教師・保育士・保護者が「すれ違っている」? 三者合同アンケートで見えた、子育てをめぐる認識のギャップとは

小学館が運営する『みんなの教育技術』『ほいくる』『HugKum』の三媒体が合同で実施した、教育をめぐる大規模アンケートの結果が明らかになりました。小学校教師226名、保育者132名、保護者549名の合計907名が回答したこの調査では、子育てに関わる三者が、互いについて「思い込み」や「すれ違い」を抱えている実態が浮き彫りになっています。数字が語る意外な事実を、分かりやすくお伝えします。

「入学前に育てたい力」は、教師と保育士でこんなに違った

まず驚くのは、小学校の教師と保育士が考える「入学前に育ってほしい力」の優先順位が、かなり異なっているという点です。 小学校の教師が最も多く選んだのは「身辺自立(着替え・片付けなど)」で88.1%。次いで「指示を聞いて行動する力」が67.3%と続きました。

一方、保育士が最重視したのは「感情を言葉で表現する力」の70.5%で、「指示を聞いて行動する力」68.9%がそれに続きます。 「友だちと協力する力」については、保育士が47.7%で選んだのに対し、教師は25.2%と、実に22.5ポイントもの開きがありました。

教師は規律や生活自立を重視し、保育士は感情や人間関係の基盤を大切にしているという、教育観の違いがはっきりと表れた結果です。 また、「ひらがなの読み書き」や「数の概念」といった学力系の項目は、教師・保育士ともに一桁台にとどまりました。「教師は園に学力を期待している」というイメージは、実態とはかなり異なると言えます。

「保護者は学校のせいにしている」は本当か? 互いへの不信の正体とは

本調査で最も注目すべき発見のひとつが、教師と保護者の相互認識のズレです。 教師に「保護者は子どもの学習のつまずきをどこに原因があると思っていると考えますか」と聞いたところ、「主に学校」と答えた教師が57.5%にのぼりました。つまり、教師の約6割が「保護者は学校のせいにしている」と推測しているのです。

ところが、保護者に「家庭が担うべき教育的役割」を聞くと、「情緒面の支え」81.8%、「しつけ」75.2%、「学習習慣」61.4%と、家庭の役割を幅広く自覚していることが分かりました。そして「学校任せでよい」と答えた保護者は、549名中わずか4名、0.7%にすぎませんでした。 さらに保護者の73.6%が「学校は家庭を重視している」と感じており、学校への対立意識はほとんど見られません。

教師が保護者に向けた自由記述には、

「学校は子どもを一緒に育てる対等なパートナーであると考えてもらえたら」
「何かあればクレームではなく、相談という意識で声をかけてほしい」

という声が並びます。実はその願いは、保護者側も持っていたのです。

「小1プロブレム」の不安は、三者でまったく違った

就学接続の不安についても、三者はそれぞれ異なる次元を見ていることが分かりました。 教師が最も課題として挙げたのは「発達理解のズレ」27.4%、「保護者認識のズレ」24.3%、「情報共有不足」22.6%と大人同士のコミュニケーション問題でした。

保育士が最も不安に感じているのは「支援体制の引き継ぎ」42.4%で、園で積み上げた配慮や支援が小学校に届くかという制度的な接続への懸念です。

そして保護者の最大の不安は「友人関係」51.9%で、これは「学習についていけるか」20.8%の2.5倍にのぼります。 つまり、教師は「大人間のズレ」、保育士は「接続の仕組み」、保護者は「わが子の適応」という、まったく異なる次元で就学を心配しているのです。「小1プロブレム」という一つのキーワードが、三者の異なる不安を覆い隠してしまっている可能性があります。

新入生に変化を感じる教師も多数

また、教師の98.2%が「近年の新入生に変化を感じている」と回答しており、特に「感情のコントロールが難しい」73.0%、「集中が続かない」64.6%、「家庭の教育格差が大きい」62.4%という項目が上位に並びます。教室の現場で感じる変化の大きさが、保護者への警戒感につながっている可能性があります。誰も責任を押しつけていないのに、互いへの不信のような感覚が生まれてしまう——それが今回の調査で可視化された構造です。

教師が園に期待する準備は学力ではなく「集団行動のルール理解

保育士の約半数(50.8%)は、「遊び中心だから指導がないと思われている」と感じていると言います。さらに27.3%が「学力を軽視していると誤解されている」と回答しました。しかし、実際の教師の考えはどうだったのでしょうか。

教師に「園に最も期待したい準備」を一つだけ選んでもらったところ、最多は「集団行動のルール理解」の45.6%でした。そして「学力の基礎」を選んだ教師は、わずか1.3%。さらに約2割の教師が「期待しすぎるべきではない」と答えています。 つまり、保育士が「学力を軽視していると思われている」と感じているのとは正反対に、教師はそもそも園に学力を期待していないのです。

保育士の心配は、少なくとも「学力」の点においては、実像とかけ離れた思い込みである可能性が高いと言えます。 保育士からは自由記述で、

「保育園にどこまで子どもを育てておいてほしいと思っていますか」
「入学してすぐに子どもが壁にぶつかることは何ですか?それが分かったら卒園までに対策しておきたい」

といった、教師への切実な問いかけも多く寄せられました。教師と保育士の間に、日常的な対話のチャンネルが乏しい現実がここに表れています。

保護者の半数が「生活の場」と園のことを評価する

保護者が園をどう見ているか、という点でも大きなズレが見つかりました。 保育者に「保護者は園をどう捉えていると思いますか」と聞くと、最多は「人によって大きく違う」42.4%で、「生活の場」と推測した保育士は20.5%にとどまりました。

ところが実際に保護者に「園に最も期待する機能」を尋ねると、「生活の場」が50.6%でトップ。「預かりサービス」19.7%、「教育機関」13.8%を大きく引き離しています。 保育士の推測(20.5%)と保護者の実像(50.6%)の差は約30ポイント。保育士は、保護者が園を「預かり先」としてみているのではと警戒しつつ、「生活の場として深く評価されている」という事実を実像以上に低く見積もっているようです。

保護者の自由記述には、

「6年間ありがとうございました!下の子もよろしくお願いします」
「いつもきめ細やかに見てくださり、感謝しております」
「息が抜けず大変だと思います」

といった感謝と労いの言葉があふれていました。「ありがとう」という言葉を含む回答が49件、「感謝」が25件と、289件中の約25%が感謝の言葉で占められていたのです。

保育士が感じている不安と、保護者の実際の評価の間には、深い非対称があります。 一方、保育士から保護者へのメッセージは一貫していました。

「就学というと、どうしても学習面に目が向きがちだが、焦らなくて大丈夫」
「まず、優先すべきは情緒の安定。自分の気持ちをある程度理解し表現できるようにならなければ、友だちとの関係を築くことや教育を受けることにエネルギーを割けない」

という、温かくも力強い声が並んでいます。

三者の言葉が、もっと届くようになれば——調査が示す未来への問い

今回の調査で浮かび上がった「ズレ」に共通しているのは、どれも不信や対立から生まれたものではなく、互いへの信頼や感謝、そして協働したいという願いが存在するということ。

本調査は、小学館『みんなの教育技術』『ほいくる』『HugKum』三媒体の合同アンケートとして、2026年4月に実施・公表されたものです。三者を同一の設計で調査したアンケートは希少で、相互認識のすれ違いを可視化する素材として、子育て・教育に関わるすべての人にとって示唆に富む内容となっています。

調査対象:小学校教師 226名 / 保育者 132名 / 保護者 549名  (合計907名)
調査方法:小学館『みんなの教育技術』『ほいくる』『HugKum』各媒体のWebサイトを通じたアンケート調査
調査期間:2026年2月~3月

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文/HugKum編集部

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