グングン子どものやる気が増す! いま注目の“ゲーミフィケーション勉強法”って? 声かけは4タイプ別に行うべし【東大卒教育アドバイザー連載】vol.6

『10歳からの“勉強”こうりゃく! 頭がよくなる88ワザ』の著者で、東大卒の教育アドバイザー・清水章弘さんの執筆による好評連載。第6回は、子どもの4つのモチベーションタイプについて。話題の「ゲーミフィケーション」という手法に注目です!

子どものタイプを見極めて、学習意欲をアップさせよう

「宿題やったの?」「勉強しなさい!」毎日繰り返されるこのやり取りに、疲れを感じている親御さんも多いのではないでしょうか。

一方で、子どもたちがゲームに夢中になっている姿を見ると、「この集中力を勉強にも向けてくれたら…」と思うことがありますよね。ゲームには人を夢中にさせる仕組みがふんだんに取り入れられているのです。今回はこの仕組みを勉強に応用する「ゲーミフィケーション」という手法を紹介します。

重要なのが、子どもの「モチベーションタイプ」を理解すること。同じ声かけをしても、子どもによって反応が全く違うのは、それぞれが持つ「やる気のツボ」が異なるからなのです。

子どもの学習意欲を左右する4つのモチベタイプ

ゲーミフィケーション勉強法では、子どもたちを4つの学習タイプに分類して考えます。

 1. アチーバータイプ(目標達成が好き)

「成し遂げる人」という意味で、目標を達成することに大きな喜びを感じます。自分で立てた目標に向かって粘り強く努力し、前回の自分と比較して成長を感じたいタイプです。

テストが返ってくると他の子より「前回の自分の点数」と比較したり、「目標を超えた!」といった発言がみられたりします。

目標を立ててコツコツを乗り越えていくアチーバータイプ。

 2. エクスプローラータイプ(探求・発見が好き)

「探検する人」という意味で、新しい発見や深く理解することに喜びを感じます。順位や競争よりも、「なぜ?」「どうして?」を大切にするタイプです。

テストの結果より「どうやって解いたか」の過程にこだわる、背景知識や豆知識に興味を示すという特徴があります。

 3. キラータイプ(競争・勝負が好き)

「敵を倒す人」という意味で、競争して優位に立つことに楽しさを感じます。特に意識している相手には絶対に負けたくないという強い気持ちを持っています。

テストや勝負ごとで「誰に勝った」「誰に負けた」を大いに気にする、ランキングや順位に敏感、という特徴があります。

塾内の競争がやる気につながるキラータイプ。

4. ソーシャライザータイプ(協力・交流が好き)

「社会に参加する人」という意味で、仲間と一緒に何かをすることに喜びを感じます。一人で強くなることより、みんなとの交流や、他の人の手助けをすることがモチベーションの源になります。

他の人と一緒に勉強したり、友達に教えたりすることを好みます。テストでは点数を隠したがることもあります。

みなさんのお子さんはどのタイプでしょうか。こうしてタイプ分けをして考えることで、いろいろとアイデアが浮かんできそうですね。

シーン別・4タイプそれぞれの関わり方

このタイプ分けを、実際の声かけや関わり方に応用してみましょう。

宿題をなかなかやらないとき

アチーバータイプやキラータイプは目標設定がポイントです。アチーバーには「昨日は20分かかったから、今日は18分で終わらせられるかな?」、キラーには「お兄ちゃんは昨日30分で終わらせたけど、あなたは何分でできるかな?」と言った声かけが考えられます。学習タイマーを用いると、残り時間が見えてやる気になることでしょう。

エクスプローラータイプやソーシャライザータイプは、ちょっとした関わりを持つことで、やる気を引き出すことができます。ソーシャライザーには「最初の5分だけ一緒に勉強しようか?」などと声をかけ、親も一緒に机に向かってみましょう。エクスプローラーには「終わったあとに、今日の宿題の内容を解説して」と伝え、終えた後に報告会をやってみましょう。

ソーシャライザータイプは、「最初の5分だけ一緒に勉強しようか?」などと声をかけ、一緒に机に向かうことがおすすめ。

テスト結果が出たとき

テスト結果に対するリアクションは、タイプの違いが出やすいところです。どの子にも共通して重要なのは、「今回はどうだった?」と、子ども自身がその結果をどうとらえているかを聞くことです。満点であっても納得がいっていなかったり、逆に赤点でも自分なりに納得感を感じているところが意外とあったりするものです。

アチーバーやエクスプローラーは他者と比較されるとげんなりする傾向にあることに、注意が必要です。アチーバーは「80点の目標を超えたね!」といった自分との比較の観点を大切にしましょう。エクスプローラーは点数よりも、テストの中身が気になるもの。答案をチェックし「この問題、どうやって解いたの?」など、子どもが達成感を抱いている部分を探すのがポイントです。

キラーとソーシャライザーは他者との比較を気にしがち。順位や平均との比較が気になっていることを受け止めつつ、今後の取り組みにつながる声かけを意識してください。「前回よりも順位が下がって残念」「〇〇くんに負けた…」という感情は受け止めつつ、「より良い順位をとるためにはどうしたらいいかな?」「〇〇くんはどんな勉強をしているのかな?」など、今後ポジティブに学習に向き合えるように導きます。

効果的な声かけのための2つのポイント

「タイプ分けは便利ですが、押さえておくべきポイントが2つあります」と清水先生。

1つ目は、固定観念に注意すること

同じ子でも、成長段階や取り組む内容(教科)によってタイプが変わったり、複数のタイプの性質を併せもったりします(私も会社の経営者としてはソーシャライザータイプですが、教育学を学ぶときはエクスプローラーに変身します)。タイプ分けは、適切な対応を考える手段に過ぎません。子どもをよく観察することを大切にしてください。

2つ目は、親子でタイプが異なる場合に注意

例えば、ゲーミフィケーションの論文では「アチーバー VS エクスプローラー」はもっとも相性が悪いことが指摘されています。親がアチーバーの場合、子どもが成績に直結しない無駄なことにこだわりをもっているように感じることがあるようです。また、「エクスプローラー VS エクスプローラー」の場合は、同タイプだからこそ、接し方が厳しくなる傾向があることも指摘されています。

勉強の面白さに気づいてもらうきっかけ作りに

ゲーミフィケーションを取り入れた声かけは、あくまでも学習への動機付けのきっかけです。最終的な目標は、お子さんが「もっと知りたい」という内発的な学習意欲を持つこと。

適切な声かけによって学習へのきっかけを作り、そこから徐々に勉強そのものの面白さに気づいてもらえるよう、温かく見守り、サポートしていきましょう。

「勉強しなさい」の一言から、お子さんの心に響く声かけへ。小さな変化が、きっと大きな成長につながるはずです。

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子どもの「勉強って楽しい!」のために親ができること

記事執筆

清水章弘 教育アドバイザー

1987年、千葉県船橋市生まれ。私立海城中学高校、東京大学教育学部を経て、同大学院教育学研究科修士課程修了。中学高校時代に生徒会長、サッカー部、応援団長、文化祭実行委員などを経験しながら東京大学に現役で合格。自身の時間の使い方や効率的な勉強法を体系化し、「勉強のやり方」を教える塾プラスティーを起業。現在は東京・京都・大阪で運営。創業以来、公教育支援を続けており、青森県三戸町教育委員会の学習アドバイザー等を務めてきた。

著書は『東大式ふせん勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など13冊。累計40万部を突破、海外翻訳も多数。TBS「ひるおび」YTV「情報ライブ ミヤネ屋」MBS「よんちゃんTV」コメンテーター、北海道テレビ「イチモニ!」などに出演。朝日新聞・朝日小学生新聞で執筆・連載中。プライベートでは2児の父。

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