なかなか手に入らない「幻の豆」とも呼ばれる枝豆、それが「だだちゃ豆」です。希少品でありながらも、全国に根強いファンをもつという、その理由はどこにあるのでしょうか? おいしさを育んだ歴史には、あるひとりの女性が関わっています。小さな発見が他にない味を生み出し、受け継がれてきました。おいしい食べ方と共にみていきましょう。
だだちゃ豆とは
山形県庄内地方の特産品である、だだちゃ豆。発祥のエピソードには、土地に住む人々の愛情深い取り組みが感じられます。
だだちゃ豆と枝豆との違い
普通の枝豆に比べやや褐色がかった外皮、また、うぶ毛の茶色。これは外見上のだだちゃ豆の特徴です。サヤは比較的小ぶりで小さく、くびれが深い特徴もあります。一般的な枝豆は、ひとつのサヤに3粒が多いものですが、だだちゃ豆の場合は2粒が多いのだそう。
さらに、茹でると濃厚な甘みと旨味が、口に広がります。このかぐわしい風味が、だだちゃ豆にファンが多い理由です。
だだちゃ豆のルーツ
だだちゃ豆を栽培する際、土地が合わないと風味が落ちてしまうことから、ごく限定的な生産地でしか収穫することができません。そんなだだちゃ豆には、発祥起源となるひとりの女性育苗家が関わっています。
明治の後期、鶴岡市郊外にある白山地区。当時の士族であった森屋藤十郎の娘・初は豆の種を植えました。隣村からもらったというその種の中に、とても味の良い豆があることに気がついた初。その種を大切に保存し、丹念に増やし続けたのでした。
初が増やした豆は味のよさから評判となり、地域から門外不出の豆として、大切に受け継がれました。さらに選別を繰り返すことによって、100年後の現在にまで繋がっています。ここにしかない特別な味となっただだちゃ豆は、この地方の特産品となりました。
名前の由来
庄内地方の方言で「だだちゃ」とは、「お父さん」を意味します。「だだ茶」ではありませんので、ご注意を。この方言には、名前の由来となる諸説が伝えられています。
江戸時代、庄内藩のお殿様が枝豆好きだったことから「今日の枝豆は、どごのだだちゃの作った豆だや?」と尋ねたことが、名前の由来という説。
または、当時は家長であった「だだちゃ」に、最初に提供される習わしがあったことから、呼ぶようになった、という説。
どの説にも、愛情深く大切に、おいしい豆を育てた人々の姿が現れています。
だだちゃ豆の茹で方
それでは、希少な豆をおいしく口にするポイントをご覧ください。
おすすめはフライパンを使った「蒸し煮」
枝豆をお湯で湯がくと、栄養分が流れ出てしまうことから、「茹でる」よりも「蒸す」ほうが、おいしく調理できます。
・材料
だだちゃ豆 250g程度
塩 大さじ1
水 100ml
(水分量は鍋の大きさに合わせて決めてください)
・茹で方
【1】だだちゃ豆をよく洗ってください。
【2】ボールに移して、塩をかけてよく揉みます。産毛がとれて発色も良くなります。
【3】フライパンに、塩もみしただだちゃ豆を入れ、水を加えます。
【4】フライパンに蓋をして、中火にかけてください。4~6分を目安に、加熱します。
【5】ザルにひき上げて、味見をしてください。必要であれば塩を振ります。
人気の茹で方
上の「蒸し煮」ではなく、ごく一般的な茹で方もチェックしておきましょう。
・材料
だだちゃ豆 250g
塩 大さじ1
水 150~200ml
(水分量は鍋の大きさに合わせて決めてください)
・茹で方
【1】鍋に水を入れて、沸騰させます。
【2】湧くまでの間に、だだちゃ豆をよく洗ってください。
【3】ボールに移して塩をかけ、よく揉みます。
【4】沸騰したお湯にだだちゃ豆を投入してください。
【5】ザルに上げて、適量の塩を振ります。
茹で時間の目安
蒸す場合は、5分程度で豆のいい香りが漂います。
茹でる場合は、沸騰したお湯に入れて3~4分です。
ひと房取り出し、流水で冷やして味見してみると、固さを確認できます。
保存方法
だだちゃ豆に限らず、枝豆をおいしく食べるポイントは、茹でたてを口にすることです。ですから、茹でる際はその日食べられる量を茹でるのが基本。
それでも残りが出てしまった場合は、冷蔵庫で保存するか、密閉して冷凍してください。
だだちゃ豆のレシピ
茹でただだちゃ豆が残っていたら、サヤから出して別の料理へアレンジ。むく作業は、お子さんのお手伝いにはピッタリですからお願いしましょう。
だだちゃ豆ご飯
茹で上げただだちゃ豆を、ご飯に混ぜる作り方です。下茹でしてから加えるので、薄皮までむくと美しい緑色が冴えます。冷えてもおいしいので、おにぎりにするのもいいですね。
・材料
茹でただだちゃ豆 250g
米 2合
だし昆布 1枚
塩 小さじ1
お酒 大さじ1
・作り方
【1】茹で上がっただだちゃ豆を、サヤから取り出します。80~90gくらい、またはお茶碗に軽く一杯あれば足ります。
薄皮をむくのは、非常に手間がかかります。また、薄皮に含まれる栄養も摂れることからも、取り除かずに残してもかまいません。
【2】洗ったお米を30分程度浸水させます。
【3】だし昆布、塩を加え、いつもどおりの水加減で炊きます。
【4】炊き上がった直後に、お酒を振り入れます。
【5】15分程度蒸らしてからだし昆布を取り出し、サヤから取り出しただだちゃ豆を加えます。
全体をよく混ぜ合わせてください。
だだちゃ豆とチーズのチヂミ
味が濃いだだちゃ豆をチーズと和えて、フライパンで焼くと香ばしさが引き立ちます。
・材料
中身を取り出した、だだちゃ豆 70~80g
ピザ用チーズ 50g
水 50cc
片栗粉 大さじ2
ねぎ 適量
ごま油 適量
・作り方
【1】材料をボールに入れて混ぜ合わせてください。
【2】フライパンを温めてごま油をひきます。
【3】混ぜ合わせた具材をフライパンに入れて、焼き色がつくまで両面焼いて完成です。
だだちゃ豆の通販
希少なだだちゃ豆を新鮮なまま口にしたい場合は、早めの予約がおすすめ。その他、冷凍なら通年にわたって手に入ります。
幻の枝豆「白山だだちゃ豆・本豆」
通常のお届けは8月中旬~下旬ですが、天候や発育状況により、発送期間は前後する場合があります。楽天などのネット通販ではさまざまな生産者からのだだちゃ豆が取り扱われていますが、品質のよいだだちゃ豆を入手するために、先行予約できる業者さんから購入するのもおすすめです。
【JA鶴岡 公式】殿様のだだちゃ豆 枝豆 だだちゃ豆 200g×5袋 冷凍
だだちゃ豆は育成地域が限られますが、さらに収穫適期もほんの短い期間だけ。こちらは、そんな貴重な食材を新鮮なうちに茹で上げ、急速冷凍した商品です。流水解凍、または軽く湯通ししてお召し上がりください。
見かけた際はチャンス
ごく限られた短い期間に、わずかな量しか流通しないため、希少性が高いだだちゃ豆ですが、そのおいしさから名前が全国に知れ渡るようになりました。もしも見かけた際は、ぜひ購入してその味を確かめてください。一般的な枝豆よりも味が濃厚で、よい香りもあります。夏の食卓が、より豊かに感じられます。
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構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)