日本が「スパイ天国」と呼ばれているのはなぜ? 世界中にいるスパイの活動と日本の課題【親子で語る国際問題】

今知っておくべき国際問題を国際政治先生が分かりやすく解説してくれる「親子で語る国際問題」。今回は、知っているようで知らない「スパイ」について学びます。

実は重要な役割を担う「スパイ」

「スパイ」と聞くと、映画や小説の世界の話だと思われるかもしれませんが、実は国際社会において非常に重要な役割を担っており、もちろん日本にも存在していると考えられています。では、一体スパイとはどのような存在で、どのような活動をしているのでしょうか。

スパイとは「秘密の情報収集活動を行う人」のことです。主に、他国の政府や組織の機密情報を秘密裏に収集する役割を担う人物のことを指します。「工作員」や「諜報員」とも呼ばれ、特定の国の情報機関(アメリカのCIA、ロシアのSVRなど)に雇われていることが多いです。

スパイの活動は情報の収集からサイバー攻撃まで幅広い

スパイ活動の目的は多岐にわたりますが、代表的なものとしては国家の安全保障に関する情報の収集があり、敵対国や競争国の軍事力、兵器技術、外交戦略、経済状況といった、国益に関わる最高機密の情報を盗み出します。

また、産業・技術情報の窃取をする産業スパイは、最先端の科学技術や企業の営業秘密、特許情報などを盗み、自国の経済的優位性を高めることを目的とします。

さらに、世論工作や破壊工作があり、情報操作を行って特定の国の世論を自国に有利な方向に導いたり、機密施設へのサイバー攻撃や物理的な妨害活動を行ったりすることもあります。

彼らは、政府高官や企業の内部に入り込んだり、外国の要人や関係者に接触して情報を聞き出したり、高度な技術を使ってサイバー空間から情報を盗んだりするなど、様々な手段を用いて活動します。

日本が「スパイ天国」と言われる理由は?

そして、日本は「スパイ天国」とも言われています。外国のスパイは日本にも存在し、活発に活動していると考えられています。特に、日本は経済・科学技術が発達した主要国であり、また安全保障上の重要な位置にあるため、他国から狙われやすいのです。

日本の公安警察は、外国の情報機関に協力する人物(協力者)や工作員の存在を把握し、監視する「外事警察」という部門で対抗していますが、その活動は非常に困難な状況にあると言われています。その理由としては、以下の点が指摘されています。

理由1:日本にはスパイ活動を取り締まる法律がない

まず、法律の不備です。日本には、スパイ活動そのものを取り締まるための「スパイ防止法」のような法律が存在しません。そのため、スパイが機密情報を盗んでも、刑法などの他の法律に触れない限り、逮捕することが難しいのが現状です。

理由2:情報の保全体制が弱い

また、情報の保全体制の弱さがあります。かつて日本は、政府機関や企業の機密情報の管理体制が甘いとされ、「スパイ天国」と揶揄されることもありました。近年は対策が進められていますが、サイバー攻撃による技術や機密情報の窃取は深刻な問題となっています。

スパイ活動から日本を守るための活動強化が急がれる

日本の平和と安全を守るためには、スパイ活動や外国からの不当な干渉(外国影響工作)から国益を守るための「カウンターインテリジェンス」(=防諜【ぼうちょう】)の強化が急務です。政府は、特定秘密保護法の制定や、重要経済安保情報の保護に関する法律の検討など、法制度の整備を進め、警察や自衛隊などの情報組織との連携や能力強化を図っています。

私たち一人ひとりも、安易に国の機密や企業の情報を外部に漏らさないよう、情報保全に対する意識を高めることが大切だと言えるでしょう。

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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。

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