5月の別名は「皐月」
5月の別名は、旧暦で使われていた「皐月」です。また、皐月をはじめとする旧暦での月の呼び名は、「和風月名(わふうげつめい)」と呼ばれています。皐月の詳細や起源について確認し、日本文化への知識を深めましょう。
田植えの季節を意味する「皐月」
皐月の由来は諸説あり、その一つが田植えの季節を意味する「早苗月(さなえづき)」が略されたとする説です。早苗は、田植えに用いる稲の苗のことです。苗代(なわしろ)で育った稲の苗を田植えするのが旧暦の5月ごろなので、早苗月という別名が付きました。
古語では稲を植えることを「さ」と呼んでおり、田植えの月という意味から「さ月」となったという説もあります。「皐」という漢字には、「田の神」または「田の神に捧げる稲」という意味があるといわれます。
和風月名の起源
5月を皐月と呼ぶように、1月の睦月(むつき)や12月の師走(しわす)など、他の月にも別名があります。これを和風月名といい、昔の人が使っていた旧暦由来の月の名前を指します。
旧暦とは月の満ち欠けを指標とし、太陽の動きも考慮した「太陰太陽暦(たいいんたいようれき)」のことです。日本では、1872(明治5)年まで使われていました。中国で生まれた暦が起源ですが、和風月名は日本の季節変化や行事を取り入れている点が特徴的です。
現在使用されている新暦は、太陽の動きを指標に作られた太陽暦です。新暦と旧暦の間には、季節感に約1~2カ月のずれが出ます。このため旧暦の5月は、現在の6~7月ごろの季節感です。
「皐月」以外の5月の別名
5月には皐月以外にも、さまざまな別名が存在します。夏・梅雨・行事の三つのカテゴリーに分け、5月の別名を紹介します。
夏を連想させる5月の別名
夏を連想させる別名としては、旧暦の5月ごろに咲く植物や、夏を意味する言葉にちなんだものなどが代表的です。
●多草月(たぐさづき)
●橘月(たちばなづき)
●菖蒲月(あやめづき)
●仲夏(ちゅうか)
「多草月」は、草が生い茂る様子を表現した月名です。「橘月」と「菖蒲月」は、5~7月ごろに咲く橘と菖蒲の花にちなんでいます。菖蒲は端午の節句にも使われ、厄除けの力があると考えられました。
旧暦では4月から6月が夏とされており、5月は夏の真ん中を意味する「仲夏」とも呼ばれます。
梅雨を連想させる5月の別名
旧暦の5月は梅雨の時期を含むため、梅雨を連想させる別名が多いのも特徴です。
●雨月(うげつ)
●五月雨月(さみだれづき)
●梅月(ばいげつ)
●梅の色月(うめのいろづき)
●月不見月(つきみずづき)
「雨月」は、漢字が示す通り雨の月という意味です。五月雨は梅雨のことで、梅雨の月という意味の「五月雨月」という月名になりました。
梅の実が熟すころが梅雨にあたることから「梅月」、青い実が黄色、赤と色付いていくことから「梅の色月」とも呼ばれています。「月不見月」は、梅雨の時期には雨や曇りが多く、月をあまり見られない様子を表している月名です。
行事や田植えに関連する5月の別名
古くから続いている伝統行事や、田植えの時期に関連した別名も見られます。
●午月(ごげつ)
●田草月(たぐさづき)
5月の行事には、「こどもの日」として知られている「端午(たんご)の節句」があります。現在の端午の節句は5月5日です。しかし、本来は5月の最初の午(うま)の日に行われていたことから「午月」ともいいます。
「田草月」は、「田草取り」の時期であることに由来しています。一説によれば、田草は雑草のことで、田に生えた雑草を取り除く作業が田草取りです。この時期には、雑草が次から次へと生えてくるため、稲の成長が妨げられないように繰り返し取り除く必要がありました。
5月が使われる言葉
5月が使われている言葉を、季節を意味するものと行事を意味するものに分けて紹介します。どのような言葉があるのかを学ぶことで、季節や行事との関連性について、理解が深まるでしょう。
季節を意味する言葉
先述の通り、旧暦の5月は現在の暦で6~7月ごろにあたり、梅雨の季節を含む時期です。梅雨の別名は「五月雨」といい、5月が使われています。
一方で、「五月晴れ」という言葉もあります。現在では5月の晴天の意味で使われることが多いものの、本来は梅雨の合間の晴天を指す言葉です。
また「五月蠅い(うるさい)」を、漢字で5月の蠅(はえ)と書くのは、梅雨になると蠅が増えてうるさいことが理由だといわれています。
行事を意味する言葉
行事を意味する言葉には、端午の節句に関連した「五月人形(ごがつにんぎょう)」や「五月幟(ごがつのぼり)」が挙げられます。いずれも男児を災厄から守り、健やかな成長を願って飾るものです。
五月人形には、兜(かぶと)や鎧(よろい)を着けた武者姿が多く見られます。五月幟は、屋外に飾る家紋や武者絵などを入れた幟のことです。天高く掲げることで、神様に男児の誕生を伝える意味もあります。
もともとは武家の風習でしたが、江戸時代の中頃から庶民にも広まり、立身出世を連想させる「鯉の滝登り」の絵柄が流行して「鯉のぼり」が生まれたとされています。
5月の別名は夏や梅雨を思わせる
「皐月」が5月の一般的な別名だと知っていても、田植えの季節に由来することを知らない人は多いかもしれません。また5月には梅雨を連想させる呼び名が豊富にあり、昔の人にとって梅雨の印象が強い季節だったことがうかがえます。
一方で、端午の節句に関する月の名前や言葉は、現代人にとっても馴染みやすいといえます。5月の別名をきっかけに、親子で昔の人の暮らしや心情を想像したり他の月の別名を調べたりしながら、日本文化への理解を深めていきましょう。
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構成・文/HugKum編集部