
「おまけ」と聞くと何を思い浮かべる?
みなさんは「おまけ」と聞くと、何を思い浮かべますか。私はグリコのおまけです。グリコのキャラメルに付いていたおもちゃです。みなさんの世代ですと、ロッテのビックリマンチョコのシールでしょうか。シールといえば、1960年代に小学生だった私は、鉄腕アトムシールの付いた明治のマーブルチョコレートを思い浮かべます。

それはさておき、みなさんはこの「おまけ」ってどういう意味の語か知っていますか?
もともとは、商品の値を安く売るという意味の語です。最近はスーパーで買い物をすることが増えて、お店の人とやり取りをしながら商品を買うことはほとんどなくなってしまいました。でも、昔ながらの商店街などでは、今でも「おまけしちゃうよ」などという威勢のいい声が聞こえてくることがあるでしょう。その「おまけ」です。
商品につけられた「おまけ」は、「負け」から派生した言葉
「まける」の「まけ」は「負け」ということで、自分が相手よりも劣った立場になるという意味から生まれた語です。商品の値段の場合は、お客に対して自分の方が劣った立場になる、圧倒されるという意味から、安くするという意味になったのです。商品に付けられた「おまけ」は、その「まける」を名詞にした語です。値引きすることから、のちに値引きの代わりに、景品を添えるという意味になったのです。
商品に「おまけ」が付くようになったのがいつからなのか、はっきりとはわかっていません。江戸時代に開店や大売出しのときに「景物(けいぶつ)」と呼ばれる本が配られたという記録がありますが、そのあたりだろうと考えられています。
「景物」とは「景品」のことです。「景物」となった本の最初のものは、1792年(寛政4年)に山東京伝(さんとうきょうでん)が日本橋の紅問屋玉屋の開店記念に書いた『女将門七人化粧(おんなまさかどしちにんけしょう)』だといわれています。京伝のことは以前、「善玉」「悪玉」という語のもとになった『心学早染艸(しんがくはやぞめぐさ)』という本を書いたという話を書いたことがあります。当時の人気作家だったのです。景物本は京伝だけでなく、当時の他の人気作家も書いています。
「おまけ」が景品の意味で使われるようになったのは、大正時代から
「おまけ」という語自体は、江戸時代に使われていました。でもいずれも安く売るという意味や、「話におまけをつける」のように何かのついでに付け加えることという意味ばかりで、景品の意味では使われていませんでした。どうやら「おまけ」が景品の意味で使われるようになったのは、大正時代からのようです。
大正から昭和にかけて、江崎商会(現江崎グリコ)や森永製菓が、キャラメルに子ども向けのおもちゃを付けて販売するようになりますが、このおもちゃが「おまけ」と呼ばれて、「おまけ」という語が広まったようです。
お菓子に付いている「おまけ」って、なぜか懐かしい思いがしませんか。たかが「おまけ」されど「おまけ」で、「おまけ」は今でも進化しているようです。お子さんと、昔の「おまけ」と今の「おまけ」の違いといった話をするのも楽しいかもしれません。
記事監修

辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。文化審議会国語分科会委員。著書に『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)、『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『やっぱり悩ましい国語辞典』(時事通信社)が好評発売中。
