現役早稲田大学生小説家・鈴木るりかさんに聞く「大学受験」と「執筆活動」の両立。多くの作家を生み出した憧れの大学で、今の目標は?

14歳で小説家デビューを果たし、早稲田大学社会科学部へ進学した鈴木るりかさん。受験と執筆の両立や大学生活での変化についてどのように感じているのでしょうか。進学先を選んだ理由や、日々の経験がどのように小説に影響を与えているのか、そして将来の夢についてもお話を伺いました。

受験と並行して新作を執筆。面談では手ごたえがなく……

早稲田大学を志望した理由を教えてください。

 「作家と言えば早稲田」という憧れをずっと持っていました。私も小説家の一人として、多くの著名な作家さんが学んだ早稲田大学で学びたいと思いました。 

社会科学部に進学されたのですね。

高校1年の進路指導で先生から、社会科学部の全国自己推薦入試のことを教えてもらいました。全国を7つのブロックに分け、各ブロックから大体5名程度の合格者を選抜する形式です。出席日数、評定など一定の条件を満たした上で、学業以外の目覚ましい活動実績、受験勉強だけではないプラスアルファの個性を求められるので、中学から小説家として活動している自分にとても合っていると感じたんです。
狭き門であることは分かっていましたが、挑戦してみようと思いました。

早稲田大学社会科学部に通う作家・鈴木るりかさん

受験勉強と執筆を両立

5作目の『落花流水』は受験と並行して執筆されました。

もともと高校3年になったら一度書くのを休むかもしれないと担当の編集者さんに話していたんです。でも、いざ3年になってみると、やっぱり書きたい気持ちが湧いてきて……。受験勉強の合間に自分に合ったペースで執筆していたので、両立が厳しいと感じたことはあまりありません。私にとって小説を書くのは息抜きのようなもので、逆にストレス発散になりました。 

受験を振り返って大変だったことはありますか。

自己推薦がダメだった時に備えて、一般受験の勉強も並行してやらなければならなかったことですね。3の夏休みが終わってからは推薦試験の準備に多くの時間を割いたので、一般受験の勉強がどうしても手薄になり、焦る気持ちは常に抱いていました。

いざ推薦の面接を迎えた日、面接官に厳しい表情で『小説を書くなら文学部に行った方がいいんじゃないかな』と質問され、「普段から新聞をよく読む中で社会的な知識がまだ足りないと感じ、小説を書く際にももっと社会の出来事を学びたい」と答えたのですが、面接時間も予定の半分くらいの時間で終わってしまいました。手応えがあまりなかったので、合格をいただいた時は驚きでしたね。

在学中に6作目を出版。大学生活の中で創作のヒントが

昨年、6作目となる長編小説『星に願いを』が出版されました。執筆と大学生活の両立のコツを教えてください。

大学生活では授業だけでなく、友人との時間や家庭教師のアルバイト、漫画研究会のサークルなどいろいろなことをしていますが、これまでと変わらず、休みの日を執筆にあてています。本も変わらず読んでいて、最近はミステリー系の本に興味を持つようになりました。以前からミステリーを書いてみたいと思っていたので、最近はアガサ・クリスティなどの作品を読んでいます。
『春にして君を離れ』は、アガサ作品の中では珍しく殺人が出てこないミステリーなんですが、人間の心理描写が深くて、これが殺人事件並みに恐ろしいんです。こういうミステリーを自分でも書いてみたいですね。

活動の場が広がる中で、さまざまな意見が届くと思います。ネガティブな声にはどのように対応していますか。

そういう意見もあるなと思うこともありますが、自分の中で譲れない部分は曲げないようにしていますね。

大学生活で成長したと感じることを教えてください。

中学・高校は少人数の女子校だったので、周りは似たようなタイプの人が多かったんですが、大学に入ると本当にいろんな人がいるので、そこで大きく変わったと感じます。大学生活を通して、小説にもつながるような経験が増えていっているというイメージです。

ミステリーや漫画の原作も書いてみたい

現在、大学3年生。将来についてはどのように考えていますか。

祖父と父が社会科の教員をしていたので、小さい頃から教員という職業も常に意識の中にありました。社会科学部は祖父たちと同じ社会科教員の免許が取得できるので、今それに向けて勉強中です。

先日も母校に教育実習の挨拶に行ってきました。昔のような一斉授業ではなく、今は生徒が自ら働きかけて勉強する授業が主流です。私も、生徒のやる気や質問を引き出せるような授業をやってみたいと思っています。

小説家として、今後の展望を教えてください。

私は小説も好きなのですが、漫画も大好きなんです。将来は、ミステリー作品や漫画の原作にも挑戦したいです。これからもさまざまな経験を積んで、それを作品に反映できたらいいなと思います。

 こちらの記事ではるりかさんに幼少期からの読書について伺っています。

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字が読めない頃からたくさんの本に触れてきた ―読書が好きになった理由を教えてください。 まだ字を読めないような頃から、母が、家の隣の...

 

鈴木るりか著小学館1760円(税込)

花実母娘のルーツとなる祖母の壮絶な人生譚。

花実は中学三年生となった。進路を考える年頃。そして、ほんのり初恋の気配も。そんなある日、花実の母・真千子がひったくりの被害に遭う。その事件から、花実は「金」に対しての意識がより強くなり、よりシビアな中三となる。事件の犯人が判明するが、それは予想外のほろ苦い結果に。

 

プロフィール

鈴木るりか|作家

2003年、東京都生まれ。小学4年、5年、6年時に3年連続で、小学館主催の『12歳の文学賞』大賞を受賞。2017年10月、14歳の誕生日に『さよなら、田中さん』でデビュー。12万部を超えるベストセラーに。
その他の作品に『14歳、明日の時間割』、『太陽はひとりぼっち』、『私を月に連れてって』、『落花流水』がある。詳細はこちら
現在、早稲田大学社会科学部3年生在学中。漫画研究会に所属。

取材・文/黒澤真紀 撮影/五十嵐美弥

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