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子どものころはかんしゃく持ちで怪獣のよう。注意力が散漫で、東大受験では問題を1ページ見落として…
――子どものころからADHD傾向があったようですが、どのようなことがよくありましたか。
神谷さん とにかく忘れ物が多かったです。妹と同じ中学校に通っていたのですが、私が家にお弁当などを忘れて登校してしまうので、妹がよく私のクラスに忘れ物を届けてくれました。
感情のコントロールも苦手で、小学生のころは何かあるたびにかんしゃくをおこす怪獣のようでした。中学受験をしたのですが、ちょっと勉強につまずくと床に寝転がって泣き叫ぶので、両親はかなり大変だったようです。

神谷さん 注意力散漫で、テスト問題の見落としもよくありました。
東大を受験したときも、実は世界史の問題を1ページ見落としてしまいました。現代文の問題も見落としがあり、お弁当の時間に友だちから「あの問題さ~」と言われ、「えっ? そんな問題あった?」とパニックに。そういうことが、小学生のころからたびたびありました。
中学受験で第1、第2志望校に不合格。人生で初めて挫折を知った
――神谷さんの中学受験の経験を教えてください。
神谷さん 私の両親は教育熱心。私は4人姉妹ですが、両親は子どもたちに早稲田と慶応を強く勧めていました。中学受験をするのは当然の環境で、第1志望は早稲田大学系属の早稲田実業学校中等部、第2志望は慶応義塾湘南藤沢中等部。しかし、結果はどちらも不合格でした。
模試で80%以上合格の目安となるA判定ではなかったので、「絶対受かる!」という自信はなかったものの、現実をつきつけられたときは子ども心にショックで、しばらくベッドから出られませんでした。
負けず嫌いで感情のコントロールが苦手だった私も、この経験で初めて「人生って、うまくいかないこともある…」ということを学び、このころからかんしゃくも起こさなくなりました。中学受験を通して成長しましたね。
――第1、第2志望が不合格という結果で、中学校はどこに進学したのでしょうか。
神谷さん カトリック系の浦和明の星女子中学・高等学校です。中学では、新体操部に入部したのですが、部活動が楽しくてお昼休みに練習に行くほどでした。毎日が充実していて、この中学でよかったと心から思えました。

高1のとき友だちに誘われて東大の学園祭へ!
――東大を目指した理由を教えてください。
神谷さん きっかけは高校1年生のとき友だちから、「東大の学園祭に行かない?」と誘われたことです。それまでは東大って、秀才だらけの堅いイメージでしたが、学園祭に行くと想像とはまったく違っていて明るく楽しそうな雰囲気で。純粋に「楽しそうだな」と思いました。
また、早稲田と慶応にこだわっていた両親への反発もあったと思います。東大に行けば、両親の理想を超えられると思いました。
――ご両親に反発する気持ちは今もありますか?
神谷さん 今は、両親と仲がいいですし、両親の気持ちもよく分かります。特に父は、子どもたちに愛情を注ぐ人。娘たちが可愛くて仕方ないので「成功してほしい!」「 失敗をさせたくない!」という気持ちが大きかったのだと思います。でも当時の私は、そんな親心に気づかず反抗ばかりしていました。
苦手な科目は勉強する気が起こらない。得意科目で気分を上げ、集中して学習する工夫を
――神谷さんはADHD傾向があるそうですが、受験勉強はどのようにしていましたか。
神谷さん 私は、好きなものや得意なものには過集中なのですが、関心がないものに対しては、やろうという気持ちがなかなか湧きません。
中学受験のときは理科と社会は偏差値70でも、国語は偏差値40。得意科目と苦手科目に差がありすぎるので、勉強をするときまずは得意科目から始めて気分をアップさせ、その後に苦手科目を勉強するようにしていました。
大学受験でも、1科目30分~1時間と決め、得意科目の勉強がどんなに乗っていても時間になったら科目を切り替えて、苦手科目も集中して取り組めるように。
苦手な科目はちょっとずつ無理せず、飽きたらやめるぐらいの気持ちでやっていくと、だんだん及第点に近くなっていきました。
やる気は行動して出す。6点足りずに落ちた悔しさをバネに1点でも多く点を確保
――ほかに実践していた、勉強法があったら教えてください。
神谷さん 大学受験では一浪して東大に合格したのですが、浪人中は図書館など外で勉強していました。「勉強を始める」という最初の一歩がつらいので、何も考えずに「とにかく服を着替えて、外に一歩出る」ようにしていて。出てしまえば図書館や自習室に行くしかない。先にやる気があって行動するのではなく、行動してからやる気を出す方法にしていました。
単純な暗記は苦行でしかなかったので、英単語の学習は通学の電車の中のみと決めてやっていました。英語のリスニングの勉強も電車の中でしたね。
現役で東大を落ちたとき、入試得点の開示請求をすると合格ラインにあと6点足りませんでした。先ほどもお話したように、私は問題の見落としや、うっかりミスがどうしても起きてしまうので、万一失敗しても合格できるだけの余裕を持てるよう「あと10点高く!」「あと20点高く!」と思って勉強に励みました。
子どもたちは、勉強だけでなく自分の世界を見つけて広げてほしい
――タレントやモデルとしても活躍されていますが、今後の目標はありますか?
神谷さん 今は就職活動をしているのですが、実は思うようにいかない状況で苦戦しています。「私って、何がしたいんだろう…」「私には、どんな道が向いているんだろう…」と自問自答を繰り返しています。
振り返ると、私は学歴重視の両親の影響で、小学生のときからずっと勉強一筋でした。今、思えば小学生のうちからスポーツでも、趣味でもいいので、勉強以外のことでもっともっと自分の世界を広げておけばよかった…と後悔しています。もし私に子どもができたら、勉強一辺倒ではなく、もっと多様な選択肢を持たせたいですね。

――神谷さんのこれまでのご経験を通して、読者にメッセージをお願いします。
神谷さん 自分の世界をもっている人は強いと思うし、自分の世界があると、自らの意思で自分の人生を切り拓いていけます。そのベースを作るのは、子ども時代の経験が大きいと思うので、ぜひお子さんには勉強に限らずいろいろな体験をさせてあげてほしいと思っています。
また、受験生のお子さんをお持ちの親御さんは、ふとしたときにご自身のこれまでの歩みを振り返ってみてください。長い人生という大きな流れの中では、受験という壁はほんの一つの通過点にすぎなかったと感じられるはずです。
お子さんの合格・不合格という結果に心が揺れ、一喜一憂してしまうお気持ちは痛いほどよく分かりますが、私自身が受験を通して感じたのは、結果がどうあれ「置かれた場所で自分らしく、オリジナリティを持って咲くこと」こそが、何よりも大切だということです。
どうか、結果の先にあるお子さんの無限の可能性を信じて、一番近くで寄り添い、支えてあげてほしいと願っています。
お話を聞いたのは?
東京大学1年生の秋に、「ミス東大コンテスト2020」でグランプリ受賞。翌年春には、日本一のミスキャンパスを決める「MISS OF MISS CAMPUS QUEEN CONTEST 2021」でもグランプリを受賞する。2022年には英マンチェスターで開催された、社会的問題について議論する「One Young World Manchester 2022」=「ヤングダボス会議」に参加し、低糖質スイーツ事業と世界の糖尿病問題について英語でスピーチをするなど活躍の場を広げている。東京大学公共政策大学院経済政策コース在学中。
取材・文/麻生珠恵 写真/五十嵐美弥