そもそも為替って何?
為替(かわせ)はもともと、江戸時代に発達した代金の受け渡し方法です。商人は拠点から遠く離れた場所でも商売をしていました。このとき商品の代金を全て現金で受け取ると、持ち運びにくく盗難のリスクもあります。
このような不便な状態を解消するために使ったのが、書類状の為替手形です。商品を購入した人は、代金分の為替手形を商人に渡します。商人はその為替手形を両替商に持っていけば、換金できる仕組みです。
現金を動かさない代金の受け渡し方法である為替取引は今も行われています。身近なものだと銀行振込や口座振替も為替取引の一種です。
為替は異なる通貨の交換も意味する
身近な為替取引の例である銀行振込や口座振替など、国内で完結する為替取引を国内為替といいます。一方、国外との取引で現金を使わずに代金の受け渡しを行うのが外国為替です。
現在は「為替」というと外国為替を指すのが一般的で、テレビのニュースで「今日の為替相場は…」と言えば、通常は円とドルなどを交換するときのレートを意味します。
外国為替は通貨を交換するのが特徴

外国為替の特徴は通貨を交換する点です。国内取引では同じ通貨を使うため通貨の交換は発生しませんが、外国とのやり取りではお互いに使っている通貨が違うこともあります。
このような場合、まず決済する通貨を決めなければなりません。例えば日本企業がアメリカの企業から商品を購入するとき、ドルで支払うのであれば、円からドルへの交換が必要です。
通貨がいくらで交換できるかは為替レートで決まる
通貨を交換するとき、いくらで交換できるかは為替レートで決まります。
例えば為替レートが1ドル=150円であれば、150円を用意すれば1ドルと交換できます。1ドル=120円であれば、1ドルを獲得するには120円が必要です。
また円とドルだけでなく、円とユーロ・円とポンド・ドルとユーロ・ユーロとポンドなど、それぞれの通貨同士に為替レートがあります。
為替レートは変化する
為替レートは一定ではなく、常に変化しています。この変動は、各国の経済状況や政治情勢、貿易収支などさまざまな要因による、需要と供給のバランスで決まる仕組みです。
例えば円とドルの組み合わせであれば、円がほしいという人が増えれば円の価値が上がってドルの価値は下がります。ドルがほしいという人が増えればドルの価値が上がって円の価値は下がります。
実際に1ドル=100円の時期もあれば、1ドル=150円の時期も、1ドル=300円の時期もありました。
かつて為替レートは固定されていた
現在の為替レートは常に変動していますが、1973年までは変動しませんでした。これを固定相場制といいます。戦後は1ドル=360円に設定されていましたが、1971年のニクソン・ショックを経て変動が始まり、1973年に変動相場制へと完全に移行しました。
固定レートの維持が難しくなったため、今のように需要と供給で為替レートが変わる変動相場制が導入されました。
為替レートの変化で起こること

為替レートが変化すると、通貨の価値は他のある通貨に対して、安くなったり高くなったりします。円安や円高が起こるのは、為替レートが日々変化しているためです。
ここでは円安・円高とは何か、それぞれの場合にどのようなことが起こりやすいのかを解説します。
円安は輸出で儲かりやすい
円安は円の価値が他の通貨に対して下がることを意味しています。例えば1ドル=100円だったのが、1ドル=200円になると円安です。
1ドルを缶ジュースに置き換えて考えてみましょう。以前は100円で買えた缶ジュース1本が、200円に値上がりしました。このとき缶ジュースが高くなったと同時に、円の価値が缶ジュースに対して安くなったとも表現できます。金額が大きくなっているのに円安というのはこのためです。
円安の状況は、商品の輸出に有利に働きます。1ドル=100円のときに1万円の商品を輸出すると100ドルですが、1ドル=200円のときなら50ドルのため、より安く販売可能になるためです。またドルで受け取った売り上げを円に交換するときには、より多くの円にできます。
一方、輸入では仕入れの費用が膨らみ、値上げにつながりやすい状況です。
円高は輸入で儲かりやすい
円高とは円の価値が他の通貨に対して上がることです。例えば1ドル=100円だったのが1ドル=80円になると円高といえます。円をドルに交換するとき、1ドルを得るために100円必要だったのが、80円で済むようになるためです。
円高の状況では、輸入にかかるコストを抑えやすくなります。例えば1ドル=100円のときに1万ドル分の商品を仕入れる場合、必要な金額は100万円です。これが1ドル=80円になれば、同じ1万ドル分の商品でも80万円で仕入れられます。より少ない資金で同じ商品を購入可能です。
反対に円高は輸出には不利に働きます。販売価格が高くなって売り上げが減る可能性があり、海外で得た売り上げをより少ない円に交換しなければならないためです。
円とドルの組み合わせでは円安の傾向

ここ数年の為替の様子についても簡単に解説します。2022年2月ごろまでは1ドル=115円前後でしたが、2022年3月以降は円安が進んで1ドル=150円前後です。
円安が進行した理由と、円安が私たちの暮らしに与える影響について見ていきましょう。
円安の理由
円安は複数の理由で起こりました。主な理由は、日米の金利差・貿易収支の悪化・世界経済の不確実性です。
日米の金利はアメリカの方が高いため、より多くの利益を得るために円がドルに交換されます。また輸出より輸入が多い貿易赤字も円安を加速する要因です。
世界経済の不確実性が高まると、安全資産と考えられているドルに交換する投資家が増えることでも円安につながります。
円安の影響
円安になると、ものの値段が上がります。日本はエネルギーや食料品など多くのものを輸入に頼っているためです。円安が進むと、同じ商品を輸入するにも以前より多くの資金が必要になります。
例えば輸入の割合が高い小麦の価格が上昇すれば、パン・パスタ・うどんなどの値上げにつながるでしょう。鉄鋼などの金属の価格が上がれば、住宅・自動車・家電などの値段が上がります。
また石油や天然ガスなどのエネルギー価格が上がれば、電気代やガス代が上がります。光熱費の上昇分を企業が商品価格に上乗せすれば、その他のさまざまな商品の価格も上がっていくでしょう。
[まとめ]為替の仕組みを学ぼう
為替のもともとの意味は、現金を使わない代金の受け渡し方法です。例えば銀行振込や口座振替も為替取引の一種といえます。
ただし現在では、為替というと、通貨の両替が発生する外国為替のことをさすのが一般的です。ニュースで見かける「1ドル=150円」といった金額は、通貨を両替するときの為替レートを意味しています。
この為替レートで円の価値が相対的に上がれば円高、下がれば円安です。2025年7月時点では、円はドルに対して円安の傾向となっています。
為替の仕組みを知ることで、日本や世界のニュースの理解度アップにもつながります。
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構成・文/HugKum編集部

