「やるべきことをしない子ども」を怒ってしまう親が、子どもの人生から奪っていること【作業療法士・クロカワナオキさんが語る】

『障がいのある子どもを育てながらどう生きる?』の著者で作業療法士のクロカワナオキさんの連載記事シリーズ。
今回は、障がい児と健常児の両方を育てた立場から、「やるべきことをやっていない子ども」に対して怒ることで、やらせるように仕向けることの弊害と解決策について、論じてもらいました。

*  *  *

子育てをしていると、子どもが「やらないといけないこと」を後回しにするのが見て、イライラすることがあります。私がそう感じたのは、2番目の子どもが小学校に通っているときでした。

仕事から帰宅し、家事に追われ、ようやく休めると思った時……

子どもは学校から帰ってくると、持ち帰ったものを床に投げたまま、宿題を後回しにして、ダラダラしたり遊んだりしていました。

一方で、妻や私は仕事から帰って息つく暇もなく、夕飯の準備や洗濯物たたみ、お風呂の準備などに取りかかります。それは、子どもが体調を崩さないように、なるべく早く休ませたいという思いと、やらないといけないことをさっさと済ませて、ゆっくり休みたいという気持ちからでした。

ところが子どもは、食事を済ませて、食器の後片付けも終わり、やっと一服できるというタイミングになってから、ようやく宿題を始めたり、翌日の学校の準備を始めたりします。そして宿題がわからなかったり、宿題を学校に忘れて帰ってしまったと言い出したりするのでした。

私たち夫婦としては、仕事で疲れて帰ってきて、ようやく休めると思っていた矢先なので、当然イラッとなります。最悪なのは、学校に提出しなければいけないプリントを出し忘れていたというケースです。そのことを寝る前になって言われたり、ひどいときには当日の朝などに判明したりすると、こちらも余裕がないのでわーっとなってしまいます。


そんなことが日常的に起こる我が家では「まず、やらないといけないことをやってからにしなさい!」という妻の声が、毎日のように響き渡るようになりました。

やるべきことをしない子どもが変わらない理由

私も当然イライラしていましたが、同時に心配もしていました。子どもが社会人になってからも「やるべきこと」を後回しにしているようだと、仕事に支障をきたしたり、周りに迷惑をかけたりして信頼されなくなるのではないか、と感じていたのです。とは言え、いくら親が怒ってやらせようとしても、子どもの行動に変化の兆しはみられません。

なぜ子どもの行動は変わらなかったのか。

それは親である私たちが、子どもが「やるべきこと」をしないことに対して、誤った認識を持っていたからです。

「やるべきことをする」というのは言い換えると「物事の優先順位に沿って行動する」ことです。そして、子どもの優先順位を決めるのは子ども自身であって、親ではありません。

子どもは、親が考える優先順位とは全く異なる、別の優先順位に沿って行動しています。「やるべきことをさせよう」としても行動が変わらないのは、子どもの価値観が変わらないことに理由があるのです。

そのことに気づいた私は、子どもへのスタンスを変えることにしました。子どものことを「自身の考えに基づいて行動し、その結果の責任も負う1人の個人」として認識する。一言で言うと「大人扱い」するようにしたのです。

子ども自身が考えて行動を起こすための支援

以降は子どもに、親の言うことを聞くことを求めないようにしました。その代わりに、子どもが自身の行動に対して、いろいろな視点で考えられるように「時間の使い方をどのように考えるのか」を聞いてみることにしました。

学校が終わって夜寝るまでの時間における、宿題と遊びについては

「今日1日を一区切りにした時、どちらの方が大切だと思っているの?」

「どういう順番で取り組むと、寝る時に今日は有意義だったなって思いそう?」

「明日になった時に、もっとこうしておけばよかったと思うとすれば、どんなことかな?」

という感じです。

そして、たとえその返答が、私にとっては正しいと思えなかったとしても、否定はせず傾聴するようにしました。その代わりに、子どもが自分で考えたやり方で失敗したとしても、なるべくフォローはせず見守りました。「考えて決める」という行為は、その結果も本人が負わなければ、ブラッシュアップしていかないからです。

むしろ、学校で忘れ物をしたとしても、先生から怒られたり恥ずかしい・不憫な思いをしたりした方が、自身の行動の振り返りがしやすくなると考えるようにしました。

とは言え、子どもが「失敗した」と感じたり落ち込んだりする時には「次からはどうすればいいんだろうね」という言葉をかけるようにはしました。すると意外なほど、それなりに考えられた返答が返ってくるようになっていきました。

子どもを大人扱いすると、親の気持ちもラクになる

子どもを「大人扱い」することで、親の方の心境にも良い変化がありました。子どもが「やるべきこと」をしなかったとしても、それほどイライラしなくなったのです。

子ども自身が自分の行動を選んでいることを理解したことで、子どもの失敗の後始末を、親はしなくてもよいことに気づいたからです。子どもの失敗にイライラしていた原因は、子どもの失敗を親の失敗でもあるように錯覚し、自分たちがなんとかしなければいけないのだと、思い込んでいたことにありました。

「大人扱い」することで、子どもを離れた目線で見ることができるようになり、そのことに気づくことができたのです。子どもはやがて、遊びと勉強のスケジュールやバランスを自ら考え、管理するようになっていきました。私たちが口出しすることは、今ではほぼありません。

やるべきことにこだわる親が子どもから奪っていること

子どもへの愛情は、親に強い親近感を抱かせます。それは時に、子どものことを、自分とは違う価値観を持ち、意思を持っている1人の人間だということを忘れさせることがあります。すると、親が考える「やるべきこと」が、子どもにとってもそうであるかのように錯覚しやすくなり、子ども自身が考えて行動する機会を奪ってしまうこともあります。

子どもが自ら考えて行動することを通して「自己成長」していけるよう、親は子どもの考えていることを深掘りしてみたり、少し離れたところから見守ったりすることができます。大切なことは、子ども自身が「後悔しない選択」ができるようになることなのです。

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記事執筆

クロカワナオキ

医療の分野で20年以上のキャリアを持つ作業療法士。広汎性発達遅滞がある子どもを成人まで育てた2児の父。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる? 親の生き方を考えるための具体的な52の提案』(WAVE出版) はAmazon売れ筋ランキング 【学習障害】で1位 (2025.6.6)。

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