給食無償化の現状と今後の方針
自治体の給食無償化はどの程度進んでいるのでしょうか? 現状を押さえた上で、国が示している今後の方針を紹介します。
給食無償化を実施している自治体数
2023年9月1日時点で給食無償化を実施しているのは、全国にある1,794の自治体のうち722です。そのうち給食を実施しているすべての小中学校に通う児童や生徒を対象に、無償化している自治体は547あります。
約30%の自治体が、すべての小中学生を対象に給食無償化を実施している計算です。
2026年度から全国で給食無償化の方針
国は2026年度から、全国で給食無償化を実施する方針です。2025年度予算案成立に向けた自民党・公明党・日本維新の会による三者合意では、まずは2026年度に小学校から給食無償化を実施し、その後中学校へも拡大する方針を示しました。
また国の重要な課題や年末の予算編成の方向性を示す「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針)」にも、給食無償化が盛り込まれています。
参照:令和7年度予算案成立に向けた協議についての会見|首相官邸
:経済財政運営と改革の基本方針2025|内閣府
給食無償化のメリット・デメリット

給食無償化にはメリットだけでなくデメリットもあります。どのようなメリット・デメリットが考えられるかをチェックしましょう。
給食費の負担が減るメリット
給食費の平均額は、2023年5月1日時点で公立小学校が月額4,688円、公立中学校が月額5,367円です。小学校6年間で約30万円、中学校3年間で約16万円となります。
2026年度から給食費無償化が始まれば、この出費がなくなる分、家計の負担を軽減できる点はメリットです。
参照:学校給食実施状況等調査-令和5年度結果の概要|文部科学省
質や量が低下する懸念がある点はデメリット
デメリットには、全国一律で給食無償化を行うことにより、質や量が低下する懸念があげられます。給食無償化が始まれば、自治体は予算内で給食費を賄わなければいけません。
物価上昇が続く状況では、同じペースで予算を増やせなければ、給食の質を下げたり量を減らしたりして調整せざるを得ない事態が起こり得ます。
このような懸念に対して、新宿区では国に意見書を提出しています。
参照:給食無償化に際し、質・量の確保を担保するための国による十分な予算措置を求める意見書|新宿区
給食無償化の課題は他にも

一律で児童生徒を対象に給食無償化を行うことには、他にも課題があります。給食無償化によって生じる不平等や、格差是正につながらない点、給食の目標に合致しない点について見ていきましょう。
給食を食べない児童・生徒との不平等が生じる
給食無償化が行われても、その恩恵を受けられない児童や生徒もいます。例えば、給食が選択制の場合や、アレルギーがある場合など、さまざまな事情により弁当を持参しているケースがそうです。他にも不登校で給食を利用していない児童や生徒も該当します。
このような児童や生徒と、給食を利用している児童や生徒との間に不平等が生じるのは、給食無償化の課題の一つです。
格差是正につながらない
格差是正につながらないという点も、給食無償化の課題としてあげられます。生活保護受給世帯や低所得の世帯は、これまでの制度でも給食費は無償になっていました。
2026年度から一律で実施される方針の給食無償化には、所得制限がありません。すでに給食無償化されている世帯には変化がないため、格差是正にはつながらない施策といえます。
給食の目標と異なる
学校給食法に記載されている学校給食の目標は、バランスのよい食事による健康の保持増進や、子どもの食への理解や判断力を育成することです。本来の給食の目標である食育の推進を、給食無償化の目的として掲げている自治体は5%未満でした。
一方、給食無償化の目的に、子育て支援を掲げる自治体は90%以上となっています。次いで多いのは、少子化対策や定住・転入促進を目的とする自治体で、いずれも約10%です。本来の給食の目標と給食無償化の目的に違いがあることも課題といえます。
加えて給食無償化の目的に対して、成果目標を設定し効果を検証している自治体は20%未満でした。子育て支援や少子化対策として、給食無償化が本当に有効なのか、効果の検証が十分に行われていない点も課題です。
参照:学校給食法|e-Gov 法令検索
:「給食無償化」に関する課題の整理について|文部科学省
全国で実施が進む給食無償化の方針をチェック
2026年度から全国一律で給食無償化が行われる方針が国により示されています。まずは小学校から始まり、中学校にも拡大していく予定です。
給食費の負担が減ることで「家計が助かる」という家庭がある一方、限られた予算内で給食を提供しなければいけない事情から、給食の質や量の低下に関する懸念もあります。
また、さまざまな事情から給食を食べていない児童や生徒が恩恵を受けられず不平等が生じる点や、すでに給食が無償となっている生活保護受給世帯や低所得世帯との格差是正につながらない点、給食の本来の目的に合わない点も課題です。
メリットだけでなく、デメリットや課題も多い給食無償化については、今後の動向もチェックしていきましょう。
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構成・文/HugKum編集部