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ヘルパーと共働きが当たり前。シンガポールの子育て事情
――シンガポールへ移住してまもなく5年。すっかり生活にも慣れた頃かと思いますが、3人のお子さんとの毎日はどんなふうに始まるのでしょう?
福田萌さん(以下、福田さん):平日は6時半くらいに起きて、まずは2歳の末っ子のおむつ替えや着替えからスタートします。上の子は12歳と9歳なので、「準備してね」と声をかけながら、7時ごろには家族みんなで朝食。7時半に家の前にスクールバスが来るので上の2人を送り出して、そのあと夫と私と下の子の3人で路線バスに乗り、保育園に送り届けるという流れです。
――朝食の準備に、掃除や洗濯…お子さんが3人いると、朝はかなり慌ただしそうですね。
福田さん:そうですね。でも実は昨年9月から、住み込みのヘルパーさんをお願いしていて、一緒に生活しているんです。食事の準備から子どもの送迎、日々の家事まで、ヘルパーさんと私で“2人1組のチーム”のような感覚で回しています。
――シンガポールでは、住み込みのヘルパーさんを雇うことは割とあることなのですか?
福田さん:はい。日本では、住み込みでヘルパーさんを雇うと「すごく特別」「余裕のある家庭」というイメージを持たれるかもしれませんが、シンガポールではごく一般的なんです。女性の社会進出が進んでいて共働きが当たり前なので、家事や育児をサポートしてくれるヘルパーさんと一緒に暮らす家庭がとても多いんですよ。
私も最初から抵抗がなかったわけではありません。でも、昨年は夫が日本にいることが多くて、その期間家の中の大人が私ひとりに。ちょうどそのとき、長女がインフルエンザにかかってしまったんです。もし私まで倒れたら、本当に誰もいなくなる…と思ったら急に不安になって。「これはもう、お願いしたほうがいいかもしれない」と決断し、ヘルパーさんの派遣事務所に行ってマッチングした方と面接をして、すぐに来てもらいました。

――ヘルパーさんと一緒に暮らす生活には、もう慣れましたか?
福田さん:はい、すっかり慣れました。逆に「3人も子どもがいて今まで雇っていなかったのが不思議」とまわりに言われます(笑)。
家庭によってはお願いしたヘルパーさんが合わなくて別の方に変えることもあると思いますが、たまたま初めてのヘルパーさんが運よく相性のよい方で。子どもたちもとてもなついていて、今ではもう家族のような存在です。一時帰国で日本に行くときも一緒に来てもらって、予定がある日は下の子だけみてもらうこともあります。
本当に助けられていますし、何より私のことを肯定してくれる、心強い存在でもあります。
「ちゃんとやらなきゃ」は、自分が作っていたプレッシャー
――ヘルパーさんの話を聞くと、日本とはやはり違うなと感じます。求められる母親の役割にも違いを感じますか?
福田さん:こちらで保育園の送り迎えに来ているのがお母さんなのは、ほとんどが日本人だけのように感じます。外国の方もたくさん住んでいるのですが、他の国の家庭では親以外の人が送り迎えをしていることが多くて。仕事をしているお母さんやお父さんがいて、日中はヘルパーさんや祖父母が子どもをみる、というのがむしろ当たり前なんですよね。
それを見ているうちに、日本では「お母さんがやって当然」という空気の中で、自分も無意識にそこに合わせていたのかもしれない、と感じるようになりました。子どもに寄り添う時間はもちろん大切。でもそれだけが母親の役割ではないのかもしれない、と。
海外に出たことで、自分の中の常識が少しずつ揺さぶられていった感覚がありました。
――日本でも共働き家庭は増えていますが、それでもどこか“お母さんなんだからちゃんとやらなきゃ”という空気はありますよね。例えば食事は手作りがいい、とか。
福田さん:ありますよね。私も日本にいた頃は、「冷凍食品を使う私はちょっと手抜きかな」、「やっぱり手作りがいいよね」という思い込みがどこかにあった気がします。でもシンガポールでは、お母さんは忙しいことが前提なので、冷凍食品も充実していますし、家族で外食するのも自然なことなんです。

――「ちゃんとやっていないと思われないかな」と、家族の目を気にしてしまうお母さんも多いと聞きます。
福田さん:夫は私の家事について、あまり興味がないというか(笑)。昔から細かく口を出すタイプではなかったので、その点はありがたかったですね。ただ振り返ると、周囲の目というより、自分で自分にプレッシャーをかけていた部分が大きかったのかもしれません。「ちゃんとやらなきゃ」と思っていたのは、実は自分自身だったのかも…と、今は感じています。
3人育児は、毎日が“時間割パズル”
――日本にいる頃と比べて気持ちに余裕が生まれたとはいえ、3人育児ならではの大変さを感じる瞬間はありますか?
福田さん:やっぱりいちばん大変なのは、スケジュール管理ですね。3人それぞれ予定が違うので、習い事にしても「下の子を連れていくのか、夫がみている間に上の子を送るのか」と、その都度考えなければいけない。塾や習い事の終わる時間もバラバラなので、「今日の夕食は何時スタートにしよう」「この子だけ先に食べさせて、オンラインレッスンに間に合わせよう」など、時間の組み立てが本当にパズルみたいなんです。
毎日、頭の中でスケジュールを組み替えている感覚ですね。
――確かに、人数分の予定を管理するだけでも大仕事ですよね。
福田さん:そうなんです。あとは単純に移動も大変で。日本に一時帰国するときも、もう“ご一行様”みたいな感じです(笑)。タクシー1台では乗り切れなかったり、ホテルも2部屋取らなきゃいけなかったり。大変は大変なんですが、そこはもう割り切って、みんなで協力するスタイルにしています。
「これ持って」「そこ押さえて」と、それぞれに役割を渡しながら動く感じですね。気づけば自然とチームのようになってきました。
――逆に「子どもが3人いてよかった」と感じることもありますか?
福田さん:歳の離れた弟なので、上の2人がとても優しいんです。特にいちばん上の娘は、本当に“小さなママ”みたいな存在。もちろん勉強もありますし、頼りすぎるのはよくないと思っていますが、最初の子育てのときとはまた違う心強さがあります。
3人で自然と助け合う空気が生まれているのは、兄弟がいるよさだなと感じます。
▲福田萌さん公式インスタグラムより
海外育ちでどう変わる? きょうだい3人の言語事情
――海外での子育てという意味では、語学面も気になります。お子さんたちの英語の状況についてはどのような感じですか?
福田さん:長女は7歳でシンガポールに来て、今12歳。日本語と英語がちょうど半分ずつ、という感覚でバランスよく話しています。
真ん中の長男は4歳で来て今9歳なので、英語がかなり優位になっています。YouTubeや本もほとんど英語ですし、友達も外国の子が多いので、生活の中心が英語なんですよね。このまま英語の人になっていくのかな、という感覚もあります。
――なるほど。では、生まれたときからシンガポールで育っている、いちばん下のお子さんは?
福田さん:次男は2歳なので、ちょうど言葉がどんどん増えてくる時期なんですが、英語のほうが先に出てくることも多いです。昨日も私の鼻をつかんで「ノーズ、ノーズ」って(笑)。家では家族みんな日本語を話していますが、保育園や日常生活の中で自然と英語が入ってきているんだなと感じます。
同じ家庭で育てていても、シンガポールに来たタイミングによってここまで違うんだな、と実感しています。
海外移住で変わった、夫婦の距離感
――シンガポールに移住されて、ご夫婦の関係性や過ごし方にも変化はありましたか?
福田さん:日本にいるときは、仕事の面でも夫が先輩で、年齢も収入も全て夫のほうが上だったので、なんとなく夫がリーダーで、私がサポート役といった雰囲気でした。けれどシンガポールに来てからは、ある意味で、“同じスタートライン”に立ったような感覚があって。むしろ留学経験のある私のほうが、最初は少し頼られているかも? と思ったほどです。
日本にいた頃よりも、お互いに気持ちや時間に少し余裕が生まれたからでしょうか。下の子を保育園に送ったあと、夫婦でカフェに立ち寄るのが日課に。そこで、最近考えていることや仕事のこと、子どもたちのことなどをゆっくり話す時間を持つようになりました。
――素敵ですね! ご夫婦の時間は、朝のカフェ以外にもありますか?
福田さん:夜は一緒にドラマも観ています。今はNHKの連続テレビ小説『ばけばけ』を楽しみにしていて、ひとつ観終わると「次はこれを観ようか」と話しながら、なんとなく続いています。特別なことをしているわけではないんですが、そういう小さな時間が、とても幸せですね。
何かを変えたくてここに移住したわけではなかったのですが、結果として、夫婦の関係も家族の関係も、以前よりずっと心地よくなったと感じています。そして私自身も、シンガポールで日々を過ごすうちに「母だけじゃない道もあるのかもしれない」と、少しずつ考えるようになりました。
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海外での生活・子育てを経て、「母だけじゃない自分」にも目を向けるようになったという福田さん。インタビュー【後編】では、約15年ぶりの資格試験に取り組んだ理由や、子育てと両立しながら学び続けた日々、そしてその経験がもたらした心境の変化について伺います。
【後編】の資格取得の勉強や・学びなおしについてのお話はこちらから
お話を伺ったのは…
1985年6月5日生まれ、岩手県出身。横浜国立大学卒業。大学在学中から芸能活動を始め、情報番組のアシスタントなどで活躍。2012年にオリエンタルラジオ・中田敦彦氏と結婚し、2013年に第一子女児、2017年に第二子男児、2023年に第三子男児を出産。現在はシンガポール在住の3児の母として子育てをしながら、タレント活動のほか母親同士がつながるオンラインサロンを主催するなど幅広く活動中。「賃貸不動産経営管理士」「ファイナンシャルプランナー2級」「防災士」など資格取得にも積極的に取り組む。
著書に『「中田敦彦の妻」になってわかった、自分らしい生き方』(講談社)。
Instagram:@fukuda.moe
取材・文/篠原亜由美
