会場に集まったのは、絵本作家・五味太郎さんと、ともに本を作ってきた歴代の編集者たち。決まった進行も、台本もありません。名前を呼ばれた編集者が前に出て、五味さんの隣に座り、マイクを渡される——そんな、自由なかたちでトークは始まりました。

12月19日、代官山LURF GALLERYの1階。
この日行われたのは『五味太郎絵本出版年代記展 ON THE TABLE』ギャラリートークです。
絵を描いて額に入れて飾る、タブロー作品を一人で作るのも楽しい、でも絵本は全く違うーー五味太郎さんはそう語ります。絵を描いて、印刷して、製本して、流通して、読者に届く。編集者、デザイナー、印刷、流通ーーーたくさんの人が関わって、はじめて一冊の本になる。そんな風に人が何層にも重なって成り立つ世界が、タブローを描くよりもはるかに面白かったと言います。その面白さに気づいてから、五味さんは本作りに深くのめりこみ、50年以上にわたって本を作り続けてきました。
「面白すぎるのも問題だなと思って、一度落ち着いてみようと思った」。
そうして、自分が描いてきた本のすべてをテーブルの上に並べる展覧会をやってみようと思い立ったのだそうです。海外翻訳本を含めて1000冊近い本が会場に並びなした。
そして「せっかくなら毎週金曜日に何かやろう」という流れになり、その第一弾として声をかけたのが、一緒に楽しく本を作ってきた歴代の編集者たちでした。

決まった進行も、台本もありません。名前を呼ばれた編集者が前に出て、五味さんの隣に座り、会話が始まります。話題は思い出話から、突然、核心に触れる問いへと飛び、そしてまた、何気ないエピソードに戻っていく。
週に3、4回、五味さんのもとへ通い続けた編集者。国鉄ストライキの夜。連絡もできないまま、それでも約束があるからと、やっとの思いでたどり着いた午前2時。外で待っていた五味さんの姿が忘れられないという編集者。18年間担当し、何度も引っ越しを手伝った編集者。368ページに及ぶ「らくがき絵本」を、一緒に形にした編集者。
そうしたやりとりの積み重ねの中で、五味太郎さんの考え方が、少しずつ、そしてはっきりと浮かび上がってきます。
この日何度も語られたのがこの言葉、「子どもと大人をわけない」。
「子どものために、って構えた瞬間に、ズレる」という感覚。
「わかるかどうかを決めるのは、作り手じゃない」という視点。
トークの終盤、「五味さんは”本を作っている人”というより、”考え続けている人”なんだなと思いました」と語った編集者に対し、五味太郎さんはこう答えました。
「考えるのをやめたら、終わりだと思っている。だから今も、わからないことをやっている」
この夜は、五味太郎さんと編集者たちの話を聞く場であると同時に、それぞれが自分の人生や価値観をもう一度考えるきっかけになる時間でもありました。
52年間で372タイトル。
五味太郎さんは、何を感じ、何を考えながら、絵本を作り続けてきたのか。
ぜひ配信で確かめてみてください。
アーカイブ配信特設サイト
https://dps.shogakukan.co.jp/gomitaro50
次号予告
12月26日(金)は、ブックデザイナー・祖父江慎さんがゲスト。
祖父江慎さんがアートディレクションを務める4歳から100歳向けのMOOK『ぺぱぷんたす』002(2018年)に五味太郎さんが参加したことが交流のきっかけ。五味太郎さんが「わけがわからないけど、何か起きる人」と評する祖父江慎さんと現在進行形で進んでいる本作り。その過程で、五味太郎さんは改めてこう感じたと言います。
「だから、絵本なんだよね、やっぱり」。
なぜそんな言葉に行き着いたのか。
そして、「久しぶりに新鮮な気持ちでいる」その理由とは。
予測不可能、ディープな夜になりそうです。
会場のお席は満席ですが、リアルタイムでご視聴できる【ライブ配信】と好きなタイミングで視聴できる【アーカイブ配信】も用意されています!お見逃しなく!

『五味太郎絵本出版年代記展 ON THE TABLE』ギャラリートーク
配信チケット販売中
https://dps.shogakukan.co.jp/gomitaro50
【五味太郎ギャラリートーク】
祖父江 慎さんをお招きしてのスペシャルトーク
開催日時:2025年12月26日(金) 18:00~20:00予定
ゲスト:祖父江 慎さん(ブックデザイナー)
–祖父江 慎さんProfile–
コズフィッシュ代表。体験&体感MOOK『ぺぱぷんたす』アートディレクター。すべての印刷物に対する並外れた「うっとり力」を持って、日本のブックデザインの最前線で人文書、小説、漫画、絵本、写真集など書籍の装丁・デザインを手がける。『ぺぱぷんたす』002号(2018年)に五味太郎さんが参加したことが、交流のきっかけとなった。
リアルタイムでご視聴いただける【ライブ配信】と、
イベント終了後、お好きなタイミングでご視聴いただける【アーカイブ配信】のオンライン配信チケットをご購入いただけます。
(※アーカイブ配信は、視聴可能になるまでお時間をいただきます。配信開始は12月29日ごろを予定しています。配信終了は2026年5月末日。)
https://lurfgallery.com/blogs/current-exhibitions/gomi-taro
※本記事は、12月19日開催のトークイベントを再構成したものです。