【発達障害の思春期女子】14歳で初潮を迎えた自閉スペクトラム症の子は不安で外出できなくなったことも。親が教えるべき知識と生理用品の準備の仕方は?療育アドバイザーが教えます

発達障害の女の子の支援キャリア20年の藤原美保さんは、「放課後等デイサービスLuce」を10年近く運営し、発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきました。2022年5月からは障害のある子が保護者と共に利用できる脱毛サロンを主宰されています。 サロンでは作業療法士、公認心理師が施術の際に保護者からの包括的な相談に対応しているそうです。長らくLuceで「性教育プログラム」の一環として身だしなみ療育を中心に行ってきた、藤原さんに、自閉スペクトラム症の子の生理の準備について教えていただきました。

わたしが運営していた放課後等デイサービスのLuce(ルーチェ)では、生理は「女性の心身の健康のバロメーター」と伝えていました。子宮や卵巣から作られる女性ホルモンは女性の身体にとって「心身の健康を保つ」ためにとても重要な役割をします。

もし、子宮や卵巣が無くなってしまったら、ホルモンバランスが崩れ、更年期障害の症状に見られるようにな動脈硬化、骨粗しょう症のリスクが高まるだけでなく、感情や精神にも影響を与えます。周期的に生理が来る事は身体の健康の指標の一つとして重要です。生理が定期的に来ることは、妊娠の為だけではなく女性の心身の健康を保つために必要なものであることを、知っていてほしいと思います。

生理中は不安が募って一切外出できなくなった自閉スペクトラム症の14歳の子

自閉スペクトラム症の子の多くは「変化」が苦手です。体の変化も同様で、「生理」に慣れるのに時間が必要なケースもあります。

私の見てきた子の中で生理中は外出が一切できなくなった子がいます。この子は14歳で初潮を迎えましたが、自分の経血量やどれくらいの期間続くのかイメージがつかないために不安になり。生理期間は学校にも行けなくなってしまいました。

まず、お母さんにお願いして、経血量別にナプキンを用意してもらい、生理期間の1週間の中でナプキンのサイズと自分の経血量に合わせた使い方を具体的に決めました。

初日から中盤から終盤にかけて、と経血の量に応じたナプキンを使い分けることを教え、慣れていくことで少しずつ不安の取り除く事をしていきました。家でできるようになったら、まずは生理の終盤にさしかかった5日目ごろから保護者と一緒に慣れた場所から外出の練習を始めました。

動きやすいトイレ選びも重要

 最初に選んだのは行き慣れている比較的近くにあるデパートです。身体の動かし方が不器用な子にとって、狭いコンビニなどのトイレより、キレイで広く落ち着けるスペースは安心材料の一つになります。なので、ホテルのトイレを使うこともおすすめです。外出先でもきちんとナプキンを取り換えられるという成功体験を積み重ねていきました。出かける前に安心して使えるトイレの場所のチェックは必須でしたが、徐々に経血量の多い1,2日目も外出できるようになりました。

不安が強いお子さんの場合には無理強いをせず、本人の気持ちに寄り添うことが大事です。この子の場合、生理中の外出に不安がなくなるまでに2年という期間が必要でした。

具体的な生理への準備の前に必要なのはまず「排せつ」への知識

私が運営していたLuceでは、小学校1年生の時に「食事、排せつ、睡眠、衛生」について教えていました。自閉スペクトラム症の子の場合、自分の知っている情報と新しい情報をつなげる事ができない子が多いのです。なので、まずは自分の身体の事を知ってもらうことが大事だと考え、身近な日常生活とつなげて教えていました。

自分の身体はどんな風になっているのかなど食事と排せつの関係や、それぞれの臓器の大まかな働き(胃、腸、肝臓など)を伝える際に、「子宮」についても、どういう役割がある臓器か、そして、女の子の身体には尿道口、肛門、膣口がある事も一緒に教えていました。

小学校4年生になっても尿と便が同じ所から出てくると思っている子も少なくありませんでした。わたしは、内臓の仕組みが具体的にわかる布でできた教材を使っていましたが、ご家庭では、絵本でもいいですし、図鑑でも、図書館で借りてもいいと思います。とにかく、目で見て確認できることが大切です。

「生理」の前に「おりもの」の知識を

小学校でも4,5年生ごろに生理を教えているようですが、その際に「子宮」という臓器の存在を初めて知る子もいると聞きます。自閉スペクトラム症の子は、自分の身体にいきなり「子宮」ができたと思う子も多いのです。普段の生活の健康管理の情報を、やがて来る「生理」への準備につなげることがおすすめです。

まず、生理の前に「おりもの」が始まる事を知らない子はかなり多いです。いきなりパンツにネバネバする物が付くようになり、不安で何度もパンツを変える子もいました。「おりもの」が始まったらお子さんに「大人の体になる」準備が始まった事を伝えてください。

子宮や卵巣は、女性ホルモンを分泌し女性の身体の健康を保つ大事な役割がある臓器です。「おりもの」は膣内部粘膜を守り、汚れを排出するなど黴菌が子宮内に侵入するのを防ぐ役割があります。色やにおいなどから身体の異常が解ることも知っておきたいことです。

 おりものシートを使ってみる

自閉スペクトラム症の子には生理のナプキンを使う前の練習として「おりものシート」を使ってみることを保護者におすすめしています。「おりものシート」のショーツの付け方や取り換え方、捨て方を練習しておくことは、親子共々「生理」を迎える心構えになります。

正しいナプキンのつけ方がわかっていない子も多い

生理用ショーツも様々なデザイン(ボクサータイプ、ショーツタイプ等)や素材があります。ショーツやナプキンの肌ざわりに対する反応も個々よって違うので試しながら合うものを見つけていくのがおすすめです。自閉スペクトラム症の中でも、特に感覚に過敏さやこだわりを持つ子の場合は、その子に合ったものを探してあげて欲しいと思います。

「生理中毎日シーツを汚す」と言う保護者からの相談がありました。「ナプキンはサイズ別に購入して準備してある」とのことでしたが、本人からよく話を聞いてみると、経血量によってナプキンを使い分けること、経血の量が変化することなど、理解していない事がいくつかありました。保護者は用意をしてあるつもりでも、具体的な用途や使い方がわからなくては役に立ちません。この子は、寝る際に大きいサイズのナプキンを着けることを知らなかったためにシーツが汚れてしまっていたのです。

生理ショーツにナプキンを合わせる目印をつける

自閉スペクトラム症の子の中には、ナプキンをどの位置につけてよいか解らない子も結構見受けられます。生理用ショーツには布が二重になる部分があり、視覚的につられやすい子は、二重になるところの線に合わせてナプキンをつけてしまう子が結構います。その場合、座位になると前から経血が漏れてしまいます。

視覚的に確認ができるよう、生理用ショーツに糸で「ナプキンの頭を合わせる線」をつけることもおすすめです。ただし、感覚過敏の子への配慮として、糸の結び目は肌の接触面にしないようにしましょう。布用テープを貼るなど目印を付けるようにするのもおすすめです。

自閉スペクトラム症の子は「こんなことわかるだろう」と大人が思っている事が分からないことが多いのです。生理に関しても、子どもの理解度や発達段階に合わせたアプローチが必要なことを理解していただきたいと思います。

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記事監修

藤原美保さん|(株)スプレンドーレ代表

健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。

発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育に力を入れてきた、放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年3月まで運営。2022年5月から、障害のあるお子さんと保護者が通う事ができ、施術中に療育相談を受けられる美容・脱毛サロンLuceを運営。発達障害のお子さんの療育アドバイザーとして相談や療育コンサル、発達障害のお子さんへのオンラインでの性教育を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中

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