【前編】シンガポールでの生活や子どもの英語事情などの話はこちらから
目次
やり残していた資格に、産後もう一度向き合うときが来た
――国家資格「賃貸不動産経営管理士」を受験しようと思ったきっかけはあったのでしょうか?
福田萌さん(以下、福田さん):最初のきっかけは、「日本の資格・検定」のサイトを運営している企業から、「こういう資格があるんですが受けてみませんか?」とお話をいただいたことでした。昨年の4月頃だったと思います。
ちょうどその頃、仲のよかった友人が母国に帰ってしまって…。時間があれば会っていたような友達だったので、急にぽっかり時間ができたというか、「さてどうしようかな」と思うことが増えていた時期でもありました。
下の子も保育園に通い始めて、平日の昼間に少し余白の時間ができて。「何かやりたいな」「勉強したいな」と思っていたタイミングに、ちょうどそのお話をいただいたんです。
不動産系の資格と聞いて、やっぱり自分の中でずっと引っかかっていた「宅建」のことがあって。いつかきちんと向き合って取りにいかなきゃいけない、どこかで回収しなきゃいけないもののように感じていたんですよね。なので、宅建の兄弟のような国家資格であるという「賃貸不動産経営管理士」受験が、いずれ宅建へとつながればいいなと思い決めました。
――宅建への思いが、ずっと心の中に残っていたんですね。
福田さん:そうなんです。2010年に一度受験して不合格だったのですが、その後は結婚や出産があり、なかなか向き合う時間が取れなくて。
「自分の人生に、やり残していることはないかな」と考えたときに、やっぱり宅建が思い浮かぶんです。置きっぱなしになっている“忘れ物”のような感覚。だからもう一度チャレンジできたらしたいな、という気持ちはずっとありましたね。
これから先のことは分からない。だからこそ自分の軸を持ちたい
――子育てに向き合う日々のなかで、「このままお母さんで終わってしまうのかな」と感じる…という声もよく聞きます。福田さんも、そうした思いを抱いたことはありますか?
福田さん:私自身、「ママズオンラインサロン」というママたちがおしゃべりできる場を運営しているのですが、本当にいろいろな方がいらっしゃって。子育てに専念するため会社員を辞めた方もいれば、子育てが一段落して再就職した方もいて、それぞれのタイミングで次の一歩を踏み出しているんですよね。
そういう姿を見ていると、「お母さんで終わりじゃないんだな」と自然と思えるようになりました。同時に、現実として再就職の難しさや、仕事のブランクがあることの大変さも感じて。だからこそ、自分の中にも何か軸を持っておきたい、という気持ちはありました。
▲福田萌さん公式インスタグラムより
――芸能のお仕事に力を入れていくという選択肢もあったと思いますが、あえて資格取得という道を選ばれたのは?
福田さん:芸能の仕事もすごくやりがいがありますし、続けていきたい気持ちはもちろんあります。ただ、どうしてもオファーを待つ仕事でもあるので、タイミングに左右される部分があるんですよね。
コロナ禍を経て働き方もずいぶん変わりましたし、これから先どうなるかは本当に分からないですよね。ずっと夫婦が今の形でいられるかも分からないですし、病気や環境の変化もあるかもしれない。そう考えると、どんな状況でも柔軟でいられるように、いくつか軸を持っておくことは大事かなと感じています。
シンガポールに移住して5年ほどたちましたが、以前はまさか自分が海外に住むとは思ってもいなかったので、5年先、10年先がどうなっているかなんて本当に分からないなと。それはもう、身をもって実感していることでもあります(笑)。
母になってからの「勉強」は、無心になれる贅沢な時間
――実際に勉強を始めてみて、集中するのは大変ではありませんでしたか?
福田さん:今回は資格サイトの方が伴走してくださる形だったので、結果を報告するときに「これで落ちたら恥ずかしいぞ」という気持ちがありました(笑)。でも、半分眠りながらでも書き続けたりするのって、すごく久しぶりで。それでもやっぱりやりたいんだな、という気持ちが自分の中にずっとあったのは、学生の頃とは違って誰にも強制されていないからだと思います。
それに、「明日、子どもが熱を出すかもしれない」と思うと、今できることは今やっておこうという気持ちもありました。
――お母さんならではの感覚ですね。
福田さん:そうですね。今日の夕飯のことや、子どもや夫のことを一切考えずに集中できる“自分のための時間”って、すごくうれしいものなんだなと改めて思いました。お気に入りのカップにコーヒーを入れて、音楽を聴きながら勉強する時間は、私にとってちょっと贅沢で、癒やしの時間。
勉強だけじゃなくて、編み物をしているときなんかもそうなんですが、昔から無心になれる時間が好きなんですよね。

大人の学び直しは、実体験が武器になる
――逆に、集中力が続かない、記憶が定着しにくいなど、年齢による変化を感じることはありませんでしたか?
福田さん:ありました、ありました(笑)。「きっと明日には忘れている」と思いながら勉強していました。
ただ、昔のように一夜漬けで詰め込むような短期記憶は難しいと思うんですが、一度理解して自分の中に落とし込めば、長期記憶として残る感覚はありました。
今回の試験は法律や制度の内容も多かったのですが、自分の生活に置き換えて考えるようにしていて。実際の住まいや日常の場面を思い浮かべながら、「こういう状況のときはこうなるのか」と自分の中でストーリーにして覚えていくようにしていました。
昔のように暗記中心の勉強というよりも、自分の生活やこれまでの経験に重ねながら理解していけるのは、大人になってからの学び直しならではのよさなのかもしれません。
「いつでも聞けて、恥ずかしくない」ChatGPTを家庭教師に
――学生の頃にはなかったけれど、今だからこそ活用できたものはありますか?
福田さん:ChatGPTです。これまでも、例えば子どもが熱を出して学校を休むとき、「こういう事情で欠席します」というメールを先生に送りたいと伝えると、そのまま送れる英文を作ってくれたりするので、日常的に相棒のように使っていました。
資格の勉強を始めてからは、「この範囲を○月の試験までに終わらせたいんだけど、どういうスケジュールを組めばいい?」と相談。すると「まずは2か月でここまで終わらせましょう」「1日5単元ずつ進めましょう」と、かなり具体的な学習計画を立ててくれて。
そこからはChatGPTが相棒兼、家庭教師です(笑)。「この単語の意味が全然分からない」「法律用語が難しすぎて日本語が理解できない」と思ったら、「中学2年生でも分かるように説明して」とお願いすると、驚くほどかみくだいて説明してくれるんです。
――家庭教師として使うというのは新しいですね。今の時代ならではだなと感じます。
福田さん:ChatGPTだと、「こんなこと聞いて恥ずかしいかな」とか「何度も聞いたら迷惑かな」と思う必要が一切ないんですよね。どんな初歩的なことでも遠慮なく聞けるので、壁打ち相手としてすごく助けられました。
AIについてはいろいろな意見があると思いますが、これからはもうAIありきの時代になるのは間違いないと思っていて。親である私たち自身がまず使ってみることで、子どもたちとも「どう使っていく?」と一緒に考えるきっかけにもなるんじゃないかなと思います。
▲福田萌さん公式インスタグラムより
お母さんは「お母さんの役割」だけじゃなく、もっと自由に生きていい
――勉強している姿を見せることも、お子さんにとってよい影響がありそうですね。
福田さん:そうかもしれません。何もしていないと、性格上つい子どもに口を出したくなってしまうんです。なので、自分への“口止め”の意味もあって勉強していたところもあります(笑)。自分が集中していると、自然と過干渉が減るんですよね。
それに、「お母さんはいつもお母さんをしているわけじゃないんだよ」というのも、どこかで伝えたかったのかもしれません。呼べばすぐに何かしてくれる存在ではなくて、お母さんも勉強して、試験に挑戦して、受かったり落ちたりする。そういう姿を見せることが、子どもたちにとってもいちばん自然な背中の見せ方なのかなと感じています。
――お母さんでも、まだまだ学べるものなんですね。
福田さん:脳もきっと衰えてきているし、正直資格取得なんて無理なんじゃないかと思っていたんです。子どもにも邪魔されるだろうし、どうせできないって、どこかで自分自身を諦めていたところがあって…。
でも、やってみると意外とできた(笑)。自分に対する信頼度が少し上がったように思います。
――自信にもつながりますよね。
福田さん:そうですね。まだ人生は長いですし、これから先、何にでもなれると思うと気持ちも明るくなります。お母さんという役割はもちろん大切ですが、子どもが成長していくと少しずつ手も離れていきますし、時間にも余白が生まれてくる。そうなったときに、また新しい自分でいられるのかもしれない、ということを今回の学び直しを通して実感しました。
――海外での子育てや資格取得など、様々な経験を重ねてきた今、これからの働き方や学びについて思うことはありますか?
福田さん:海外に出て、本当にいろいろな方と出会ってきましたが、皆さんとても自由で。50歳で恋愛して結婚したという人もいれば、子育てを全力でやりたいからといって、起業した会社を手放したという人もいて。そういう話を聞くたびに、もっと自分の好きなように生きていいのかもしれないと思えるようになりました。
焦らなくて大丈夫。何かを始めるタイミングは人それぞれ
――昨年6月に節目の40歳を迎えられてから、心境の変化はありましたか?
福田さん:30代の頃は、40代って未知で少し怖いイメージもあったんです。でも実際に迎えてみると、自分の中のヨロイがふっと脱げて、軽やかになったような感覚があって…。
体力が落ちるのではとか、体調を崩しやすくなるのではと心配もしていたのですが、思っていたより元気で(笑)。だからこそ、この軽やかで元気な自分を、これから何に使っていこうかと考えるようになりました。
――同年代のママの中にはキャリアに悩んでいたり、「何か始めたいけれど時間がない」と感じていたりする方も多いと思います。そんなママたちへメッセージをいただけますか?
福田さん:私自身、第二子が生まれた頃は体力的にも余裕がなくて、新しい学びや働くことに対してかなり後ろ向きでした。このまま自分の人生は静かに閉じていくのかなぁなんて。
でも第三子が生まれた頃から少しずつ元気になって、「まだやれるかもしれない」と思えるようになりました。
焦らなくても大丈夫。自分の体と心の声を聞きながら進んでいくと、どこかで「やってみたい」と思える瞬間がきっと訪れるはずです。そのタイミングを、大切にしてほしいなと思います。
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お話を伺ったのは…
1985年6月5日生まれ、岩手県出身。横浜国立大学卒業。大学在学中から芸能活動を始め、情報番組のアシスタントなどで活躍。2012年にオリエンタルラジオ・中田敦彦氏と結婚し、2013年に第一子女児、2017年に第二子男児、2023年に第三子男児を出産。現在はシンガポール在住の3児の母として子育てをしながら、タレント活動のほか母親同士がつながるオンラインサロンを主催するなど幅広く活動中。「賃貸不動産経営管理士」「ファイナンシャルプランナー2級」「防災士」など資格取得にも積極的に取り組む。
著書に『「中田敦彦の妻」になってわかった、自分らしい生き方』(講談社)。
Instagram:@fukuda.moe
取材・文/篠原亜由美
