【東大式スポーツ栄養】スポドリは要注意!? 成長期のアスリートキッズが知っておきたい“結果が出せる栄養の話”をSNSで話題のプロに訊く

お子さんがクラブチームに所属してスポーツに専念している、そのようなご家庭は常に食事や健康管理に人一倍気をつかいますよね。一般的な栄養の知識はあるけど、「バランスよく食べさせるだけでいいの?」「栄養は足りているのかしら?」「身長を伸ばす栄養素も知りたい!」など、アスリートキッズを持つ親御さんが抱えるお悩みに、【東大式スポーツ栄養】をInstagramやYouTubeで発信している中野卓さんにお答えいただきました。

中野さんが提唱する【東大式スポーツ栄養】とは?

『東大式スポーツ栄養学』は、いわゆる管理栄養士が行うカロリー計算などに加え、分子栄養学とスポーツ栄養学を組み合わせて私が確立した栄養学のことです。体の状態から不足している栄養素を推測し、補うことを目指すのが分子栄養学で、『東大式スポーツ栄養学』はこれに加えて、スポーツ栄養学の観点から練習や試合のタイミングに合わせた食事法を指導していくものになります。

中野 卓さん

子どもの栄養が足りているか心配。何をチェックすればいいの?

私の行うカウンセリングでは、約30項目の不定愁訴(原因がはっきりしない体の不調)に関するチェックリストに加え、血液検査よりも正確に体内の栄養状態を反映できる測定を用いて、現在の栄養状態を分析していきます。

例えば、「爪が薄くなっている」「めまい・息切れが気になる」などは鉄分不足のサインです。他にもその方の不定愁訴をヒアリングすることで、体内でどの栄養素が不足しているのかがある程度わかり、それに応じて指導を行います。

成長期に身長を伸ばすためには?

成長期のお子さんを持つ親御さんは身長のことが気になりますよね。でも、「これを食べれば身長が伸びる!」という特定の食べ物は存在しません。

身長を伸ばすためには骨の成長が必要です。骨の構造は鉄筋コンクリートに例えると、鉄筋の役割を果たすのが「コラーゲン(タンパク質)」であり、その生成には「ビタミンC」と「鉄分」が必要です。そして、コンクリート部分にあたるのが「カルシウム」、「マグネシウム」、「リン」。さらに、カルシウムを骨に接着させるためには「ビタミンK」が必要なんです。骨の成長には、これらの多くの栄養素が関与するため、バランスの取れた食事を摂ること以外に対策はないと言えるのです。

遺伝的に身長が気になるお子さんでも、赤身肉や魚で「鉄」と「タンパク質」、牛乳やチーズで「カルシウム」、日光浴や青魚で「ビタミンD」を欠かさないようにすることが最大限に身長を伸ばす方法になります。

中野さんのYouTubeチャンネルより

アスリートキッズの食事。ポイントは“分食”で食事回数を増やすこと

運動中、よく飲むけど…スポーツドリンクは危険!?

まず、一般的に市販のスポーツドリンクには、人工甘味料が使われている場合が多いです。人工甘味料の慢性的な摂取は、スポーツをするお子さんであっても、肥満や糖尿病のリスクを上げてしまうと言われています。

そんなリスクが心配な方は、人工甘味料不使用のスポーツドリンクもありますし、手作りするという方法もあります。手作りスポーツドリンクの作り方は簡単です。お水に砂糖か蜂蜜を溶かし、レモンなどをしぼれば完成です。人工甘味料が気になる方は、ぜひ手作りのドリンクを試してみてください。

アスリートキッズは、ぜひ食事の回数を増やして

激しいスポーツをしている子どもたちは特定の栄養素が不足しがちなので、食事の回数やタイミングに工夫が必要です。特に「鉄」や筋肉を作るのに必要な「ビタミンD」、エネルギー産生に関わる「ビタミンB群」、そして意外にも「糖質」が不足しているケースが多く見られます。

また、「オメガ3系脂肪酸」は炎症が長引く原因となるので注意が必要です。筋肉痛が長引いたり副鼻腔炎を持っていたりニキビができやすい場合、オメガ3系脂肪酸が不足していて、慢性的に炎症が起こっている可能性があります。オメガ3系脂肪酸はほぼ魚からしか補うことができないため、週に4食は魚を食べていただきたいです。

さらに、エネルギー消費が激しいスポーツをするお子さんには、3食だけでは必要なエネルギーを補うのが難しいため、食事の回数を増やすことをおすすめしています。練習の前後などにも食事をすることで、1回の食事にかかる消化の負担を減らしましょう。体力の回復が促進する効果も期待できるのでぜひ試してみてください。

運動直後は疲労回復のゴールデンタイム

パフォーマンスの向上と迅速な体力の回復のためには、運動の前後で摂取する栄養素の種類とタイミングが非常に重要となってきます。

運動前には、エネルギー源となる「糖質」、体の調子を整える「ビタミン・ミネラル」、そして持久力系競技で特に有効な「抗酸化物質」を摂取することで、高いパフォーマンスを発揮することができます。

そして運動後にはエネルギー補給のための「糖質」、筋肉の修復に不可欠な「たんぱく質」をメインに摂取。加えて、疲労回復を助けるビタミンや抗酸化物質も摂ると良いです。

運動後は、できるだけ早い段階に栄養補給をすることで、体力の回復速度が上がります。練習後すぐに食事ができない場合でも、まずはおにぎりやパン、バナナなどの「糖質」や、プロテインなどの「たんぱく質」を一口でも摂取することで疲労回復の速度は変わります。野菜などに含まれる「ビタミン」や「抗酸化物質」は、家に帰ってからの食事で補給するのでも問題ありません。運動直後は、体の回復(アナボリック)のゴールデンタイムであり、筋肉の分解を防ぎ、回復を最大化する上で最も重要なのです。

とはいえ、練習場所で野菜などを摂ることは現実的ではないため、持ち運びしやすいおにぎりやプロテインなどで主要な栄養素を先に補給し、その他の栄養素は帰宅後の食事で補うという順番でも問題はありません。できるだけ運動直後に栄養補給をして回復速度を速めたい場合には、サプリメントを使うこともおすすめしています。

競技によって摂るべき栄養素は変わってきます!

全てのスポーツに共通して重要なのは、エネルギー源となる「糖質」、エネルギー変換を助ける「ビタミン」「ミネラル」、疲労回復を促す「抗酸化物質」ですが、競技の特性(体重管理の要否、競技時間)によって、特化すべき栄養戦略は異なってきます。

体重を増やす必要がある競技(相撲、ラグビーなど)では、多くの食事量とある程度の体脂肪が必要とされます。体を美しく見せる必要がある競技(新体操など)では、栄養不足に陥らないよう注意深く体重をコントロールする必要があります。

競技時間が長い競技(マラソンなど)では、本番の3日くらい前から炭水化物の摂取量(糖質)を増やした食事をするグリコーゲンローディングなどを取り入れたりします。逆に、競技時間が短い瞬発系の競技(100m走など)では、筋肉で瞬発力なエネルギーを作るために、短期間にクレアチンの体内貯蔵量を増加させるクレアチンローディングを取り入れたりもします。

自己ベストを出せる食事のポイントは日頃の食事!

自己ベストを出すためには、試合当日だけではなく、日々の練習から100%の力を発揮できるコンディションを維持することが最も重要です。

私の経験上、多くのアスリート(9割以上)は自覚のない不調や栄養不足を抱えたまま練習しています。自己ベストを出したいのなら、本人が気づいていない不調や栄養不足を解消し、常に100%のパフォーマンスを出せる身体を作ることに集中してください。

また、試合という目標に合わせて栄養摂取のタイミングを最適化することで、本番での最大パフォーマンスを引き出すことができるようになります。

不調や栄養不足が気になる方は、私のような栄養のプロを頼って分析するのも一つの方法です。日々の練習で100%の力を出すことができれば、「毎日1%成長すると、1年で37倍になる」そんな複利の効果を目指していくことで、自己ベストを更新することができます。

アスリートキッズは思っている以上にエネルギーが必要!

成長期のお子さんは運動で消費するエネルギーに加え、身長を伸ばしたり体を作ったりするためのエネルギーも必要になります。そのため、大人が思っている以上に多くの食事量を必要とする場合があります。

エネルギーが足りているのかをチェックする場合は、1日の厳密なカロリー計算よりも、3か月や半年など体重の増減を長期的に観察することが重要です。身長が伸びているにもかかわらず体重が増えていない場合などは、食事量が不足しているサインの場合もあります。逆に、身長の伸びとともに体重も着実に増えているのであれば、必要なエネルギーはおおむね摂取できていると判断できます。

親御さんが「うちの子はたくさん食べている」と感じていても、子どもの運動量や成長に必要なエネルギーに追いついていない可能性もあるので、体重やBMI値を点で見るのではなく、長期的に見て緩やかに増えているのかに注目してみてください。

サプリメントも上手に使って

成長期で、さらにスポーツを日常的に行うお子さんの場合、一度の食事量を増やすよりも、分食として食事の回数を増やしエネルギーや栄養素を摂る方が効率的です。しかし、なかなかそれも難しいという方におすすめしたいのがサプリメントです。

特にアスリートにとって「プロテイン」は体づくりやリカバリーのために欠かせない栄養素です。可能な限り、人工甘味料の使われていないものを選ぶようにしてください。

また、これまでご紹介してきた全スポーツに共通して必要な「ビタミン」や「ミネラル」「抗酸化物質」などの不足が気になる場合にも、サプリメントは有効と言えます。

ただし、市場に出回っているサプリメントの品質は玉石混交です。製品を選ぶ際は、製造工程、第三者機関の評価、そして製品自体の臨床データという客観的な基準で選んでくださいね。

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お話を伺ったのは…

中野卓 スポーツ栄養サポーター

東京大学大学院総合文化研究科修了。大学まで水泳選手として活躍。高校の時にタイムが伸び悩んだことから、スポーツ栄養を学ぶ。それを機にどんどんタイムが縮み、栄養学の面白さに惹かれて大学・大学院ではスポーツ栄養学を専攻。現在はジュニアアスリートをメインに、選手の栄養サポートを実施している。体力医学会学会発表・JPFSM論文投稿・競泳マスターズ世界新選手指導実績あり。

取材・文/鬼石有紀

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