いちごアレルギーって何?
いちごアレルギーとは、名前の通り、いちごを食べることによって出るアレルギーのことです。
アレルギー反応の基礎知識
アレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン)には、花粉、埃、ダニ、カビなど、さまざまなものがあります。その中でも、特定の食べ物を口にすることでアレルギー反応が引き起こされる場合があり、それを食物アレルギーといいます。
食物アレルギーの症状としては、皮膚にかゆみが生じたり、皮膚や粘膜の一部が赤くなったり、じんましんが出たりすることが多くあります。また咳が出たり、目や唇にかゆみが生じたり、くしゃみが出たりといったこともあります。
いちごとアレルギーの関係
食物アレルギーの原因物質として、鶏卵、牛乳、小麦、蕎麦、ピーナッツなどの木の実類などがよく知られています。しかしこの中に存在するのが、いちごなどの果物類です。またキウイ、バナナなどでもアレルギー症状が出る場合があります。
消費者庁の報告書によると、食物アレルギーの原因物質として果物類は3.5%を占めています。いちごのような果物でアレルギーが起きることはそれほど知られていないかもしれませんが、決して珍しいわけではないのです。
令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書(消費者庁)
いちごアレルギーのサインを見逃さないで
「いちごアレルギーかもしれない」と気づくためには、なにかサインがあるのでしょうか?
アレルギー反応の初期症状
食物アレルギーがある場合、その食べ物を摂取してから目安として2時間以内、特に30分以内になんらかの症状が出始めます。
最も多い症状は皮膚に出るものです。かゆみ、じんましん、むくみ、赤み、目の充血、涙目、口や唇が腫れる、口に違和感をおぼえるといった症状です。
さらにひどくなると、息が「ゼーゼー」「ヒューヒュー」となったり、呼吸困難、じんましん、嘔吐、下痢などの症状が現れることもあります。
いちごアレルギーが疑われるとき
食物アレルギーのなかでも、いちごを食べたときにアレルギー症状が出るいちごアレルギーでは、口の中がかゆくなる症状が多くあります。
これは口腔アレルギー症候群と呼ばれ、原因となる食べ物を摂取すると、口の中や喉などにかゆみを感じたり、口の中に違和感をおぼえたりします。そのようなサインがあったら、原因となる食べ物の摂取をすぐに止めましょう。
いちごアレルギーの原因とは?
いちごアレルギーは、どんな原因で出るのでしょうか?
いちごに含まれるアレルゲン
アレルゲンとは、アレルギー症状を引き起こす原因物質のことです。では、いちごアレルギーのアレルゲンは何なのでしょうか?
一般的にいわれているのが、いちごに含まれる物質が花粉症のアレルギー原因となるアレルゲンと構造がよく似ていることです。いちごを食べると、花粉が体内に侵入してきたと体が勘違いをして、それによってアレルギー症状が出てしまうのです。これは口腔アレルギー症候群と呼ばれ、花粉症の人で発症するケースが多くあります。
子どもがアレルギーを発症する要因
そもそも食物アレルギーは、どうして起こるのでしょうか。
まずアレルギーの原因となる物質が体内に入ると、私たちの体は抗体を作ってその異物を排除しようとします。いくつか種類がある抗体の中で、アレルギー反応を起こすのがIgE抗体と呼ばれるものです。そしてアレルギーを起こす食べ物を摂取すると、その食べ物がIgE抗体と結びついて化学物質を放出するのです。
この化学物質がさまざまなアレルギー症状を引き起こします。子どもはこのような免疫の仕組みが未熟だったり、体質的にこの免疫の仕組みが弱かったりすることもあって、食物アレルギーが発症するのです。
いちごアレルギーの対応策
いちごアレルギーに対応するためには、どうしたらいいでしょうか?
アレルギー発症時の応急処置
いちごを食べて、口のまわりや口の中がかゆくなったり違和感をおぼえたりしたら、すぐにいちごを食べるのを止めましょう。そのまま食べ続けると、症状が悪化する可能性があります。
その後はいちごを食べた時間、どんな状況で食べたのか、どんな症状が見られたのかメモを取り、必要なら写真も撮っておくのがおすすめです。医療機関(可能なら皮膚科やアレルギー専門の小児科)を受診する際には、メモや写真とあわせて医師に相談するといいでしょう。
後述するアナフィラキシーを疑う症状を認める場合は、早めに医療機関を受診するようにしてください。
長期的なアレルギー管理
食物アレルギーかもしれないと思ったら、まずは何が原因物質であるか知ることが大切です。医療機関では、アレルギー症状が出たときの様子を詳しく聞いて、血液検査や皮膚試験などで原因物質を調べる検査を行います。
こうしてアレルギー症状を引き起こす原因物質がわかったら、ふだんからそれを口にしないことが一番です。軽症の場合でも、食べ続けると重症化していく可能性もありますから、ふだんの食事でできるだけ避けるようにしてアレルギー管理を行っていきましょう。
アナフィラキシーにも注意
アナフィラキシーとは、アレルギー反応の中でも特に重篤な状態で、じんましん、赤味、かゆみ、くしゃみ、咳、息苦しさや下痢などが起きることがあります。ひどい場合には、血圧が下がったり意識障害を伴ったりするアナフィラキシーショックが起きる可能性もあります。
いちごアレルギーは花粉に似た物質があることからアレルギー症状を引き起こすといわれており、アナフィラキシーのような重篤な事態に発展するケースは少ないと考えられます。しかし、それでもいちご自体に原因がある可能性も否定できません。軽く見ることはせず、注意しましょう。
いちごアレルギーと共に生きる工夫
いちごアレルギーがあるとわかったら、どうやって生活していけばいいでしょうか?
食生活の工夫と代替品
食品表示法で、アレルギー物質の表示が義務化されています。ただ表示される物質は「特定原材料8品目」と呼ばれる、卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば、くるみの8品目のみです。これ以外で、アーモンド、ごま、バナナなどの20品目は「特定原材料に準ずるもの」として、表示が推奨されています。
残念ながらいちごは「特定原材料に準ずるもの」に含まれていませんから、加工食品にいちごが入っているかどうかを知るには、商品のパッケージに表示された原材料名を確認しなければなりません。いちごアレルギーがあるなら、このようにいちごが含まれていないか確認して、いちごをできるだけ摂取しないように考えましょう。
子どもとアレルギーについて話し合おう
もし子どもにいちごアレルギーが出たら、年齢によっては、子どもにアレルギーのことを話すことも考えていいでしょう。子どもにも理解できるように説明することで、子ども自身もアレルゲンを避けるようになり、気を付けられるようになっていくかもしれません。
果物も注意が必要
いちごのような果物がアレルギーを引き起こすと知らなかった方も多いでしょう。いちご以外でも、りんご、バナナ、さくらんぼ、桃、キウイなどの果物でもアレルギー症状が出る場合があります。
もしそれらの果物を食べて違和感をおぼえたり異変を感じたりしたら、すぐに食べるのを止めて早めに医師に相談しましょう。
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記事監修
医療法人社団藤和会 あんどう内科クリニック院長。藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)卒業後、同大学病院研修を経て、同大学病院総合診療内科所属。2011-2015年にかけて同院最優秀指導医賞受賞。岐阜市民病院総合内科を経て現職。岐阜大学総合病態内科学非常勤講師、藤田医科大学救急総合内科客員講師、岐阜市民病院研修管理委員会外部委員。
日本内科学会認定医
プライマリケア連合学会認定医・指導医・代議員
日本心療内科学会登録医
日本医師会認定産業医
『医療よろず相談所』をクリニックのコンセプトに掲げ、医療に関わるあらゆる問題に向き合う生粋のプライマリケア医。「プライマリケアは日本の医療を救う」と信じ、若手医師の教育も積極的に行っている。
文・構成/HugKum編集部