子どもの「脳の成長が止まる」1日のゲーム時間とは? 富山大・山田正明先生が語るネット・ゲーム依存の危険性

娯楽目的のゲームやネットを与えると、親の想像を超えるネガティブな影響が子どもたちの脳に生じてしまうと語る、富山大学医学部准教授の山田正明先生。ネット・ゲーム依存が子どもたちの脳におよぼす危険な影響を教えてもらいました。

ネット・ゲームを際限なく続けてしまう状態はアルコール依存と同じ

山田先生:大人であれば、アルコール、たばこ、パチンコなどの依存症が知られています。

それらの依存物と比べると、ゲームやネットなどは大した影響がないと思ってしまいがちですが、娯楽を目的としたインターネット(SNSや動画)やインターネットに接続するゲームには「依存症アルゴリズム」と呼べるような仕組みが組み込まれているため、アルコールやたばこに劣らない影響力があります。

楽しい、疲れない、飽きない、この3つ全てを満たす行動が「依存物(専門的には嗜癖、しへき)」となります。

WHO(世界保健機関)でも2019年に、ゲーム依存は治療が必要な病気であると認定されました。それほど、ネット・ゲームは危険な依存物なのです。

社会的・理性的な判断をする脳の前頭前野が萎縮する

では、子どもが、ネット・ゲーム依存に陥ると、どうなってしまうのでしょうか。

山田先生:ネット・ゲーム依存が進行すると、社会的・理性的な判断をする脳の前頭前野が萎縮(いしゅく)したり前頭前野の活動が落ちたりします。

依存状態は、子どもたちの場合、脳の発達にも悪影響を及ぼすんです。仙台市の子ども(5-18歳)を対象に東北大学が行った調査が参考になります。

子どもの脳が3年間で、どの程度の体積変化を起こしたか(成長したか)を、1週間のネット利用日数ごとに被験者を分けて調べてみたところ、『ほぼ使わない』と答えたグループの子どもたちは脳が50cc増加していたのに対し、『毎日使う』と回答したグループの子どもたちは脳の体積に変化がありませんでした。

つまり、娯楽目的でゲームやネットばかりをやっていた子どもたちは3年間で脳が成長していなかったのです。

1日2時間以上のネット・ゲーム利用は依存につながりやすくなるというエビデンスがあります。平日は、娯楽のネット・ゲーム利用を1~2時間にとどめ、ノーメディアデーも週2日は必要です。

母親のネット時間が2時間以上の場合は要注意

ネット・ゲームに際限なく手を伸ばしてしまいがちな子どもを依存状態にさせないためには、どのような対策が効果的なのでしょうか?

山田先生:生活習慣を正して、メディアやインターネットの時間を減らそうという考え方は間違いではありません。しかし、最も効果的な対策は他にあります。

富山県高岡市内の小学生約2,000人を対象に、子どもの長時間のメディア利用が、他の生活や家庭環境とどう関係しているかを分析してみました。

その結果、遅い就寝、運動不足、児童の朝食欠食などの生活習慣以上に、子どもの長時間のメディア利用と強い関連を示す要因が他に存在していると分かりました。

その要因とは母親のネット時間です。母親のネット利用が2時間以上の家庭には、子どもの長時間メディア利用に最も強い関連性(オッズ比=起こりやすさの倍率2.55)が見られました。

次いで、メディア利用のルールが決まっていない家庭(オッズ比2.41)、父親が2時間以上ネットをしている家庭(オッズ比2.35)と結果が出ています。簡単に言うと、両親のネット時間が一番の問題なのです。

参考までに、他の要因としては、男子である(オッズ比2.16)、母親が常勤(オッズ比1.96)、児童自身の朝食欠食、運動不足、遅い就寝(オッズ比1.79-1.88)といった結果が上位に並んだそう。

【チェックリスト】ネット・ゲーム依存症が強く疑われる子どもの特徴

ネット・ゲーム依存症の全国調査に使われているアンケート内容が以下になります。お子さんと一度目を通し、自覚の有無に応じて○×をメモしてみてください。〇の数で、依存症の疑いが判定できます。

(1) ネット・ゲームを利用していないときもネットのことを考えている 

(2) より多くの時間、ネット・ゲームをしないと満足できない 

(3) ネット・ゲームの利用時間をコントロールしようとしてもうまくいかない 

(4) ネット・ゲーム利用を控えようとすると、落ち着かなくなったりイライラしたりする 

(5) もともと予定していたよりもネット・ゲームを長時間利用してしまう 

(6) ネット・ゲームのせいで、家族・友人との関係が損なわれたり、仕事や勉強などがおろそかになったりしそう 

(7) ネット・ゲームを利用している時間や熱中している度合いについて家族や友人にうそをついた経験がある 

(8) 現実から逃避したり、落ち込んだ気分を盛り上げたりするためにネット・ゲームを利用している

この項目のうち、〇が5つ以上あればネット・ゲーム依存症が強く疑われ、3~4個でも予備軍と言われているそうです。

お話を伺ったのは

山田正明 富山大学医学部疫学健康政策学准教授

社会医学系専門医協会指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。北陸学校保健学会優秀口演賞、富山県医学界優秀賞銀賞、日本公衆衛生学会優秀口演賞、第40回とやま賞など、受賞歴も多数。

取材・写真・文/坂本正敬

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