第2次トランプ政権で世界はどう変わる?〝トリプルレッド〟がもたらす中国との貿易摩擦と「台湾問題」【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は第2次トランプ政権での対中政策について予測します。

トランプ氏にとって最高の政治環境に

米大統領選挙の結果、共和党候補のトランプ氏が勝利しました。トランプ氏は選挙戦の行方を大きく左右すると言われるペンシルベニアやウィスコンシン、ノースカロライナやジョージアなど激戦7州の全てで勝利し、過半数の270人を大きく上回る312人の選挙人を獲得。226人のハリス氏を大差で破りました。

そして、今回の大統領選挙でトランプ氏は7500万票ほどを獲得し、自身が出馬した2016年と2020年の大統領選挙を上回る最多を記録しました。米国の議会上院でも共和党が多数派を奪還し、下院でも共和党が過半数を維持したことから、トリプルレッドと呼ばれる状況になっており、トランプ氏にとっては最高の政治環境が訪れたと言えます。

「アメリカを再び偉大にしよう」というトランプ氏のスローガン

トランプ氏は2期目ということで再選できるかどうかを気にする必要がなく、今回の政権人事においては自らに忠誠的な人物で固めることが予想され、前回の時よりもトランプ色が強まることが考えられます。

では、トランプ氏は、米国最大の課題である対中国ではどういった姿勢で臨んでいくのでしょうか。

重要ポストに対中強硬派の人物が就く? 貿易摩擦が懸念される

現時点の情報によりますと、重要ポストの国務長官にはマルコ・ルビオ上院議員の起用が報じられていますが、ルビオ氏は対中強硬派で、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の人権問題を非難し、台湾防衛を支援する姿勢を示しています。

安全保障担当の大統領補佐官にも対中強硬派のマイク・ウォルツ下院議員が起用されると言われており、第2次トランプ政権は中国に対して厳しい姿勢で臨んでいくことが考えられます。

そして、第2次トランプ政権で最も懸念されるのが、米国と中国との間の貿易摩擦(お互いがお互いに高い関税を掛ける、意図的に輸出入制限を設けるなど)です。

米国と中国との間の貿易摩擦が懸念される

米中貿易戦争とも言われますが、トランプ氏は政権1期目の時、米国の対中貿易赤字に不満を募らせ、あらゆる中国製品に対して高い関税を掛け、最大25%の関税となりました。中国もそれに対して報復的な関税を仕掛け、米国と中国との間では貿易摩擦が拡大し、世界経済を混乱させました。

トランプ氏は選挙戦の最中、中国製品に対する関税を一律60%に引き上げると主張していましたが、これは一種の公約のようなものであり、政権が発足すれば実行される可能性が高いでしょう。そうなれば、中国も再び対抗措置を取ることになり、来年以降、トランプ政権1期目以上に貿易摩擦が激化することが懸念されます。

台湾問題に関心のないトランプ氏

また、台湾問題も見逃せません。台湾では5月に頼清徳氏が新総統に就任しましたが、頼氏が「台湾は中国に隷属しない」などと発言していることに中国は強く反発し、台湾を取り囲むような大規模な軍事演習を2回実施。中台関係は冷え込みの一途を辿っています。

トランプ氏はバイデン大統領ほど台湾問題に関心がないと思われ、台湾はもっと貿易費を支払うべき、台湾が米国の半導体産業を奪ったなどと発言しており、第2次トランプ政権が台湾軽視の姿勢に転じる可能性も排除できません。そうなれば、中国はその隙を突いて台湾に対する軍事的圧力をいっそう強める可能性があります。

この記事のポイント

①トランプ氏率いる共和党が多数を占め、トランプ氏にとってやりやすい政治環境になる見込み

②現在、重要ポストには、対中強硬派の人物が就くと予測されており、中国との貿易摩擦が懸念される

③トランプ氏が台湾軽視の姿勢に転じると、その隙に中国が台湾への軍事圧力を高める可能性がある

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記事執筆/国際政治先生

国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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