目次
「沙羅双樹」とは?
まずは『沙羅双樹』の読み方や特徴等、基本情報を押さえておきましょう。
沙羅双樹とは?
この植物名は『沙羅双樹』と書いて「さらそうじゅ」と読みます。
淡い黄色の小さな花を咲かせ、その花からオレンジやジャスミンのような爽やかな香りを放つ樹木です。開花時期は3〜7月頃。もっとも見頃になるのは4月頃と言われています。
基本情報
別名:シャラソウジュ、サラノキ、シャラノキ
科:フタバガキ科
属:コディアウエム属
原産国:インド
分類:常緑高木
開花時期:3~7月(見頃は4月)
別名:沙羅の木
暑い地域に分布。日本で見られるのは滋賀県の植物公園のみ
しかしながら、この沙羅双樹が主に分布するのは、インドの中北部からヒマラヤにかけての暑い地域。日本で唯一、開花株が見られるのは、滋賀県草津市立「水生植物公園 みずの森」です。
「沙羅双樹」の名前の由来と、仏教との関わりの歴史
冒頭でも述べたとおり、『沙羅双樹』は「仏教の三大聖樹」のひとつとされる植物です。では、なぜ仏教においてそのような重要な樹木とされるようになったのでしょうか。その経緯の中に、『沙羅双樹』の名前の由来もありました。
【名前の由来にも】お釈迦様入滅の場所に2本生えていた
仏教では、お釈迦様が入滅した場所にサラノキ(沙羅双樹の別名)が生えていたとされます。このことから、この木が般涅槃(はつねはん/誕生、生、死の繰り返し=輪廻から解放された状態)を象徴するものに。
さらに、そこに生えていたサラノキが2本(双樹)並んだ状態だったことから、この植物は『沙羅双樹』と呼ばれるようになりました。
日本の寺院では、ナツツバキを代用
上述したエピソードから、『無憂樹(釈迦が生まれた所にあった木)』『印度菩提樹(釈迦が悟りを開いた所にあった木)』と並んで「仏教の三大聖樹」のひとつとされる『沙羅双樹』。
しかしながら、先にも述べた通り、この植物は暑い地域にしか分布していません。そのため、気候が適していない日本の寺院等では、外見の似ているナツツバキ(夏椿)を「沙羅双樹」の代用として植えています。
ナツツバキは、サルスベリとも呼ばれる白い花を咲かせる樹木。今度寺院に訪れる際は、注意して見てみてくださいね。
『平家物語』に登場する「沙羅双樹の花の色」とは?
『沙羅双樹』は、『平家物語』に登場することでも知られています。『平家物語』とは、平清盛を筆頭とした平家一門が、全盛の後に源氏との戦いに敗れ、滅んでいくまでの経緯を描いた軍事物語です。
あの有名な冒頭文では、「無常」の象徴として用いられた
「琵琶法師」によって広められたとされるこの『平家物語』の冒頭には、
「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必滅の理をあらはす」
とあり、『沙羅双樹』をこの一文で知る方も多いようです。
この一文は、「祇園精舎の鐘の音には、この世に永久不変なものはないという響きがある。沙羅双樹の花の色は、どんなに栄えている者も必ず衰えるものである道理をあらわしている」という意味。
「無常」(この世のすべてのものは、生じたり変化したり滅したりして、永遠不変のものはないこと)の象徴として、お釈迦様が入滅した場所に生えていた『沙羅双樹』を用いたと捉えることができます。
「沙羅双樹」の花言葉は「愛らしい」?
時折、『沙羅双樹』には「愛らしい」という花言葉があるとされますが、実はこれは間違い。
『沙羅双樹』は日本に分布しないため、花言葉が設定されていません。「愛らしい」は『沙羅双樹』の代用花とされているナツツバキの花言葉です。似た樹木ですが、異なった植物なので、同じ花言葉を持つわけではない点に注意しましょう。
国内に自然発生しないものの、滋賀県の植物公園では見られる植物
今回は、『沙羅双樹』の基本情報や名前の由来、仏教との関わりについてをお伝えしてきました。少し詳しくなると、その植物への興味が俄然わいてきませんか?
『沙羅双樹』は日本に自然には分布しないものの、滋賀県草津市立「水生植物公園 みずの森」へ行けば見ることができる植物です。滋賀県に遊びに行く際や、お近くにお住まいの方は、ぜひ一度『沙羅双樹』を見に立ち寄ってみては。
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文・構成/羽吹理美