「法人」って何?に答えられますか。会社・企業との違いやNPO法人の活動もチェック【親子で学ぶ現代社会】

学校法人やNPO法人など、社会にはさまざまな「法人」が存在します。法人とは、法律で人格を与えられた組織のことです。法人化すると、組織にどのようなメリットがあるのでしょうか? 法人の種類や特徴、企業・会社との違いを解説します。

法人とはどんなもの?

世の中には、「法人」と名の付く組織が数多くあります。企業や会社と同じものと捉える人もいますが、厳密にはイコールではありません。定義や存在する理由など、法人の基本を分かりやすく解説します。

法律上の人格を与えられた組織

「法人」とは法律によって個人と同等に扱われる組織

個人は、法律用語で「自然人(しぜんじん)」と呼ばれます。自然人は生まれながらに人格を持っており、契約に基づいて権利を取得したり、義務を負ったりできるのが特徴です。

組織・団体に対しては、法律で人格(法人格)を与えられます。法人格が付与された組織・団体は「法人」と呼ばれ、自然人と同じように権利・義務の主体になれます。

組織・団体がひとりの人間になると考えましょう。例えば、ある組織が「学校法人」になると、学校法人の名義で教材を購入したり、土地を取得したりできます。

人格を持つ存在になってはじめて、法的な活動や権利が認められる

法人が存在する理由

法人になると、売買・雇用・契約・賠償といったあらゆる法律行為をより円滑に行えます。法人が存在しなければ、全てを個人名義で行わなければならず、ビジネス上のやりとりが煩雑になるでしょう。

法人格を取得することで、「法人の資産」と「個人の資産」が分離されるため、事業がうまくいかなくなったときでも、個人の資産を守れます。

また、単なる団体として活動するよりも、法人として活動したほうが信用力が増すだけでなく、メンバーが変わっても活動を続けられます。

企業や会社との違い

法人と混同されやすい言葉は、企業や会社です。企業は、法人・会社・個人事業主などを全て含めたものを指します。

個人事業主とは、個人で事業を行っている人のことです。商店街にある八百屋さんや肉屋さんには、個人事業主が多いかもしれません。

会社は、「会社法」という法律に基づいて設立された法人です。株式会社・合名会社(ごうめいがいしゃ)・合資会社・合同会社があり、営利を目的とした経済活動を行っています。

なお、法人は「私法人(しほうじん)」と「公法人(こうほうじん)」に区別され、会社は私法人に当たります。

企業=法人ではない。また、法人にもいろいろな種類がある

私法人の主な種類と特徴

私法人とは、公共の目的以外で設立される私的な法人です。設立や管理については、国による統制が及びません。

事業で得た利益を構成員に分配するかどうかによって、「営利法人」と「非営利法人」に区別されます。

営利法人

「営利」とは、金銭上の利益を得る目的で何かを行うことです。営利法人は、営利のために事業を行い、その利益を構成員に分配することを目的としています。

営利法人の典型は、「会社」です。会社形態は以下の4パターンに分かれます。

●株式会社
●合名会社
●合資会社
●合同会社

かつては「有限会社」の設立も可能でしたが、現在は新規設立が認められていません。株式会社以外は「持分会社(もちぶんかいしゃ)」と呼ばれ、出資者と経営者が同一です。

非営利法人

非営利法人とは、構成員への利益分配を目的としない法人です。

非営利だからといって、利益を得られないわけではありません。事業で得た利益は、主に社会貢献活動に使われます。以下は、代表的な非営利法人の種類です。

●学校法人
●社会福祉法人
●宗教法人
●NPO法人
●社団法人(一般・公益)
●財団法人(一般・公益)

私立学校の設置・運営を行う法人は「学校法人」と呼ばれます。公立学校は地方公共団体が設置する学校であり、私法人ではありません。

「社団法人」は、一定の目的を持って結成された団体です。目的に制約はなく、事業内容は介護・スポーツ・ビジネス・芸術など多岐にわたります。

「財団法人」は、ある財産の集まりに法人格を与えたものです。社団法人と違い、設立時は300万円以上の拠出金が必要です。

公法人の主な種類と特徴

公法人は、行政上の目的を行うために設立された法人で、公権力の行使が認められているのが特徴です。主な公法人として、「特殊法人」「独立行政法人」「地方公共団体」を取り上げます。

特殊法人

特殊法人とは、国の政策や公共の利益を目的として、「特別の法律」により設立された法人です。各省の大臣がその監督を担いますが、経営面ではできる限りの自主性を認めています。

代表的な特殊法人は以下の通りです。

●日本電信電話株式会社(NTT)
●日本放送協会 (NHK)
●日本郵政株式会社
●株式会社日本政策金融公庫
●日本年金機構

特殊法人は統廃合や民営化によって減少傾向にあり、2024年4月1日時点で34法人のみです。

出典:所管府省別特殊法人一覧(令和6年4月1日現在)

独立行政法人

独立行政法人は、国の行政活動から一定の事務・事業を分離させて法人格を与えた組織です。国が主体的・直接的に実施する必要のないもののうち、民間に委ねると必ずしも実施されない恐れがあるものを担います。

以下は独立行政法人の例です。

●国立公文書館
●国民生活センター
●国際協力機構
●造幣局(ぞうへいきょく)
●国立美術館

独立行政法人制度は、行政の企画立案部門と実施部門を切り離し、政策実施のパフォーマンスを上げるために設けられました。独立行政法人は、2024年4月1日時点で87法人あります。

出典:独立行政法人一覧(令和6年4月1日現在)

地方公共団体

地方公共団体とは、地方自治を運営する「都道府県」や「市町村」のことです。日本は地域ごとに産業や生活様式が異なるため、地方公共団体が地域の実情を反映した政治を行っています。

かつて国と地方公共団体は「上下・主従の関係」でしたが、2000年に施行された地方分権一括法により、「対等・協力関係」への転換が図られました。

地方公共団体には「議会」があり、選挙で選ばれた「議員」が住民の意思を行政に反映させる仕組みです。市町村が住民の生活に密着した基礎的な政治を担当するのに対し、都道府県はより広域な政治を担当します。

法人中で最多の「会社」は日本経済の基盤

法人の中で最も数が多いのは「会社」です。

2020年度の調査結果を見ると、経営組織のうち56.1%が法人で、法人の内訳は会社が48.4%、会社以外の法人が7.7%となっています。残りの43.9%は個人経営です。売上高も会社が最多で、日本経済の基盤になっているといえます。

出典:令和3年経済センサス‐活動調査産業横断的集計|経済産業省

日本で最も多い会社は株式会社

最も数が多い会社形態は「株式会社」です。株式会社は「株式」と呼ばれる有価証券を発行し、多くの投資家から事業資金を集める仕組みです。一人一人の出資額が少なくても、人数が増えればまとまった金額になります。

株式を取得した投資家は「株主」と呼ばれ、「会社の経営に参加する権利」や「配当金をもらう権利」などを有します。

「会社は誰のもの」と聞かれたとき、多くの人は「社長のもの」と答えるのではないでしょうか?  実は株式会社では、会社の所有者と経営者が異なるのが一般的です。

会社の所有者は株主であり、社長(取締役)はその経営を任されているにすぎません。株式会社では、株式を多く持っている株主ほど、会社の経営に大きな影響を与えられます。

出典:登記統計 商業・法人 商業・法人登記(年計表) 23-00-32 会社及び登記の種類別 会社の登記の件数 年次 2023年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

2006年の会社法改正で合同会社が誕生

株式会社に次いで設立件数が多いのは「合同会社」です。アメリカの「Limited Liability Company(LLC)」と呼ばれる会社形態がモデルで、日本では2006年の会社法改正により導入されました。

合同会社は株式会社と違い、会社の所有者と経営者が一致しています。会社に出資した人は「社員」と呼ばれ、出資額に関係なく平等に決定権を持つのが一般的です。

ほかの会社形態に比べて、設立の手続きが比較的容易で、かつ経営面でも自由度が高いことから、家族や友人同士による経営に向いています。

法人に関する気になる疑問

法人にはさまざまな種類があり、ビジネスや社会的事業によって私たちの暮らしを支えています。

「法人にも納税の義務はあるの?」「NPO法人は何をしているの?」など、法人にまつわる疑問をQ&A形式で解説します。

法人も税金を納めるの?

法人が事業活動で得た所得に課せられる国税は、「法人税」と呼ばれます。国内に本店や事務所がある「内国法人」は、法人の性格や目的によって納税義務の有無が決まります。

会社は「普通法人」に当たり、全ての所得に法人税が課せられます。公共的性格を持つ公法人は、法人税法上は「公共法人」と呼ばれ納税義務がありません。

社会の利益のために活動する「公益法人」や「人格のない社団」も、一部の収益事業で得られた所得以外には、法人税が課せられない決まりです。例えば、宗教法人が行う宗教活動には課税されませんが、境内を駐車場として賃貸すれば、その収益に税金がかかります。

NPO法人とは何をする組織?

NPO法人とは、NPO法に基づいて法人格が付与された団体です。NPOは「Non Profit Organization」の略で、非営利で社会的活動を行うことを意味します。

社団法人と違い、特定非営利活動促進法で定められている「特定非営利活動」しか行えません。活動内容の一例を紹介します。

●保健・医療・福祉の増進を図る活動
●まちづくりの推進を図る活動
●観光の振興を図る活動
●災害救援活動
●国際協力の活動

活動で得た利益はメンバーに分配せず、非営利事業のために活用しなければなりません。

出典:特定非営利活動促進法|e-Gov 法令検索

国立大学の法人化とは?

国立大学は文部科学省が設置する国の行政機関でしたが、2004年4月から「国立大学法人」に変更されています。

かつては、予算から組織に至るまでを文部科学省が決めており、大学が新しい取り組みをしたくてもすぐには実現できない状態でした。

法人化後は大学側の裁量権が拡大し、優れた教育や特色ある研究に力を注げるようになったのです。学生や社会のニーズが反映されやすくなった点は、大きなメリットといえるでしょう。

一方で、大学側が独自に授業料を決定できるため、「授業料の値上げ」が起きる可能性があります。文部科学省では授業料の標準額とその上限を定めることで、大幅な値上げを抑えています。

法人の役割を知れば社会の仕組みが分かる

法人とは、法律で人格を与えられた組織です。法人になることで、組織そのものに対する信頼性が高まり、ビジネスや社会活動がより円滑に進みます。

地方公共団体からNPO法人まで、法人の性格・目的は多種多様です。法人の中で最も数が多いのは株式会社で、営利事業によって日本の経済を支えています。

意外かもしれませんが、私たちの身近にある寺院や教会、私立学校も法人の一種です。それぞれの法人の特徴や役割を知ることで、社会の仕組みが見えてくるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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