悩みながら、親子で不登校の鎧を脱ぐまでを描いたコミックエッセイ。当事者だからこそ描ける、親の心の葛藤が多くの読者の共感をよんでいます。
目次
小学校に入学して早々の「学校に行きたくない」宣言への戸惑い
−−コミックの冒頭では、入学してすぐに「学校に行きたくない」と宣言するもっちんと、何とかして学校に行かせようとするじんこさんの姿が描かれていますね。
じんこさん:はい。学校に行く時は泣いていても、帰ってくると普段と変わらない様子だったので、毎日なだめながら学校に送り出していました。
でも今思うと、最初にもっちんが「学校に行きたくない」と言った時に、なぜ「わかった」といって休ませてあげれられなかったのだろうと後悔しています。これは、他の不登校のお母さんと話していても皆が口を揃えるところです。
「学校に行ったら◯◯を買ってあげるよ」のように物で釣ったり、「午前中だけでも行ってみたら?」などと何とかして子どもを学校に行かせてしまうという経験のある人も多いと思います。
でも、どうしても「学校」という場所が合わない子もいるんですよね。それにも関わらず「頑張れ、頑張れ」と言って限界まで頑張らせることが、どれだけ子どもに負担をかけ、心の回復に時間をかけることになるのか、わかっていなかったのだと思います。
−−親は子どもについ「どうして学校へ行きたくないの?」と理由を聞いてしまいますよね。
じんこさん:そうですね。でも、理由を聞いた大人は、学校に行かせるためのポジティブな励ましをしがちなので、子どもがどんどん気持ちを話せなくなっていくことは多いと思います。
大人が「この職場の雰囲気は自分と合わないな」と感じることがあるように、子どもだって、どうしても学校が合わない、居心地が悪いということがある。そんな場所は無理して行き続けても、楽しい場所には変わらないんですよね。
子どもに無理させたくない、と思う反面、やっぱり学校に行ってほしいという葛藤も
−−初めて学校を休ませたときの不安な気持ちも描かれていましたね。
じんこさん:「一度休ませたら、ずるずると休むようになってしまうのでは」という気持ちが先立ってしまいますよね。でも実際のところ、「学校に行きたくない」と言った子どもも数日休めば、また学校へ行くようになることの方が多いと聞きます。親が自分のペースを受け入れてくれて、見守ってくれているということが安心につながるのかなと思います。
コミックの最後の方にも描きましたが、我が家の次男「ずん」も入学当初、「学校に行きたくない」と言ったことがありました。その時は特に理由を聞かずに休ませましたが、息子はほっとしたようで自分の気持ちを話してくれて、翌日からは学校へ行きました。
登校を褒めることが、子どもにとってマイナスなメッセージに!?
−−”学校へ行くことを褒めること”が、逆のメッセージになっていたというのも衝撃的でした。
じんこさん:もっちんが学校に行ったとき、「学校に行けて偉いね」「頑張っているね」と私も先生も褒めていました。でもそれは「学校に行けない子は偉くないし、頑張っていない」という否定的なメッセージになってしまっていたんですね。
学校に行くか行かないかで、褒めたり、褒めなかったりというのは余計に状況を悪くしてしまっていたんだなと思います。
子どもが「学校へ行きたくない」と言ったら、「休ませる」という選択がある
私は専門家ではありませんし、一人一人の状況は違うのでアドバイスはできません。でも、「子どもの言うことだから」とか、「うちの子はまだそこまでじゃない」「もう少し頑張れるんじゃないか」という思いが、子どもを追い込んでしまうのかなと思います。だから、子どもの「学校へ行きたくない」という言葉は軽視してはいけないなと感じています。
無理して頑張って傷ついた子は、我慢した年月の2倍くらい回復に時間がかかるといわれています。我が家の場合は、割と早い段階で学校へ行かない選択をしましたが、それでも子どもの心が回復するのに3年くらいかかりました。
命の危険に晒されるほど、ギリギリまで頑張らせてしまう前に学校を休ませることで、子どもを守ることができるのではないでしょうか。
今は「教育機会確保法」という法律で、子どもの休養の必要性が認められています。「何が何でも学校へ行かせなければ」という固定観念を一度横に置いて、子どもの声に耳を傾けてみてほしいです。
子どもに関わるすべての人に読んでほしい1冊
コミックエッセイ『学校に行かない君が教えてくれたこと』(オーバーラップ)は、不登校への不安や恐れ、偏見に悩みながらも親子で不登校の鎧を脱ぐまでが描かれています。「不登校で苦しむ時代は終わりにしたい」というじんこさん。ぜひ子どもに関わる全ての人にこの本を読んでいただきたいです。