国連が機能しなくなっている!? これで国際平和や安全は守られるの? 【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、機能不全と言われるようになった国連について学びます。

最近、国連が「機能不全」と言われるのはなぜ?

近年、「国連が機能しなくなった」という声を耳にすることが増えました。国際平和と安全の維持を主要な使命とする国連に、いったい何が起きているのでしょうか。この機能不全の背景には、主に3つの大きな要因が関わっています。

理由1:常任理事国間が対立しているから

最も大きな要因は、安全保障理事会(安保理)における常任理事国間の深刻な対立です。安保理は国際の平和と安全に主要な責任を負う機関で、アメリカ、ロシア、中国、イギリス、フランスの5か国が常任理事国として「拒否権」を持っています。この拒否権は、たった一国が行使するだけで、いかなる決議案も成立を阻止できる強力な権限です。

特に近年、ロシアによるウクライナ侵攻や、中東を巡る情勢など、大国の利害が鋭く対立する重大な国際危機において、ロシアや中国が拒否権を行使(あるいは行使を示唆)し、安保理が有効な決定や行動を起こせなくなる事態が常態化しています。設立当初から存在するこの仕組みが、現在の国際社会のパワーバランスの中で、国連の活動を著しく妨げているのです。

理由2:パワーバランスの変化とグローバルサウスの台頭

また、国際的なパワーバランスの変化とグローバルサウスの台頭があります。冷戦終結後、一時期は協調的な国際関係も見られましたが、現在は西側諸国とロシア・中国との間の緊張関係が再び顕著になっています。

これに加え、アジア、アフリカ、ラテンアメリカを中心とするグローバルサウスと呼ばれる新興国・途上国の影響力が増しています。これらの国々は、西側諸国と異なり独自の立場を取り、時には拒否権を持つ大国側につくこともあります。

かつて西側諸国が持っていた圧倒的なパワーはもはや存在せず、多様化する国際社会の意見を統一することが極めて難しくなっているため、国際システムの機能不全を助長しています。

理由3:新しい脅威に対し、PKOが機能を果たせなくなっている

さらに、国連の重要な活動の一つであるPKO(平和維持活動)も限界に直面しています。マリやスーダン、コンゴ民主共和国など、一部の紛争地では和平が進まず、国連PKOが受け入れ国政府から撤収を迫られる事態も発生しています。

複雑で長期化する内戦やテロリズムといった、従来の国家間の紛争とは異なる新しい脅威に対して、PKOが十分な平和維持機能を果たせなくなっているのです。

貧困、気候変動、人道危機、感染症といった国境を越える非伝統的な課題が深刻化する一方で、これらに対応するための国際的な協力体制も、大国の対立や財政的な問題から、十分には機能していないのが現状です。

時代に合わせ、国際システムを再構築する必要がある

このように、「国連の機能不全」という言葉の背景には、安保理の「拒否権」という仕組みの限界、国際社会のパワーバランスの変化、そして複雑化する現代の危機への対応の難しさといった、複数の構造的な問題が絡み合っています。国連が再び有効に機能するためには、これらの課題を克服するための安保理改革を含む、抜本的な国際システムの再構築が求められています。

こちらの記事もおすすめ

日本が「スパイ天国」と呼ばれているのはなぜ? 世界中にいるスパイの活動と日本の課題【親子で語る国際問題】
実は重要な役割を担う「スパイ」 「スパイ」と聞くと、映画や小説の世界の話だと思われるかもしれませんが、実は国際社会において非常に重要...

記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

編集部おすすめ

関連記事