「あそこの塾は難関中学の合格率が高い」「あの教室には有名な先生がいる」なんていう情報を聞いたら、愛するわが子をぜひ通わせたい!と思う方も多いのではないでしょうか。また、子どもが「やりたい!」と言った習い事の教室が近くにない場合も、できる限り子どもの望みを叶えたいと思うのが親心というものです。
しかし、塾や習い事へ通うのに要する時間は無視できません。仮に、往復で2時間かかる教室に週に2回通う場合、年間で192時間(=8日間)も移動に時間を使うことになります。そう考えると、近くの教室にして、空いた時間をほかのことに使うほうが有益なのでは?と悩む方もいるでしょう。
そこで今回は、遠くても通う価値があるケースや、遠方への通塾・通室が負担に感じたときに考えるべきことについて、掘り下げていこうと思います。
通う目的が明確なら遠くても通う価値あり
遠い教室であっても、その教室に通う目的が明確なのであれば、通う価値はあると私は考えています。遠くても有意義な学びが得られる例として、以下の3パターンをご紹介します。
①進学・大会実績がすぐれている
1つ目は、近くの教室よりも遠い教室のほうが実績が高いケースです。
塾であれば難関校への合格率が高かったり、著名な講師が在籍していたりすると、遠方から通う生徒も一定数存在します。ピアノやバレエ、水泳などの習い事も、大会出場のために遠くの教室へ通うケースはよくあります。
ただし、「○○学校に合格したい」「全国大会で1位を取りたい」などの目標を子ども自身が持っていることが重要です。その目標を達成するための手段のひとつとして、遠くの教室へ通うのであれば、そこでの学びは将来を左右するほど大切なものになるでしょう。
②近くではできない習い事である
2つ目は、習い事の特性で教室が近くにないパターンです。
例えば、子どもが「フィギュアスケートを習いたい!」と言い出したとき、自宅近くにスケートリンクがある人はどれくらいいるでしょうか。おそらく、近所にスケートリンクがある人は少数派かと思います。そのほかにも、スケートボードやレーシングカートなど限られた場所でしかできない習い事は、多くのケースが遠方へ通わざるを得ません。
子どもがやってみたい!と思うのであれば、やはりその「好奇心」や「やる気」はできるだけ尊重したいところ。主体性を持って取り組む経験は「自己実現力」を伸ばすためにとても重要です。
あまりにも遠い場合は難しいですが、多少遠くても通える範囲であれば、子どもにとって良い成長の機会となるでしょう。
③学校の友達とは違う教室に通わせたい
意外かもしれませんが、学校の友達と塾・習い事の教室が同じにならないよう配慮して、あえて遠くの教室に通うケースもあります。
進学塾の場合、塾内でレベルごとにクラス分けをする教室も多いかと思います。仮に、わが子が普通クラス、同じ学校のクラスメイトが上級クラスに在籍することになったらどうでしょう。子ども自身が劣等感を抱くこともありますし、保護者の間でトラブルの火種になることもあるのです。
子どもの友達関係を平穏に保ち、不毛なトラブルを未然に防げるのであれば、遠くても通う価値があると言えるでしょう。
親子でぐったり… 遠方へ通うのを負担に感じるケースとは
一方で、遠い教室に通うことで感じる負担・デメリットにはどのようなものがあるでしょうか。子どもと親それぞれの視点から、遠方へ通うことのリスクをまとめてみます。
子ども:時間が足りない
人間はみな等しく1日は24時間しかありません。通室に時間がかかる分、以下のように時間的な負担を感じることが考えられます。
・睡眠時間が減る
・家族との時間がなかなか取れない
・同級生と遊ぶ時間がない
特に睡眠時間については大きな問題です。公益社団法人日本小児保健協会が実施した調査によると、スケジュールの過密化や生活の夜型化などにより、「睡眠不足を感じている児童生徒」の割合は年々増加しています。
睡眠不足は、食欲不振を招くほか、注意力・集中力が散漫になるなど、子どもの成長にとってマイナスなことばかりです。心身の成長に必要な睡眠が、塾や習い事のために不足するというのは、好ましい状況とは言えません。
出典:公益社団法人日本小児保健協会「子どもの睡眠に関する提言」
親:家事に育児に仕事…両立が難しい
近年共働き世帯が非常に増えています。内閣府の発表によると、令和3年の共働き世帯の割合は約7割に上ります。
加えて核家族化が進む昨今では、父母で家事・育児・仕事を両立させなければなりません。そこに、遠方の塾や習い事への送迎が加わると、手が回らなくなる家庭が多いでしょう。
例えば、習い事教室へ片道1時間、レッスンが1時間あるとすると、合計で3時間必要です。週に1日だけであっても、3時間を捻出することは親にとって大きな負担となります。
やっぱり通うのが大変!近くの教室にすべき?
遠くの教室へ時間をかけて通うのなら、近くの教室に通って浮いた時間を別のことに使ったほうが良いのでは?と思う方も多いかと思います。大変な思いをしてまで遠方へ通う必要があるのか、判断が難しいところです。
ここでは、近くの教室を検討すべき場合について、3つの例を挙げてみます。
①スケジュールが忙しすぎる
1つ目は、忙しすぎて日常生活に支障が出てしまう場合です。
最近の子どもは、塾や習い事をいくつも掛け持ちしている場合が少なくありません。ただでさえ忙しいのに、遠方の教室へ通うとなれば、睡眠不足になりやすいのはもちろん、疲労が抜けずに体力が追いつかない、ということもあり得ます。
特に、学校で眠気を感じていたり、学校の宿題がおざなりになっていたりする場合は要注意です。日常生活のバランスが崩れているように感じたら、塾や習い事について考え直すべきかもしれません。
②近くの教室でも十分学べる
遠くの教室へ通う明確な目的がないのであれば、近くの教室でも良質な学びや経験が得られる可能性があります。近隣の教室へ通うほうが時間効率がよいため、子どもや親の負担が少なく済みます。
今一度、教室へ通う目的や目標を子どもと一緒に確認して、遠くの教室へ通う必要があるかどうか検討してみましょう。
③自宅学習や練習の時間が取れない
塾や教室に通うだけでは、十分な成果は得られません。塾で学んだことを自宅で復習し演習を繰り返すことで、自分の力になります。習い事も、自宅での反復練習やトレーニングの積み重ねが必要なものがほとんどかと思います。
しかし、教室に通うのに時間がかかり、学習や練習の時間が減るようでは本末転倒です。「通う」ことだけに満足していないか、振り返ってみてください。教室に通うことで得られる結果は一部に過ぎず、自宅での勉強や練習も必要不可欠であることを意識した上で、通う教室を選ぶとよいでしょう。
そこでしか得られない「学び」なのかを考えよう
塾や習い事は、教室に行く「目的」や「目標」が何よりも重要です。遠くの教室でしか得られない学びがあり、その学びが子どもにとってプラスになるのであれば、通うことで新たな世界が広がるでしょう。
ただし、大人も子どもも時間が無限にあるわけではありません。学びの質と生活時間のバランスを見極めて、心身ともに健康で有意義な時間を過ごせるようにしたいですね。
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構成/HugKum編集部