『五味太郎絵本出版年代記展 ON THE TABLE』ギャラリートーク第三回開催!五味太郎さん×作家、博物学者・荒俣宏さんがトーク

この日が初対面というお二人。五味さんは開口一番、「荒俣さんは、カテゴライズされたものについてすごく疑ってらっしゃる。野球で例えるならピッチャー、バッターもやりながら審判までやっていますよね。大谷翔平だって、審判まではやっていない。それは本当に大したものだと思っています」と、独特の比喩で荒俣さんを紹介。「今日は荒俣さんを味わってくださいという感じで、お呼びしました」という言葉通り、2時間強、予測不可能、知的冒険のようなトークが始まりました。

話題は縦横無尽に。
「世直しと世直り」
「言葉は結晶」
「カテゴライズされたものを疑う」
「高等哺乳類と脳」
「パーソナルコンピューターが世界を変えた瞬間」
「戦後、そして民主主義とは」
「個人でやるしかない」
「本は永遠」
一見バラバラに見えるこれらの話題が、不思議と一本の糸でつながっていく―――それがこの対談の面白さです。

「世直し」ではなく「世直り」
鉱物、物質の話から、話は“自然治癒”へ。

荒俣さん(以下敬称略)「日本人は『世直し』という言葉が好きですよね。世の中を良くしようって。でも本当は『世直り』なんです。ほうっておけば自然に治る。「良くしよう」ということはそもそも無理なんですね。」
五味さん(以下敬称略)「なるほど。自然治癒ってことですね」
荒俣「自然治癒が、なんとか信用できる唯一のもの」
五味「その自然治癒に人間の叡智とかは関係ないからね」
荒俣「そうです。全然関係ない。無理なことをやろうとすると、勉強したり文明を作ったりしなきゃいけなくなるんですよ」

「あとはよろしく」という美学

文明を作ってきた人間の「脳」とは何なのか。そんな根源的な問いへと話は深まっていきます。

五味「脳というものが結局よくわからないよね。最終的にはコントロールできないですし」
荒俣「脳はね、考えるための器官じゃなかったんじゃないかと思い始めています」
五味「以前、頭の使い方について描いた本があるんだけど(『これは あたま』岩崎書店 1984年)、頭って逆立ちしたり、帽子をかぶったりするのに使えて、最後にちょっと「考えを巡らす」のにも使える、という話で。だけど実は、俺もわりと頭を使っちゃうタイプだなと思っていて。子どもの頃からそこにちょっと限界を感じていたの。頭いいのよ、俺。結構わかっちゃう。でも賢いからこそ、「頭で考えないようにしよう」ということを考える。だからもう完全に自己矛盾なんだよね」
荒俣「五味さんの作品を見ていて、脳の使い方がわからないような、ちょっと違和感を感じた部分がたくさんありました。各国語でたくさん出版されているので、初めてぶつかったというようなワクワク感もあったんですけど。よく考えてみると、あれは脳の使い方を一回キャンセルするようなところがありますね」
五味「ありがとう。ありがとうなのか?!(笑) でも、絵本という気楽なプラットフォームに出会えたとき、まずものすごくうれしかったんです。本を作るということが面白いなと思ったのは、描き終えたらあとは印刷所や編集者に「あとはよろしくお願いします」と言うしかないところ。俺は答えを出すって興味があまりなくて。「ここまで見えた、まぁあとはよろしく」って言う感じの答えの追い方なんですよね」
荒俣「今日はいろいろ刺激される言葉があります。「あとはよろしく」すごくいい言葉ですね。昨今ね、それは言いづらくなってきているんですよね」
五味「俺が好きなサイエンスの人々はみんなそういう態度ですよね。俺はここまで見た、ここまで発見できた、あとはよろしくという感じじゃないですか」
荒俣「そうですね。それが永遠ではない生き物たちのスタイルなんじゃないですか? 終わっちゃうわけですから」
ニュートンも、ダーウィンも、アインシュタインも――「あとはよろしく」と去っていった。その潔さこそが、有限な生を生きる人間の美学なのかもしれません。

こうして話は多岐に渡りながら、お二人の知識や経験、感覚についてたっぷりお聞きすることができた2時間強のトーク。途中、荒俣さんが持参した18世紀ドイツのは虫類・両生類の図鑑(なんと3000円で入手!)の実物が披露される場面も。客席からは人生論から学問の本質まで、様々な質問が飛び出し、会場全体が思考の実験場となりました。
絵本作家と博物学者という異色の組み合わせだからこそ生まれた、唯一無二の時間。ぜひアーカイブでその「味わい」を体験してください。

アーカイブ配信特設サイト

https://dps.shogakukan.co.jp/gomitaro50

配信予告

【五味太郎ギャラリートーク】
金原 瑞人さんをお招きしてのスペシャルトーク

開催日時:2026年1月16日(金) 18:00~20:00予定
ゲスト:金原 瑞人さん (翻訳家)

ゲストプロフィール
【金原 瑞人|かねはら みずひと】
1954年岡山市生まれ。翻訳家。訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書、ノンフィクションなど660点以上。訳書に『青空のむこう』(シアラー/求龍堂)『さよならを待つふたりのために』(グリーン/岩波書店)『国のない男』(ヴォネガット/中央公論新社)『月と六ペンス』(モーム/新潮社)『文学効能事典』(バーサド&エルダキン/フィルムアート社)『アメリア・エアハート 空飛ぶ野ネズミの世界一周』(トーベン/ブロンズ新社)など。その他、エッセイ集に『サリンジャーにマティーニを教わった』(潮出版社)『翻訳はめぐる』(春陽堂)、日本の古典の翻案に『雨月物語』(岩崎書店)『仮名手本忠臣蔵』(偕成社)など。HPはhttp://www.kanehara.jp/

【ライブ配信】&【アーカイブ配信】についてはこちら

https://dps.shogakukan.co.jp/gomitaro50
イベント終了後、お好きなタイミングでご視聴いただける【アーカイブ配信】のオンライン配信チケットをご購入いただけます。
(配信終了は 2026 年 5 月末日。※アーカイブ配信は、内容を一部カットする場合がございます。)

※本記事は、1 月 9 日開催のトークイベントを再構成したものです。

【会期延長のお知らせ】五味太郎 絵本出版年代記展 「ON THE TABLE」

好評につき、2月2日(月)までの会期が、2月15日(日)まで 延長されることになりました。

会期|2025年12月12日(金) ~ 2026年2月15日(日)
会場|LURF GALLERY 1・2F
時間|11:00 – 19:00
住所|150-0033 東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1
料金|入場バッジ ¥1,500(会場販売のみ)
   ※会期中バッジご提示で何回でもご入場可能
   ※未就学児は入場無料
   ※1Fの展示は入場無料

 
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 『そういうことなんだ』五味太郎著 
2026年3月5日発売 
予約スタート!

文/柿本真希

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