赤ちゃん言葉は使うべき? 「賢いね!」はNGワード? ママ研究者の著書から学ぶ〝子育てに役立つ赤ちゃん学〟

赤ちゃん心理学を研究する奧村優子氏の著書として話題の本、『赤ちゃんは世界をどう学んでいくのかーヒトに備わる驚くべき能力ー』(光文社)。今回は子育て中に役に立つヒントのいくつかを本書から抜粋してご紹介します。

赤ちゃん心理学の専門家がママ目線で書いた一冊

赤ちゃん心理学を研究する奧村優子氏の著書として話題の本、『赤ちゃんは世界をどう学んでいくのか』。

実際に2人の子どもの母でもある著者が、0〜2歳の赤ちゃん、そして幼児の“あるある”を統計データを使って研究者目線で解説。難しくなりがちな内容も、子育て中のパパママにもわかりやすく共感できる内容となっています。

※ここからは「赤ちゃんは世界をどう学んでいくのかーヒトに備わる驚くべき能力ー」(光文社)より引用・抜粋しています。

褒め言葉の影響

お子さんを褒めるとき、みなさんはどんな言葉を使っていますか? 同じ褒め言葉でも、自信になる言葉がある反面、やる気を失ってしまう言葉があるそうです。

褒め言葉は「賢いね」より「がんばったね!」

3歳と5歳の子どもに対して、「賢いね」と能力を褒める場合と、「がんばったね」と努力を褒める場合の影響が調べられました。

その結果、3歳児と5歳児ともに「賢いね」と褒められた子どもは、推理ゲームでカンニングをすることが増え、「がんばったね」と褒められた子どもは、カンニングをしない傾向がありました。

これは、「賢い」と能力を褒められた子どもは、自分の評判を維持するために賢く見せなければと感じ、プレッシャーからカンニングをしたと考えられます。一方、「がんばったね」と努力を褒められた子どもは、次回もがんばればよいと捉え、不正をする必要を感じなかったのです。


この研究結果は、子どもの褒め方に関する他の研究とも関連しています。

小学生のテスト結果に対して「頭が良いね」と能力を褒める場合と、「よくがんばったね」と努力を褒める場合を比較したところ、能力を褒められた子どもはやる気を失いやすいのに対し、努力を褒められた子どもはその後のテストにも粘り強く挑戦し続けました。

子どもを褒める際には、「頭が良いね」ではなく、「1時間も勉強したんだね」「最後までがんばったね」など、努力や行動の過程を褒めることが大切です。これが子どものさらなるやる気につながります。

赤ちゃん言葉を使う

みなさんは小さい子どもに話しかける際、赤ちゃん言葉を使いますか? 一般的な成人語で話すべきか迷う方も多いでしょう。わが子の初めての発語は赤ちゃん言葉だったという方も多いかもしれません。

著者もこんな体験をしたそうです。

私の長女は喋り始めた1歳半頃に「ウーカンカン」と言っていたものが、3歳になる頃には自然と「消防車」と言うようになりました。私自身も、赤ちゃん期には「きれいきれいしようね」と赤ちゃん言葉で話しかけていた場面が、いつの間にか「手を洗おうね」と成人語に切り替わっていました。
こうした変化に、子どもの成長を感じる一方で、親として少し寂しさを覚えることもあります。

赤ちゃん言葉は聞き取りやすく、真似しやすい

赤ちゃん言葉は短期間しか使用されず、最終的には成人語を覚える必要があるため、赤ちゃん言葉を学ぶのは二度手間だとする見方もあります。

赤ちゃん言葉を使うべきか悩んでいる場合は、赤ちゃん言葉の良い影響が科学的に示されていることから、積極的に取り入れて赤ちゃんとのコミュニケーションを楽しむことをおすすめします。

赤ちゃんに話しかける際は、赤ちゃん言葉でも成人語でも構いません。ただし、両方を併用すると混乱し、学習が進まない可能性があるため、避けたほうがよさそうです。

子どもが小さいうちは赤ちゃん言葉を使い、発話が上達したタイミングで成人語に切り替えて話しかける方法も有効かもしれません。

赤ちゃん言葉には、言葉の意味を推測しやすくなるという特性があると考えられています。また、聞き取りやすく、真似しやすいため、言葉を覚えようとする意欲を高める効果も期待できます。赤ちゃんが、言葉を使う楽しさを感じるきっかけにもなるでしょう。

読み聞かせの学習効果

デジタルに囲まれた社会で、大人が本を読む機会は激減しています。それでもわが子には「本好きに育ってほしい」と願っているパパママも多いのではないでしょうか。

著者もこんな思いを抱いているようです。

娘には本好きになってほしいとは思うものの、読み聞かせの実践はなかなか大変です。わざと文章を飛ばそうものなら、「ここ、読んでないよ」と鋭く指摘され、結局読み直すことになります。子どもは、何度読んでも飽きることなく毎回同じ場面で笑っており、その姿にはこちらも笑ってしまいます。

絵本は、子どもの成長に大きな影響を与える

絵本は、子どもの成長に大きな影響を与える存在です。

20世紀まで、0歳から3歳未満の赤ちゃんには、絵本の読み聞かせの必要はないと考えられていたそうです。しかし、最近の研究から、幼い時期からの絵本の読み聞かせが、子どもの言語発達や読みの発達に重要な役割を果たすことがわかってきました。

東京大学の研究によると、絵本の読み聞かせの量は子どものひらがなを読む力と関連し、読み聞かせの質は他者の気持ちを理解する力と関連していることが報告されています。

アメリカで行われた長期間にわたる調査では、1~2歳のときに養育者がどれくらい頻繁に絵本を読み聞かせていたかが、8~9歳の時点での語彙力や文章を理解する力、読書への意欲に影響を与えることが報告されています。


1歳のときからたくさん読み聞かせをしてもらった子どもは、本を楽しむだけでなく、言葉の力が育まれ、認知能力の発達にもつながりやすいのです。

研究では、世帯収入や親の学歴など家庭の経済的・社会的な要因を考慮してもなお、読み聞かせの効果は確かめられています。

幼い頃の絵本の読み聞かせは、小学校以降の学力向上に確実に寄与することが、科学的に明らかになっているのです。

※ここまでは『赤ちゃんは世界をどう学んでいくのかーヒトに備わる驚くべき能力ー』(光文社)より引用・抜粋しています。

普段の生活にすぐ使える子育てのヒントが満載

本書で取り上げている疑問は母である著者が、生活の中で感じた疑問を専門家としての裏付けとともに紹介しています。パパママなら知っておきたい子育てに役立つヒントがいっぱい。

実体験と研究によって明かされる、赤ちゃんの驚くべき能力。赤ちゃんに対する大人たちの思い込みが覆されることでしょう。

どこからでも読みやすい、忙しいパパママに優しい構成。興味のある章から読んでみてくださいね。

奥村 優子 光文社 1,012円(税込)

「赤ちゃんは生まれながらに利他的である。自分の取り分が減っても他人に大事なものを分け与えるし、他者を助けることが好き。正義の味方を好み、悪者には処罰感情を持つ。(中略)そして赤ちゃんはいつも、いつでも、学びたい。効率的に学ぶことができそうな相手を選んで瞬く間に自分のものにする学習能力は、最先端AIの能力をはるかに凌ぐ」(光文社サイトより)
 
気鋭の研究者で二児の母でもある著者が、最先端の心理学研究を踏まえながら、「赤ちゃん」が生まれながらに持つ驚きの能力を解説。「赤ちゃん」という存在を通して人間の本質を探究します。

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文・構成/kidamaiko

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