「産後の恨みは一生?」3組に1組が離婚する時代の夫婦を救う! 産後クライシス回避の対話術とは

好きで結婚したはずなのに、子どもが生まれた途端に、パートナーがまるで敵のように見えてしまう――。そんな「産後クライシス」に悩む夫婦は、珍しくありません。とくに0〜2歳の子どもを育てる時期は、夫婦間のすれ違いが深刻化しやすいとされています。

こうした状況に対し、「夫婦関係は気持ちや根性の問題ではなく、仕組みで立て直せるもの」と語るのが、株式会社すきだよの代表・あつたゆかさんです。今回は、忙しい毎日のなかでも無理なく続けられる、産後や子育て期のパートナーシップを支える具体的なヒントについて伺いました。

「新婚だからでしょ?」のひと言から始まった、夫婦関係を“仕組みで支える”挑戦

――あつたさんは現在、パートナーとの「対話アプリ」の開発など、夫婦のパートナーシップを仕組みで支える活動に取り組まれていますが、事業を始めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

あつた ゆかさん(以下、あつたさん):もともとは、私の些細な発信がきっかけでした。2018年に結婚したときにSNSで「夫が大好きだ」とつぶやいたんです。すると、「新婚だからだよ」「子どもが生まれたら変わる」「いつまで言ってられるかな」といったコメントが次々と届きました。

最初は「みんな意地悪で言っているのかな?」と戸惑ったのですが、気になって調べてみると、夫婦についてのさまざまなデータが見えてきたんです。

ーーどのようなデータだったのでしょうか?

あつたさん 日本では、3組に1組が離婚しているうえに、なんと子育て世帯の6割以上が「夫婦関係がうまくいっていない」と感じているそうです。0〜2歳の子どもを育てる時期は、離婚率が特に高いことも分かりました。

こうした現状を知り、「新婚だからだよ」「子どもが生まれたら変わる」といった言葉は、決して意地悪から出たものではなく、多くの人が実際に経験してきた「実感」なのだと気づきました。

株式会社すきだよ代表・あつた ゆかさん

――その気づきが、「夫婦の関係性を支援する」という今の事業につながっていったのですね。

あつたさん:はい。どうすれば夫婦の関係をむしろ「右肩上がり」に育てていけるのか、真剣に考えるようになりました。日本では夫婦関係がなぜ悪くなるのか、どうすれば良くなるのかを、学ぶ機会がほとんどありません。

誰も教えてくれないのであれば、自分でつくろう。感情論ではなく、再現性のある形で続けられる「夫婦関係の仕組み化」に取り組もうと思ったことが、今の活動の原点です。

結婚は“異文化コミュニケーション”――「別々の国の人」という前提

「おおざっぱ王国」と「几帳面王国」──夫婦の違いを前提にした向き合い方

ーーあつたさんご自身も2018年にご結婚されたとのことですが、夫婦関係で苦労されたこともありましたか?

あつたさん: もちろん、たくさんありました。 私たちは、価値観が正反対なんです。私はとてもおおざっぱで、夫はとても細かいので、同棲を始めた当初など……、それはもう大変でした!

たとえば、私が「これで十分きれいになった」と満足している掃除でも、夫からは「全然きれいじゃない」と言われていました。また、結婚式をするかしないか、子どもをどうするかなど、人生の大きな選択でも、あらゆる場面で意見が食い違っていましたね。

ーーご夫婦の性格も考え方も真逆だったんですね!

あつたさん:はい。今では、性格や考え方の違いは「なくすもの」ではなく、「お互いに受け止めるもの」だと考えています。
私は大学で「異文化コミュニケーション学」を学んでいたのですが、あるとき、ふと、「結婚って、異文化コミュニケーションそのものだ」と感じた瞬間があったんです。まったく違う環境で育ってきたふたりが一緒に暮らすのは、ある意味、違う国の人と生活を共にするのと同じだな、と。

そこで私たちは、「私は『おおざっぱ王国』の住人で、夫は『几帳面王国』の住人。だから、ルールや常識が違っていて当たり前」という前提に立つことにしました。

大学在学中にアメリカへ留学していたあつたさん。
アメリカ人大学生の恋愛観や文化を研究してきた経験が、夫婦関係を見つめ直す視点へとつながった。

ーー自分の「普通」が相手の「普通」ではない、ということでしょうか。

あつたさん:まさにその通りです。自分の基準をそのまま相手に当てはめてしまうと、どうしても衝突が生まれてしまいます。大切なのは、自分のやり方を押し通すことではなく、「お互いがなぜそれを大事にしているのか」という目的を分解して話すことだと思っています。

皿洗いは「1時間以内に洗うべき」vs「溜まってから」背景にあった思いとは?

あつたさん:結婚当初、きれい好きな夫は「食べた後は、1時間以内にお皿を洗うのが普通」と考えていました。一方で、当時の私は「お皿が溜まってからでもいいじゃん」と感じていて、その感覚の違いをなかなか理解できずにいたんです。

ただ、話し合って理由をきちんと聞いてみると、夫には「次に料理をするとき、シンクがきれいな状態だと、気持ちよく料理に取りかかれる」という、その先の目的があることが分かりました。それからは「2時間以内ならどう?」とか、「次に料理を始める前までに片付いていればOK」といったように、少しずつお互いが納得できる落としどころを相談できています。

ただ「できる」「できない」を主張するのではなく、行動の背景にある思いに一歩踏み込んで向き合うことが、夫婦関係を整えていくうえでの大切なポイントなのではないでしょうか。

忙しい夫婦こそ「仕組み」に頼るべき! 5分で変わる家庭運営ハック

夫婦の「何度言っても直らない…」を卒業! ドアクローザーで解決した夫婦のすれ違い

――現在も共働きでお忙しい毎日だと思いますが、限られた時間のなかで夫婦関係を整えるために意識していることはありますか?

あつたさん 夫婦で困りごとがあれば、「仕組み」で解決することを心がけています。

実は、私はどうしても家の中でドアを閉め忘れてしまう癖があったんです。夫に何度注意されても、なかなか直らない…。電気のつけっぱなしも同じで、「こまめに消す」ということがどうしても苦手だったので、そのたびに指摘されていました。

そんなとき、夫が「今までずっと続けてきた習慣は、なかなか変わらないよね。それなら、ドアが勝手に閉まる仕組みをつくろう」と提案してくれたんです。スマホで調べてみると、すぐに2,000円ほどで後付けできる「ドアクローザー」が見つかって。それを貼るだけで、長年の悩みがたった5分で解決したんです!

注意や我慢を重ねるのではなく、「仕組み」で解決する視点が、夫婦のすれ違いを減らすコツ。

相手の一日が見えてくる。Slackで可視化する夫婦の情報共有

あつたさん 「仕組み化」が大切なのは、夫婦の情報共有やコミュニケーションも同じです。わが家では、夫婦でビジネスチャットツールのSlackを使い、日中のできごとをこまめに共有しています。

Slack内で「お金」「猫」「旅行」などテーマごとにチャンネルを分け、「仕事でトラブルがあった」「猫の様子が少し気になる」といった些細なできごとも、その都度、つぶやく感じで投稿していくんです。こうしたやり取りを重ねていると、帰宅したときに「今日は大変だったね」と、自然に相手を気づかう言葉が出てくるようになります。

一緒にいない時間があるからこそ、相手の一日や気持ちが「見える」状態をつくっておくことが重要ですね。

――こまめな夫婦の共有があるからこそ、相手の一日を想像しながら向き合えるようになるんですね!

あつたさんそうですね。わが家では、できるだけ一緒に夕飯を食べる時間も大切にしています。ご飯を食べながら、日々の些細なできごとを顔を合わせて話すようにしているんです。

まとまった時間を取る必要はありません。ご家庭の状況に合わせて、1日5分、寝る前や週末だけでも十分だと思います。会話を積み重ねながら、もし違和感を覚えたときには、その都度こまめに解消していく。こうした積み重ねが、大きなすれ違いを防ぐ、いちばんのコツだと感じています。

産後クライシスの正体は、見えなくなっていた「相手の裏側」の蓄積⁉

ーー「産後クライシス」については、どのような相談が多いのでしょうか。

あつたさん 多いのは「妻が冷たくなった」という夫側の戸惑いと、「夫が子育てを助けてくれなかった」という妻側の絶望感ですね。産後は、睡眠不足やホルモンバランスの変化も重なり、心身ともに余裕がなくなりやすい時期です。その中でうまく協力できない状態が続くと、パートナーが一気に「味方」ではなく「敵」に見えてしまうことがあります。

ーー印象に残っている相談事例があれば教えてください。

あつたさん 共働きのご夫婦で、妻が「自分ばかりが子どもの看病のために仕事を早退している」と、夫に強い怒りを抱えていたケースがありました。「まったく協力してくれない」「父親失格ではないか」といった言葉が出てしまうほど、追い込まれていたのです。

子どもの看病や家事の負担が偏ることで、夫婦関係に不満を抱えてしまうケースも多い。

そこでまず取り組んだのが、お互いのスケジュールを可視化し、冷静に話し合うことでした。もともと夫は営業職で、どうしても外せない商談が多い。一方、妻は社内業務が中心で、比較的スケジュールの調整がつきやすい働き方をしていました。
その結果、知らず知らずのうちに「子どもの対応は妻が担うもの」という役割分担が固定化されていたのです。

――その役割分担は、本当に「仕方のないもの」だったのでしょうか?

あつたさん:実際は、そうではありませんでした。夫側の予定を細かく分解していくと、「社内ミーティングなら調整できる」「この日、この時間帯なら都合がつけられる」といった、これまで見えていなかった部分が少しずつ浮かびあがってきたのです。

それまでは「夫は絶対に無理」と思い込んでいましたが、必ずしもそうではありませんでした。問題は、互いの状況が十分に共有されていなかったことだったのです。だんだんと「今日は俺が迎えに行くよ」「この日はお願いしてもいい?」といった声かけが生まれ、少しずつ、協力し合える関係へと変わっていきました。

言いにくい本音もやさしく届ける「AIによるサポートアプリ」の開発も

――アプリの開発など、夫婦を支える新しい取り組みも進んでいるそうですね!

あつたさん 現在、AIがふたりの関係をサポートするアプリ「Riamo(リアモ)」の開発に注力しています。いくつかの質問に答えるだけで、お互いの性格や価値観の傾向を分析できるほか、「これ、一緒にやりたいね」と話していたことを、気軽に残しておけるメモ機能も備えています。

――AIが搭載されていることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。

あつたさん:夫婦で直接は言いづらいことも、AIやキャラクターが入ることで、やんわりと伝えられるようになります。また、そのときどきの状況に応じて、会話のヒントや伝え方のアドバイスを示してくれるのも特徴です。

人ではなくデジタルな存在が介在することで、感情的なぶつかり合いが起きにくくなり、結果として関係が整っていくーー。こうした変化を感じているご家庭が、少しずつ増えています。

忙しい子育て期こそ、夫婦で「分かち合う」時間を

――最後に、HugKumの読者へメッセージをお願いします。

あつたさん:子育て期間中は、特に忙しく、体力的にも精神的にも負担がかかりやすい時期だと思います。睡眠不足や生活の変化が重なり、気持ちがすり減ってしまうことも、決して珍しくありません。
しかし、喜びや大変さをパートナーと分かち合えるかどうかで、子育ての景色は大きく変わります。

「一人で抱えている」と感じるのか、「一緒に乗り越えている」と感じられるのか。その違いは、とても大きいです。だからこそ、日々のできごとを、少しずつでも夫婦で共有する時間を大切にしていってほしいと思います。

――夫婦の関係が調うことは、子どもにとっても大きいですよね。

あつたさん:そうですね。子どもは、親が思っている以上に、日々の空気や関係性を感じ取っています。だからこそ、つい後回しにされがちな夫婦の対話も、実は子どもの安心感や、自分自身の暮らしの充実につながっているのではないでしょうか。そして、たまにはママやパパにも、ほっと息を抜ける時間を意識的につくってもらえたらと思います。
ぜひ、それぞれの夫婦の形で、豊かな関係が育っていくことを願っています。

著書をチェック

あつた ゆか クロスメディア・パブリッシング 1,628円(税込)

共働きのカップル・夫婦が、対話を通して家庭と仕事の両立を目指すためのヒントをまとめた一冊。


理想のライフやキャリアを実現するには、パートナーとの協力が欠かせません。
12万人が共感したメソッドから見えてくるのは、ふたりが「最高のチーム」になるための考え方と実践法。
すれ違いや不満を「対立」ではなく「対話」に変え、お互いの気持ちを伝え合いながら、納得できる答えを見つけていく方法を、具体例とともにやさしく教えてくれます。

お話を伺ったのは

あつたゆか 株式会社すきだよ 代表取締役

株式会社すきだよ代表取締役。「誰もが大切な人とずっと幸せでいられる社会をつくる」をビジョンに、家族・パートナーシップに関する社会課題の解決に取り組む。夫婦・カップルの対話ツール「ふたり会議」や、AIカップルアプリ「Riamo」の開発を通じて、ふたりらしい生き方と関係性を支援。Forbes Japan「今注目すべき“世界を救う希望”100人」に選出され、東洋経済「すごいベンチャー100(2025年最新版)」にも名を連ねるなど、その取り組みは高く評価されている。TBS・フジテレビ・ABEMAをはじめ、日経ウーマン、日経新聞など多くのメディアで紹介され、注目を集めている。

◆AIカップルアプリRiamoは こちら

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構成・文/牧野 未衣菜

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