目次
「鶏口牛後」とは?
まずは、「鶏口牛後」の読み方と意味、語源を押さえておきましょう。
読み方と意味
この言葉は、「鶏口牛後」と書いて「けいこうぎゅうご」と読みます。「大きな組織・集団の末端にいるよりも、たとえ小さな集団でもトップとなって重んじられるほうがよい」という意味を、「牛の後(尻)になるよりも、鶏の口になった方が良い」と喩えた言葉です。
由来・語源
この言葉の由来は、中国の通史である『史記』の中の「蘇秦伝」です。戦国時代の政治家である蘇秦は、秦以外の6ヶ国の王に対して、「秦に従うよりも、各国が連合して秦に対抗するべき」と説いてまわり、同盟を組ませて秦の侵略行為を妨ぎました。
蘇秦が韓の宣恵王を説得する際に、「むしろ鶏口となるとも、牛後となることなかれ」と述べたことから、「鶏口牛後」が生まれたと考えられています。
鶏頭牛尾?鶏頭となるも牛尾となるなかれ? 誤用注意!
時には、「鶏口牛後」を、「鶏頭牛尾」や「鶏頭となるも牛尾となるなかれ」と表記されることがあるようです。しかしながら、このどちらもが「鶏口牛後」の誤用。
日本語では、頭がトップ、尾が末端を表す言葉として一般的であるため、この誤用が広まってしまったようです。間違えて使わないように注意しましょう。
使い方を例文でチェック!
ここからは、「鶏口牛後」の具体的な使い方を例文を通してチェックしていきましょう。
1:【鶏口牛後】を実践するべく、大企業から独立して起業を決意した。小さな会社ではあるが、自分の思うように事業を進めることができている。
大勢の社員を抱える大企業から独立し、会社を起業したシチュエーションに「鶏口牛後」を用いた例文。
このように、大きな組織よりも、小さな組織のトップになることにメリットを見出して行動する際などに用いられやすい言葉です。「鶏口牛後を実践する」といった使い方も一般的です。
2:強豪校ではレギュラーにさえなれず大会に出られなかったかもしれないが、そこそこの学校に入ったおかげで、レギュラーに選ばれて大会にも出場できた。まさに【鶏口牛後】だ。
「鶏口牛後」はビジネスシーンで頻出する四字熟語ですが、もちろん、この例文のようにスポーツのチームや学校についての話題でも使われることがあります。
「大会に出ること」を重要視した場合、競争倍率の高い強豪校よりも、多少弱小な方がレギュラーに選ばれやすいことを言い表した際に「鶏口牛後」を用いた例文です。
3:勤務先は小さな会社ではあるが、【鶏口牛後】というように、その分、雑務から重要なものまで、さまざまな業務を経験できている。
小さな組織だからこそ、重要な仕事から細かな仕事まで、さまざまな業務を経験できる場合は多いですよね。このような状況を言い表す際も、「鶏口牛後」を使うことができます。
類語や言い換え表現は?
では、「鶏口牛後」には、どのような類語が存在するのでしょうか。言い換えに使える表現をご紹介します。
1:鯛の尾より鰯の頭(たいのおよりいわしのかしら)
「鯛の尾より鰯の頭」とは、「高級な魚である鯛の尾よりも、大衆的な魚ではあるが鰯の頭のほうが良い」という意味の言葉です。
鰯の頭は自分で考えて進むべき道を決めることができますが、鯛の尾にはそれができません。このことから、「鶏口牛後」と同様に、「大きい集団で人に従うよりは、小さな集団でもトップになるほうが良い」ということを言い表しています。
2:芋頭でも頭は頭(いもがしらでもかしらはかしら)
「芋頭でも頭は頭」とは、「どんなに小さな集団でも、“トップ”であることには変わらない」といった意味合いを芋で喩えた言葉です。「鶏口牛後」とほぼ同じ意味合いの言葉ですが、大きな集団と「比べる」ニュアンスは薄まります。
3:大鳥の尾より小鳥の頭(おおとりのおよりことりのかしら)
「大鳥の尾より小鳥の頭」もまた、「鶏口牛後」や「鯛の尾より鰯の頭」と同様に、大きな鳥の尾よりも小さな鳥の頭の方が主体的に動けることから、「大きい集団で人に従うよりは、小さな集団でもトップになる方が良い」という意味を持つ言葉です。「鶏口牛後」の言い換えとして使うことができます。
対義語は?
「鶏口牛後」には、反対の意味を言い表したいときに使える言葉も存在します。ここでは、「鶏口牛後」の反対にあたる言葉を見ていきましょう。
1:犬になるなら大家の犬になれ(いぬになるならたいかのいぬになれ)
「犬になるなら大家の犬になれ」とは、「どうせ仕えるなら、大物を選べ」という意味の言葉です。「誰かに飼われるのであれば、お金持ちの主人の方が良い」と、犬の境遇にたとえている点が面白いですね。
小さなものより大きなものを重んじており、「鶏口牛後」とは反対の意味を持つ言葉と言えます。
2:寄らば大樹の陰(よらばたいじゅのかげ)
「寄らば大樹の陰」とは、「どうせ立ち寄るのであれば、大きい樹木の陰のほうが雨や日差しが避けられる」ことから、こちらもまた、「頼りにするなら大きな力があるほうが良い」という意味合いの言葉です。
「犬になるなら大家の犬になれ」と同様に、小さなものより大きなものを重んじている点において、「鶏口牛後」とは対になる言葉と捉えられます。
英語表現は?
英語には、「鶏口牛後」とかなり近い意味を持つことわざが存在します。最後に、「鶏口牛後」に似た英語表現を押さえておきましょう。
1:Head of a dog beats tail of a lion.
“Head of a dog beats tail of a lion.”とは、直訳すると「ライオンの尻尾になるより、犬の頭になったほうが良い」という意味になる英語のことわざです。
「鶏口牛後」や、その類語としてご紹介した「鯛の尾より鰯の頭」と同様に、「大きな集団の末端になるよりも、小さな集団のトップとなった方が良い」ことを言い表しています。
2:It’s better to be a big fish in a little pond than a little fish in a big pond.
“It’s better to be a big fish in a little pond than a little fish in a big pond.” とは、「大きな池の小さな魚より、小さな池の大きな魚のほうがよい」と直訳できる言葉です。
こちらもまた、大きな場所に属するよりも小さな場所を良いとしていることから、「鶏口牛後」と同じ意味を持つ英語表現と言えます。
ビジネスシーンでの頻出語。ただし、相手の境遇に注意して使うようにしましょう
今回は「鶏口牛後」の意味から語源、使い方、関連語までをお伝えしてきました。
先述してきたように、「鶏口牛後」はビジネスシーンで頻出する言葉です。しかしながら、その意味合いの通り、大きな企業に勤めている方に対して使うと、失礼にあたるおそれがあります。使う場合は、相手の境遇に注意するようにしましょう。
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文・構成/羽吹理美