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きょうだい児が親から受ける愛情に劣等感を抱いてしまうこともある
障がいのある子どもにきょうだいがいると、障がいのある子どもに手を取られるあまりにきょうだいへの声かけが手薄になってしまうことがあります。そのことで、きょうだいが「大切にされていない・愛情をもらえていない」と感じたり、親がきょうだいに対して申し訳なさを感じたりすることもあります。
そしてもし、きょうだいが親からの愛情に劣等感を抱いてしまったら、障がいのあるきょうだいに対して攻撃的な気持ちを抱いてしまうこともあります。知り合いの中には、それが原因で遠く離れた場所に進学を決めて実家を出た人もいました。

私にも、障がいのある子どもと、そのきょうだいがいます。
これまで2人の間には、小競り合いが起きることはあったものの、仲違いをするほどではなく、現在も適度な関係性を保っているように見えますし、家族全員でのお出かけは今も楽しみにしてくれています。
しかし、このような関係性に至るためには、親として、いくつかの心がけが必要でした。
きょうだい児への愛情の伝え方
障がいのある子どもと比較して、手がかからないきょうだい児には、どうしても親の手が足りなくなってしまいがちです。それは、どうしようもない事実として受け止める必要があります。
しかしそれは、きょうだい児への愛情とは分けて考える必要があります。なぜなら、子どもへの愛情は、一緒に過ごした時間に比例するものではないからです。
子どもへの愛情は、子どもの考えや気持ちを主体的に察して理解しようとする姿勢に表れます。子どもに声をかけて、その様子を気にかけたり、思いに寄り添うために傾聴をすることで、伝わるところがあります。
私自身、きょうだい児には、してみたいことを尋ね、それを実現するために親としてできるサポートについて、積極的に伝えるようにしてきました。
子どもは、親に自分の気持ちを大切にしてもらっていると感じられると、心が安定しやすくなります。それは逆に、親がいかに手をかけたとしても、それが子どもの気持ちに寄り添っていないと、親の自己満足にしかならない可能性があることを意味します。
子どもが親から愛情をもらえていると感じられるかどうかは、手をかけられるかどうかよりも、子どもの心を尊重しようとする親の態度で決まるところがあるのです。
きょうだい児との親子関係の育て方
親子の関係性は、一緒に過ごす時間の量よりも、その時間の過ごし方に左右されます。つまり、きょうだい児と一緒に過ごした時間の内容や質が、後の親子関係を形成します。
とはいえ、障がいのある子と一緒だと、きょうだい児が望む過ごし方に応えにくくなってしまいます。そこで必要になるのが、きょうだい児と2人だけで過ごす時間を作ることです。
私はこれまで、障がいのない子どもと、年に1回以上の2人旅をしてきました。
テーマパークや野外フェス、キャンプなどに泊まりがけで出かけてきたのですが、その時間があったことで、今でも共通の趣味や話題が絶えない親子関係になりました。その時間は私個人にとっても、死ぬまで忘れない、かけがえのない思い出になっています。

実はそうした時間は、障がいのある子や妻ともとるようにしてきました。障がいのある子とも、毎年2人旅に出かけていましたし、妻とは時折カフェや映画などに行き、2人だけの時間を過ごすようにしていました。
家族は一つのコミュニティでありながら、夫婦、親子、きょうだいなど、個人の関係性の集合体でもあります。ですから、家族を大切にするということは、家族一人ひとりとより良い時間を過ごすことでもあります。
家族の中でコミュニケーションをとったときと、個別にとったときとでは、互いへの印象は変わります。個別に時間を過ごすことで、家族全員では楽しめないけど、2人なら楽しめる事柄に時間を使えるようになります。それは結果的に、私自身にとっても、幸せを感じる時間にもなりました。
家族に障がいがあると、一人ひとりの心にも様々な思いや感情が生じます。だからこそ、子どもやパートナーと個々に過ごす時間が大切になります。一対一だからこそできる過ごし方があり、かけられる言葉があるからです。
そういう意味で、障がい児のきょうだいへの配慮を考えることは、どのようにして家族を大切にするのかというところに、結局は行き着くのかもしれません。
きょうだいの関係性は親の介入で決まる
きょうだい児には、障がいのある子どもに対して誤解が生じることがあります。それは障がいのある子どもの言動に悪意を見出したり、発達に対して努力不足だと結論づけてしまったりする形で表れます。
「人の気持ちを考えようとしていない」
「努力しないからできるようにならない」
という見かたで腹を立てることがありますが、そう感じるのも無理はありません。
障がいへの理解は、親でさえ時間がかかるので、子どもであるきょうだい児が、それを理解したり受け入れたりするのは現実的ではないからです。そのため、親の介入が必要になります。

きょうだい児には「障がいは生まれ持っての特性で、誰も悪くないし、努力で解決できないこともある」ことを、きちんと言葉で伝えなければいけません。障がいというものへの認識を家族で共有しておくことが、きょうだいの仲違いを予防するためには重要になります。
私は障がいのある子どもに対して「この子はきっとやってみたいことがたくさんあったのだろう」と感じています。ところが実際には、障がいのためにチャレンジすることさえままならないことがあります。特に不憫に感じるのは、コミュニケーションの難しさで、友だち作りや人とのつながりへの影響は否めません。
そうした私の思いを、もう一人の子どもに伝えています。障がいのあるきょうだいは、大切な家族の一員で、支えるべき存在なのだということを伝えておきたいからです。
しかし、そうした思いは、きょうだい児が親からの愛情を感じていなければ伝わりません。親からの愛情を自分から奪っている人に対して、理解したいという思いは生まれないからです。
家族一人ひとりとの時間を大切にすることが、きょうだい児に愛情を伝えるためには必要です。それは、ネガティブなことではなく、親自身を身近な幸せに気づかせてくれる、大切な時間でもあるのです。
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記事執筆
医療の分野で20年以上のキャリアを持つ作業療法士。広汎性発達遅滞がある子どもを成人まで育てた2児の父。著書『障がいのある子どもを育てながらどう生きる? 親の生き方を考えるための具体的な52の提案』(WAVE出版) はAmazon売れ筋ランキング 【学習障害】で1位 (2025.6.6)。
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