発達障害の子にとって2学期は荒れやすい時期。特に9月末~10月は要注意。そのワケと対処法を療育アドバイザーに聞いた!

発達障害の女の子の支援キャリア20年の藤原美保さんは、「放課後等デイサービスLuce」を10年近く運営し、発達障害の女の子とその保護者をサポートしてきました。2022年5月からは障害のある子が保護者と共に利用できる脱毛サロンを主宰されています。療育現場の経験から、発達障害の子たちは2学期に荒れる傾向にあることを 実感されています。

2学期は荒れやすい発達障害の子たち。その原因とは?

2学期が、発達障害のある子どもたちにとって荒れやすい時期だということは、意外と知られていないかもしれません。保護者からの相談で「家で荒れやすい」と相談が増える時期の一つが9月末から10月にかけてです。大人の視点では、2学期は子どもたちが自分のその学年に慣れて、安定する時期だと考えがちですが、実際はこの時期に落ち着きをなくす子が増える傾向にあります。

 例えば、放課後デイサービスに通っていた子の一人は、毎年この時期になると、学校の後、通所のために車に乗るときから大荒れしていました。泣き叫びながら来所することも多く、感情のコントロールができずに大泣きしたり、暴れたりすることもありました。そういった日にはレッスン中に突然スタジオの床で寝落ちしてしまうことがよくありました。このような状況は彼女が5年生になるまで毎年繰り返されていました。

2学期は学校行事やイベントが盛りだくさんになる時期

 他の子どもたちにも共通するのは、夕方になると突然機嫌が悪くなったり、疲れが出てしまったりして、家庭でも手がかかることが増える点です。

これは、発達障害のある子にとって2学期に多く組み込まれる学校行事が原因であることが多いようです。遠足、社会見学、運動会、学芸会などが2学期に集中することで、彼らの感情やエネルギーの切り替えが追いつかず、疲労感を溜めやすくなってしまいます。 

なぜ荒れてしまうのか?知ってほしい明らかな理由

イベントは楽しい一方で、発達障害の子にとっては大きな負担となることがあります。特に以下の点が彼らにとって大きな壁になります。

本人の問題~切り替えと指示理解の難しさ

発達障害の子どもは一度集中してしまうと、次の活動に切り替えるのが苦手です。1学期のスケジュールやルールにようやく慣れたところで、2学期になるとイベントが続き、これまでのリズムが崩れることで混乱します。

また、イベント時は普段とは違う活動が多く、学校の通常のスケジュールも変更されることが頻繁です。その結果、発達障害の子どもたちは、集団行動が求められる場面で指示がわからず、戸惑いを感じることが増えます。

学校の問題~支援体制の不足

典型的な発達の子どもたちにとってはわかりやすい集団指示も、発達障害の子には理解が難しいことがあります。しかし、イベント時の支援員の数が限られているため、個別対応が十分にできないケースが多く見受けられます。特に遠足や外での課外活動では、学校の先生一人が全体を見ながら対応するのは困難です。

新しい状況や環境にとても敏感な発達障害の子たち

発達障害の子どもは、新しい状況や普段とは違う環境に非常に敏感です。そのため、特に2学期に集中する学校行事が続くと、興奮しやすくなり、気持ちのコントロールが難しくなります。この結果、エネルギーを無駄に消耗し、夕方になるとぐったりしてしまうことが多くなります。また、家でも機嫌が悪くなり、保護者の方々にとっても対応が大変になることが少なくありません。

必要なのは、まず休息を取ること

 2学期のイベントが発達障害の子どもにとって負担になることを理解した上で、少しでもサポートできる方法を考えていくことが大切です。例えば、家庭での休息時間を増やしたり、学校との連携を密にし、事前に行事の内容や流れを子どもに説明してあげることが有効です。また、イベント後に子どもが感情をリセットできる時間や環境を作ってあげることも、ストレス軽減に繋がります。

 わたしが運営していた、放課後デイサービス「Luce」では、疲れているお子さんの場合は、まず、ご自宅で休ませることを提案していました。

休息の取らせ方がわからない、不安があるというご家庭には、「Luce」で落ち着きを取り戻してから帰宅してもらうケースもありました。

「Luce」では、ベッドと毛布と柔らかめのぬいぐるみが置いてあるだけで、「見る」「聞く」など外の情報の殆どを取り除いた個室で静かに何もしない時間を過ごしてもらいました。休憩する時間は本人に決めさせ、気持ちが切り替わったら自分でその部屋から出てきます。

感情の起伏が激しく、暴力的な行動のあったお子さんは、小学校1年生からこの練習を続け、小学校5年になると、自分の気持ちが荒れているときには自ら「休憩したい」と言葉で伝えられるようになり、気持ちの切り替えも自らできるように成長してくれました。イライラした時の気持ちの言語化や切り替え方などの対応を身につける事で暴力的な行動も減っていきました。

発達障害の子どもにとってイベント事は疲れやすく負担も大きいという事を理解し、自分の気持ちの伝え方を練習すると共に気持ちを切り替えるためのスペースと時間を設け休ませる事が必要です。

イベントが重なる時期は、周囲の大人が疲れやすく荒れやすい子どもの特性を理解し、適宜休ませる、逃げ込める何もないスペースを確保するなど、子どもに合わせて事前に準備していただければと思います。

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記事監修

藤原美保さん|(株)スプレンドーレ代表

健康運動指導士、介護福祉士、保育士、公認心理師。株式会社スプレンドーレ代表。

発達障害の女の子の性教育や身だしなみ教育に力を入れてきた、放課後等デイサービスLuce(ルーチェ)を2022年3月まで運営。2022年5月から、障害のあるお子さんと保護者が通う事ができ、施術中に療育相談を受けられる美容・脱毛サロンLuceを運営。発達障害のお子さんの療育アドバイザーとして相談や療育コンサル、発達障害のお子さんへのオンラインでの性教育を行う。著書に『発達障害の女の子のお母さんが、早めにしっておきたい47のルール』(エッセンシャル出版)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること』(PHP研究所)がある。

YouTubeで「子どもの対応おたすけチャンネルMamma mia」を配信中

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