児童精神科とは
児童精神科は子どものメンタルヘルスを専門としています。大人が対象の精神科と異なるのは、子どもの発達段階を踏まえて治療や相談などを実施する点です。
対象となる精神疾患や発達障害の背後にある発達過程や環境要因にも注目しながら、必要なサポートを行います。

対象年齢は15歳または18歳まで
子どものメンタルヘルスを専門としている児童精神科の対象年齢は、病院やクリニックごとに異なります。
例えば、15歳までを対象とするケースや、18歳まで診療対象とするケースがあります。他にも、初診は15歳までで、15歳までに初診を受けていれば18歳まで継続的な受診が可能、という病院やクリニックもあります。
児童精神科の探し方

児童精神科を探す方法はさまざまです。ここでは代表的な3種類の方法について見ていきましょう。
小児科の紹介を受ける
一つ目に紹介するのは、かかりつけの小児科で紹介を受ける方法です。児童精神科は紹介制・予約制のことが多いため、まずは子どものかかりつけ医に相談して紹介状を作成してもらいましょう。
紹介状なしで児童精神科を受診すると、医療機関によっては選定療養費がかかることもあります。
自治体の窓口に相談する
自治体の窓口に相談する方法も有効です。地域住民の健康維持・増進を目的として設置されている保健センターや、障害を持つ子どもへの療育や診療などを行っている療育相談センターなどへ問い合わせるとよいでしょう。
近隣の児童精神科について有益な情報を得られる可能性があります。
インターネットで探す
インターネットで検索して児童精神科を探すことも可能です。例えば「住んでいる地域名+児童精神科」などのキーワードで検索すれば、自宅から通いやすい範囲にある児童精神科を探せます。
また厚生労働省の「医療情報ネット」でも児童精神科を検索可能です。地域を入力して、診療科目で小児科系に分類されている児童精神科へチェックを入れて、検索ボタンを押します。
児童精神科のある病院やクリニックを見つけたら、サイトで受診方法を確認しましょう。
児童精神科の対象となる精神疾患や発達障害

主に15歳もしくは18歳までの子どもを対象としている児童精神科では、精神疾患や発達障害のサポートを子どもの発達段階に合わせて行っています。
精神疾患とは、思考・感情・行動などで生活が困難になっている状態のことです。神経伝達物質の働きが乱れることや、ストレス、環境などが複合的に関わっているといわれています。
一方、発達障害は、生まれつきある脳機能の発達の偏りと、環境や周りの人との間に不一致が生じることで起こる困難な状態です。
ここでは、児童精神科で対象となることの多い精神疾患や発達障害について見ていきましょう。
うつ病
うつ病では、憂鬱で気分がすぐれない状態が続きます。時間が経っても、普段なら「楽しい」と感じられることをしても気分が晴れず、落ち込みが続く状態です。
子どもの場合には、体の症状として表れることも多くあります。食欲がない、眠れない、寝すぎてしまう、などもうつ病の症状の一種です。
不安障害
試験の前に不安な気持ちになる、大勢の前で発表するときに緊張するなど、不安や緊張は誰でも感じるものです。ただし不安障害では、危険ではないシーンでも過度な不安や緊張を感じてしまいます。
周りの人が自分をどのように見ているかに恐怖心を抱く社会不安障害、手洗いや確認をせずにはいられない強迫性障害、「死ぬかもしれない」などの恐怖に陥るパニック障害などがあります。
摂食障害
食べることにトラブルが起こる摂食障害は、若い女性に多い精神疾患の一種です。
拒食症では、過度に食べることを制限します。やせていても「太っている」と思い込み、体重コントロールの失敗を必要以上に恐れるのも特徴です。
また過食症では、体重や体型が評価に直結すると考える傾向があることから、大量に食べたことを帳消しにしようと、吐いたり、下剤を大量に使用したりします。
チック症
チック症には運動性チック症と音声チック症の2種類があります。運動性チック症とは、本人の意思と関係なく、まばたきや首振りなど、体の一部が急に動く症状のことです。比較的、幼稚園から小学校低学年の男子に多く表れます。
また学齢期に出現することのある音声チック症には、罵倒する言葉や卑猥な言葉を言ってしまう汚言症、他の人の言った言葉を繰り返す反響言語、同じ言葉や音を繰り返す反復言語があります。
統合失調症
統合失調症は10代後半から20代前半にかけて発症しやすくなる精神疾患の一つです。
実在しないものを見たり音を聞いたりする幻覚や、客観的に誤っているにもかかわらず自分で訂正できない強い思い込みである妄想、考えていることを言葉でまとめるのが難しくなる混乱などの症状が表れます。
また無気力になったり、感情表現が少なくなったり、一人で部屋に閉じこもりがちになることもあります。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症は、周りの人と気持ちを共有したり会話でのやりとりを行うのが難しい発達障害です。相手の表情や態度などから読み取れる感情よりも、文字・図形などへの関心が強く表れます。
また音や光などの感覚刺激に対して過敏に反応したり、逆に鈍感だったりするのも特徴です。このような人や刺激への反応により、日常生活に困難が生じます。
注意欠陥・多動症(ADHD)
注意欠陥・多動症の症状は、正しく作業ができない不注意や、常に体を動かしている多動性、順番を待つのが苦手といった衝動性として表れます。
例えば不注意が強いケースでは、忘れ物をしたり、物をなくしたり、きれいに片づけたりするのが難しい傾向です。
多動性が強い場合には、じっと座っているのが苦手で手足を動かしてしまう、静かにしているべき場面で話してしまうなどの行動として表れます。
限局性学習症(SLD)
限局性学習症(SLD)とは、学習に必要な「読む・書く・計算する」いずれかに著しい困難を抱える発達障害の一種です。読む・書く・計算するのが難しい理由が、知的障害でも環境要因でもなく、視覚や聴覚にも障害がない場合に診断されます。
話すことや理解することに問題がない一方で、読む・書く・計算することに著しい困難を抱える状態です。
状況に合わせて児童精神科の受診を
児童精神科は15歳もしくは18歳までの子どもを対象とする診療科です。病院やクリニックによって何歳まで診察を受けられるかが異なるため、受診するときには対象年齢を確認しておきましょう。
初めて児童精神科にかかる場合には、かかりつけの小児科で紹介状を作成してもらうとスムーズです。他に保健センターや療育相談センターといった自治体の窓口へ相談したり、厚生労働省の「医療情報ネット」で検索したりする方法もあります。
子どもの様子を見ていて、うつ病や不安障害・摂食障害などの精神疾患や、自閉スペクトラム症・限局性学習症などの発達障害の心配な点があるときには、相談や受診がしやすい方法を選んで行動することが大切です。
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文・構成/HugKum編集部