型破りな起業サバイバルストーリーに大興奮
毎週木曜25時28分からTBSほかにて放送、配信が開始された秋の新作TVアニメ「トリリオンゲーム」。先週10月3日の初回放送日では、1話と2話が一挙放送され、大きな反響を呼びました。すでに親子で楽しまれた方も多いのではないでしょうか。
稲垣理一郎の原作、池上遼一の作画による同名人気コミックは、目黒蓮(Snow Man)主演のTBSテレビ金曜ドラマとしても実写化されていて、来年には劇場版も控えている注目作です。待望のTVアニメ版を制作したのは、人気アニメ「葬送のフリーレン」や、同じく10月からスタートした「チ。 ―地球の運動について―」などを手掛けるスタジオ・マッドハウス。期待したとおり、原作ファンを裏切らないクオリティーの快作に仕上がっていました。
ワルで頭の回転が速い人たらしのハルと、人と話すことが苦手なパソコンオタクのガク。学生時代にひょんなことから交流を持ち、やがて社会人となった2人は、ゼロから起業することに。その後、彼らは1兆ドルを稼いで長者番付に名を連ねる経営者へと成長していくようです。そんな破天荒な起業サバイバルストーリーは、すでに連続2クールでの放送が決定しております。
時間軸を巧みに使ったストーリーテリング
(以下、ネタバレを含みます)
第1話と2話では、ハルとガクがなぜ、タッグを組むことになったのかという過去のエピソードが描かれます。自他とも認める世界一のワガママ男・ハルと、大人しくて気弱なガク。通常なら決して交わりそうもない2人が出会ったのは、8年前の中学時代。ガクが10年間お年玉を貯めて買った念願のノートパソコンを、半グレに奪われようとした時、助けに入ったのがハルでした。
腕っぷしの強いハルは、見事に半グレを撃退します。ところが、その様子を防犯カメラで撮られてしまったことに気づいたハル。そんな中、ガクは良心に苛まれつつも、ハルを救うべく、持ち前の技術を使って、監視カメラのサーバーをクラッキングし、画像を消去します。そこでハルは、ガクのエンジニアとしてのポテンシャルの高さを見抜いたようです。
それから時は流れ、2人は日本最大のIT企業である「ドラゴンバンク」の採用面接を受けることに。就職活動においては、天性のコミュニケーション能力とハッタリを駆使して全勝中のハルと、コミュ障が災いして全敗中のガク。結果は予想どおり、ハルのみが合格となりますが、「ドラゴンバンク」の内定式当日に、ハルは大胆不敵な行動に出ます!
なんとハルはガクの豊富な知識と素晴らしいスキルを見抜けなかった同社に見切りをつけたようで、あっさりと内定を辞退。こともあろうに、最終面接で面接官を務めた社長令嬢・桐姫もろとも「ドラゴンバンク」を手に入れると豪語します!こんな大口をたたけるのは、ハッタリ上等のハルならでは。でも、視聴者はすでに、将来2人が大成功することがわかっているので、そこは安心して見ていけます。
そう。私たちは冒頭の映像にて、ハルとガクが世界の長者番付けでトップ10入りを果たすという未来を見せられています。だからこそ、一体彼らがどういう手を使って、その地位に登りつめていったのかが非常に気になってしまう。そこが原作も含めてストーリーテリングの妙だなと思いました。
また、アニメ版のオープニングテーマが、9人組グローバルグループ、&TEAMの「Beat the odds」で、初っ端からかなりテンションアップ。まさに今後、グローバルに活躍していくであろうハルとガクにぴったりの楽曲だなと思いました。
人を見る目の確かさがキーとなるストーリー
常にハッタリをかまして大風呂敷を広げ、人々を圧倒していくハル。ただ、凡人の目からそう見えるだけで、ただ無鉄砲なだけではないんです。なぜなら、ハルは非常にクレバーな人で、きちんと未来を見据えて行動に移していることが後々にわかっていくから。なんといっても彼は「1兆ドルを稼ぐ」と言ったことを有言実行した人です。
また、誰に会っても、その人となりや本質を瞬時に見抜き、自分が誰と組んでいくべきなのかを判断していることが、第1話と2話からうかがえます。人を見る目があるから、どこの会社も決して相手にしなかったガクという人間の優れたスキルや誠実さもきちんと見極め、彼をビジネスパートナーに選んだわけです。
そして、ガクは「トリリオンゲーム」における“良心”の柱です。そこは決してぶれないので、HugKumファミリーにも安心しておすすめできるポイントです(笑)。とはいえ、実はハル自身も、たとえ人生において大博打をしても、それらは人の道を踏み外す行為ではなく、ちゃんと真っ当な理由があって動いたにすぎません。
面白いのが、凡人であれば手に負えない桐姫とハルとの、どちらも引けを取らない感じの名勝負です。ハルは、若くてきれいな社長令嬢である桐姫のビジネスウーマンとしての能力をちゃんと買っている。だから彼女を手に入れたいと言いのけました。彼女はちゃんと、ハルのお眼鏡に叶っていたわけです。
桐姫は、ただ強欲なだけではなく、才色兼備な女性で、ハルにとっては一番の好敵手となりそう。今後の2人の真っ向勝負にも大いに期待したいですし、彼らがどうやってトリリオン長者となっていくのか、ぜひ最後まで見届けていただきたいです。
監督:佐藤雄三 シリーズ構成:金月龍之介
原作:稲垣理一郎 作画:池上遼一「トリリオンゲーム」(小学館 ビッグコミックスペリオール連載)
声の出演:大塚剛央、石毛翔弥、M・A・O、東地宏樹、田中有…ほか
公式HP:trilliongame-anime.com
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文/山崎伸子