目次
にんにく腹痛とは? 原因と症状の理解
にんにくによる腹痛はなにが原因なのか、また、腹痛以外にどのような症状が出るのか解説していきます。
にんにくによる腹痛の2つの原因
にんにくによって腹痛を起こす場合、その原因となるものには2つあります。
1つはにんにくの主成分である「アリシン」です。このアリシンには強い殺菌作用があり、疲労回復効果といった身体によい影響を与えることもあります。しかし大量に摂取すると、アリシンによる強い殺菌作用が予想以上に発揮されてしまい、身体に悪影響を与えます。
もう1つは、にんにくによる「食物アレルギー」であった場合です。食物アレルギーとは、何か特定の食べ物を食べるとじんましん、湿疹やかゆみといった症状が出ることを指します。
子どもにおける一般的な症状
子どもがにんにくを大量に摂取した場合、次のような症状が出ることがあります。
・口や胃腸の炎症
・腹痛
・胃痛
・胸焼け
・頭痛
・下痢
・嘔吐 など
またにんにくアレルギーの場合は、次の症状が出ることがあります。
・口のまわりや喉のかゆみ
・息苦しさ
・蕁麻疹
・唇やまぶたの腫れ
・下痢
・嘔吐
・腹痛 など
また重度の場合には、呼吸困難や意識障害といった「アナフィラキシーショック」を起こすこともあります。
にんにくによる腹痛のメカニズム
ここでは、にんにくを食べることでなぜ腹痛が起きるのか、そのメカニズムを解説していきます。
なぜにんにくは腹痛を引き起こすのか
にんにくを大量に摂取すると、アリシンによる強い殺菌作用が予想以上に発揮されてしまいます。そうすると、腸内環境を正常に保っているビフィズス菌などの善玉菌が減り、腸内細菌のバランスが崩れて腹痛が起きるのです。
にんにくと消化器系の関係
にんにくの主成分であるアリシンには、強い殺菌作用があります。この成分は胃の粘膜を傷つけたり、腸内細菌の善玉菌を殺したりするほどの力をもっています。適量であれば問題ないのですが、過剰に摂取すると、消化器系にダメージを与えてしまうのです。
ただしアリシンには、疲労回復効果や生活習慣病予防効果、免疫力の向上、がん予防効果、血液促進といった効果もあります。適量の摂取であれば、健康効果が期待できます。
子どもに見られるにんにく腹痛のサイン
にんにくによる腹痛は、どのような痛みが出るのか知っておきましょう。
痛みのパターンで見分ける腹痛の種類
腹痛には、以下のような痛みのパターンがあります。
・お腹全体が痛い
・お腹のピンポイントが痛い
・突然激痛が起きる
・みぞおちが痛い
にんにくが原因による腹痛は、おもにみぞおちが痛くなることが多いようです。
ほかの症状との組み合わせで理解する
にんにくを食べ過ぎた場合、腹痛に加えてほかの症状が出ることもあります。たとえば胃痛、胸焼け、吐き気、嘔吐、下痢、頭痛などです。こういった症状が組み合わさって出た場合は、にんにくが原因の可能性が高いでしょう。
家庭での対処法、腹痛発生時の応急措置
にんにくによって腹痛が起きた場合の応急処置方法と、腹痛を緩和する食事方法を解説していきましょう。
すぐにできる家庭での応急処置
にんにくによってお腹が痛くなった場合には、まず白湯をゆっくり飲みます。アリシンは水溶性の成分ですから、水分を摂れば身体から排出しやすくなります。白湯は胃腸への刺激が少なく、かつすぐに用意できるおすすめの飲み物です。
次に、乳製品を食べてみてください。乳製品を摂取することで、腸内にある善玉菌が減るのを防ぐことができます。
また腹痛が軽い場合には、「の」の字を描くようにおなかをやさしくマッサージしてあげましょう。そうすることで、少し痛みが和らぐことがあります。
腹痛を緩和する食事方法
にんにくに含まれるアリシンは、たんぱく質と結合する性質をもっています。そのためアリシンによる胃腸の刺激を弱めるためには、良質なたんぱく質を一緒に摂るとよいでしょう。良質なタンパク質には牛乳やヨーグルト、肉、魚などがあります。これらを上手に組み合わせましょう。
にんにくを食べるときには、乳酸菌を多く含む食べ物といっしょに摂ると腹痛を起こしにくくなるとされています。これは乳酸菌が善玉菌を増やし、腸内細菌のバランスを整えてくれるからです。乳酸菌を多く含む食べ物にはチーズや納豆、味噌などがあります。これらを組み合わせた料理を食べるとよいでしょう。
また、にんにくをキャベツといっしょに食べるのも効果的です。キャベツには、胃腸の粘膜を守り修復を助ける「ビタミンU」という栄養素がふくまれています。にんにくを食べる前にキャベツを食べてもいいですし、にんにくとキャベツを組み合わせた料理もおすすめです。
にんにく腹痛を防ぐ、調理の工夫と対策
調理の工夫と対策により、にんにく腹痛を防いだり軽減させたりすることが可能です。にんにくを調理する際の注意点を解説していきましょう。
子どもに与えてもよいにんにくの適量は?
にんにくを大量に摂取すると、子どもの胃腸への負担が大きくなります。そのため、使用するのは耳かき程度の量〜1片の4分の1程度にとどめましょう。
にんにくの大きさに気をつける
にんにくの大きさにも気をつけましょう。まるごとそのまま1片や、スライスだと大きすぎて、刺激や辛味、においが強くなります。にんにくを料理に使うときには、みじん切りやすりおろしたものを、風味付け程度に使うようにしましょう。
必ず加熱する
強力な抗菌・殺菌作用により胃腸の粘膜を荒らしてしまうことがあるアリシンですが、加熱することで減らせます。よってにんにくを食べるときには生のまま食べることは避け、必ず加熱するようにしましょう。
にんにく腹痛の受診のタイミング
にんにくを食べて腹痛を起こした場合、どの程度で病院を受診するとよいのか解説します。
サインを見逃さない
にんにくを食べたあと、子どもの体調に変わりがないか確認しましょう。たとえば下痢や腹痛は、にんにく腹痛のサインとなります。また便秘になることもあるため、便の状態に注意しましょう。
医師の診断が必要な症状とタイミング
下記のような症状が出た場合は、すみやかに病院を受診し、医師の診断・指示に従いましょう。
アレルギー反応には、次のような症状があります。
・腹痛や下痢
・嘔吐
・蕁麻疹・湿疹が出る
・口の周りが赤くなる
・口の中や喉が腫れる
・鼻水やせき、くしゃみが出る
にんにくによる腹痛はにんにくの刺激成分によるものがほとんどですが、気になる症状が出ていたり、いつもと様子が違ったりするようなら、病院を受診することをおすすめします。
また激しい下痢を伴う場合は、脱水の危険が増します。子どもは脱水に弱いため、口から十分に水分がとれない場合は、医療機関を受診してください。
おいしいけれど食べすぎは禁物
にんにくはさまざまな料理に使われ、料理自体のおいしさをアップさせる食材です。また疲労回復効果や生活習慣病予防効果、免疫力の向上といった健康効果も期待できます。
しかしにんにくを大量に食べすぎると、腹痛をはじめ胃痛や吐き気、胸焼けといった症状が出ることもあります。これは、子どもも大人も注意すべきことです。にんにくの食べすぎには十分気をつけ、適量を摂取するようにしましょう。
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記事監修
医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック院長。藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)卒業後、同大学病院研修を経て、同大学病院総合診療内科所属。2011-2015年にかけて同院最優秀指導医賞受賞。岐阜市民病院総合内科を経て現職。岐阜大学総合病態内科学非常勤講師、藤田医科大学救急総合内科客員講師、岐阜市民病院研修管理委員会外部委員。
日本内科学会認定医
プライマリケア連合学会認定医・指導医・代議員
日本心療内科学会登録医
日本医師会認定産業医
『医療よろず相談所』をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリケア医。「プライマリケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。
文・構成/HugKum編集部