語学の習熟度を測る「CEFR」とは。英検・TOEIC・TOEFLとはどう違う? 日本人向けの「CEFR-J」についても解説

「CEFR」は語学の習熟度を測る際に活用される指標です。CEFRを活用すれば、自分がどの程度の語学力を持っているかが分かり、語学の学習に役立ちます。活用方法やレベルごとの能力設定、学習のポイントなどを見ていきましょう。

語学学習に役立つ「CEFR」とは

CEFR(セファール)は言語テストと誤解されがちですが、試験の名前ではありません。どのような意味の言葉なのか、詳しく見ていきましょう。

言語の習熟度を測るための指標

CEFRとは、ある言語に対してどの程度習得しているかを表す指標です。「Common European Framework of Reference for Languages」を略した言葉で、日本語では「ヨーロッパ言語共通参照枠」といいます。

CEFRでは、外国語のリスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの技能を、6段階で評価します。英語以外にもさまざまな言語の参照枠が用意され、国際的に活用されていることが特徴です。CEFRを活用すれば、自身の外国語能力を的確に判断できます。

多言語を扱うヨーロッパで発足した

CEFRは、2001年にケンブリッジ大学英語検定機構が欧州評議会に協力する形で作成されました。CEFRが必要になった背景には、1993年のEU(欧州連合)の発足があります。

EU内での人・物の移動が自由化され、多言語使用が一般的になったことで、言語学習における共通の指標が必要になったのです。

学習者が自らのレベルを判断して学習に役立てることはもちろん、教育や就労などで英語能力を証明するためにも役立てられています。

さまざまな語学のテストで有用

CEFRのレベルをチェックするには、実用英語技能検定(英検)・TOEIC・TOEFLなどの語学テストを受け、各試験の判定結果と文部科学省が公表している「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」を照らし合わせる方法があります。

CEFRは英語の4技能を証明する方法として、大学入試でも使われ始めています。CEFRに完全準拠したテストを受けたい人は、「ケンブリッジ英語検定」や「リンガスキル」がおすすめです。

ケンブリッジ英語検定は世界的に高い知名度があり、世界130カ国以上で実施されています。リンガスキルは、ケンブリッジ大学英語検定機構によって開発されたオンラインテストで、自宅受験が可能です。

参考:各資格・検定試験とCEFRとの対照表|文部科学省

「CEFR」のレベル分けは6段階

CEFRのレベル分けは下から順に、A1・A2・B1・B2・C1・C2となっています。それぞれのレベルの言語運用能力について、理解を深めましょう。

A1・A2(初級者)

A1は学習を始めた直後の初学者レベルです。日常会話に頻出する言い回しを理解し、基礎的な自己紹介や質問の受け答えなどができます。相手がゆっくりと喋ってくれれば、簡単なやりとりが可能です。

A2は学習を継続中の初級者レベルです。自分や家族の個人情報、仕事や買い物など自分の行動に直接関係するやりとりをする際に、よく使用される表現や文章を理解できます。

A2のレベルであれば、自分の身の回りの状況を簡単な言葉で説明できる語学力を持っている証明になるでしょう。

B1・B2(中級者・準上級者)

B1は語学を習得しつつある中級者レベルです。学校や仕事、娯楽などの分野で身近な話題について会話や理解ができ、その地域を旅行で訪れた際に起こりそうなたいていの出来事に対処可能です。また、経験や出来事に対する簡単な説明ができ、短い意見を述べられます。

B2は自分の専門分野に関する技術的な議論ができ、実務に対応できるレベルです。幅広い話題に対して明確な文章を作成し、少々複雑な文章であっても内容を理解できるレベルに達しています。母国語を話す相手とも、緊張せずに会話のやりとりができます。

C1・C2(上級者・熟練者)

C1は優れた言語運用能力がある上級者レベルです。複雑で高度な長い文章を理解でき、表面上だけでなく深い意味も読み取れます。

自分の意見を主張するだけでなく、よどみなく自然な自己表現ができ、目的に応じた柔軟で効果的な言葉の使い分けが可能です。

C2は母語話者とほぼ同レベルで言語を扱える熟練者です。母国語と変わらないくらい、話や文章の内容を簡単に理解できるレベルに達しており、複雑な状況でも細かい意味の違いを理解して自己表現ができます。

日本人向けの「CEFR-J」もある

CEFRは言語の構成が似ているヨーロッパ圏で作成された指標なので、日本人のレベルには合っていない部分があります。日本人向けに作られた、CEFR-Jについて見ていきましょう。

日本人の大部分がAレベル

文部科学省の2023年度「英語教育実施状況調査」によると、CEFR A2レベル以上の高校生は50.6%、CEFR B1レベル以上の高校生は19.8%です。

高校卒業後に英語を継続して学ばない環境にある人も多いと考えると、Cレベルの人はほとんどいないと判断できます。

そのような状況でA1〜B2までの4段階でレベル分けをしようとすると、評価が大雑把になってしまいます。レベル分けをより明確にするため、CEFR-Jが作られました。

参考:令和5年度「英語教育実施状況調査」概要 |文部科学省

初級~準上級までをさらに細分化

CEFR-JはCEFRをベースに、日本人の一般的な英語能力に合わせて作られています。初級〜準上級のA1〜B2までをさらに細分化しており、A1より下のPreA1を設けていることが特徴です。

CEFR-Jでは下から順に、Pre A1・A1-1・A1-2・A1-3・A2-1・A2-2・B1-1・B1-2・B2-1・B2-2・C1・C2の12段階に分けられています。CEFRのA~Bレベルの分け方とは違い、自分の言語能力をより詳細に把握できる仕組みです。

例えばA1-1は、「日にちや場所について質問できる」「定型表現を用いて家族や趣味などの限られた情報を伝えられる」といった能力が設定されています。

最も低いレベルのPreA1は、「一般的な日常のあいさつができる」「名前や年齢などの限られた自分の情報を伝えられる」などの能力が該当します。

CEFRのレベルを上げる学習方法

語学学習をする際のポイントを知っていると、効率よく勉強できます。CEFRのレベルを上げるために必要な学習時間や、勉強方法について見ていきましょう。

実力を把握し無理のない学習計画を立てる

語学を着実にレベルアップさせるには、自身の実力を把握するところから始め、無理のない学習計画を立てることが大切です。

CEFRのレベルを上げるのは簡単ではありません。一般的にB1からB2のレベルに上がるには、約200時間の勉強時間が必要といわれています。1日2時間の勉強を毎日休まずに続けたとしても、3カ月を超える時間がかかる計算になります。

完全に初心者の状態から始めるのであれば、もっと多くの時間が必要です。環境や適性なども関係しており、普段英語に触れる機会が多い人ほど、学習スピードは速くなるとされています。

英語の4技能を偏りなく習得する

CEFRのレベルを上げるなら、リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4技能を偏りなく学習しましょう。効率よく学習するには、苦手分野を見極めて伸ばす必要があります。

学習方法としては、自分のレベルに合った参考書を購入して独学する方法や、英語の4技能を学べる通信教育、英会話教室などを利用する方法などがあります。

リスニングやスピーキングは実際に会話をする機会があったほうが上達しやすく、コーチをしてくれる人がいると挫折しにくいでしょう。

CEFRを語学のレベルアップに役立てよう

CEFRは外国語の習熟度を測る際に、国際的に使用されている指標です。能力ごとにレベルが設定され、最も高いレベルでは母国語同様に言葉を扱えると判断されます。

CEFRのレベルが分かれば自分の語学スキルを正確に伝えられ、学習内容の設定に役立ちます。英語の勉強を始めたばかりの人は、日本人向けにレベルが細分化されたCEFR-Jの活用がおすすめです。

語学テストの判定結果と対照表を照らし合わせれば、CEFRのレベルが分かります。自分のレベルを客観的に知り、言語の上達を目指しましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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