「庭のオシロイバナにエビガラスズメが飛んでくるのはなぜ?」小1の飯田凌成さんが自ら仮説を立てて、検証! 図鑑作りに込めた想いと子どもの知的好奇心を育てる家族のサポート【自由研究コンクール 小学一年生賞】

2025年に「小学館の図鑑NEO」と「HugKum」が開催した「小学生の図鑑・自由研究コンクール」。小学一年生賞の図鑑部門を受賞したのが、小学1年生(当時)飯田凌成さんの「エビガラスズメ図鑑~みんなにしってほしい蛾のみりょく!!」です。
家のオシロイバナに集まる「エビガラスズメ」を観察し、なぜ飛んでくるのかを考察、実験。興味を持ったことにとことん向き合い、知識を深める姿は研究者のようです。その背景には子どもの「なぜ」「どうやって」という疑問に、実際にその場に行って見て体験させる、ご両親の力強いサポートがありました。

毒のある蛾は少ない。みんなに蛾のよさを知ってもらいたい

――蛾を好きになったきっかけや理由を教えてください。

凌成さん 幼稚園年中の4月に、庭のプランターの下で、オオミズアオを見つけてから蛾に興味を持ちました。そのときはきれいだなと思って捕まえて、観察して、家にあった図鑑で調べたらオオミズアオだとわかりました。蛾は地味なところが好きです。

茨城県の小学2年生・飯田凌成さん。

――自由研究のテーマを「エビガラスズメ」にしたのはなぜですか?

凌成さん うちに咲いているオシロイバナにたくさん来ていたからです。あとはみんなに蛾のことをもっと知ってもらって、蛾のよさを広めたいと思いました。

凌成さんのお母さん 「蛾が好き」と話すと、「蛾には毒があるよね」と言われることもあるみたいです。本人としては、好きなものを否定されると悲しくなってしまうので、「蛾のよさを広めたい」と思っているようです。

――「エビガラスズメ図鑑」で「毒を持つ蛾は50〜60種類で、日本にいる蛾のたった1%」と知り、とても勉強になりました。蛾について知ることで、そうした誤解も減りそうです。

凌成さんのお母さん そう思います。

――凌成さんは、標本箱も作っているそうですね。いつから作っているのでしょう。

凌成さん 蛾を捕まえて標本箱に入れるようになったのは幼稚園年中の8月です。昆虫観察会で、ヤママユを捕まえて標本にしたのがきっかけです。

――標本にするのは難しそうですが、どうやってやり方を勉強しましたか?

凌成さん 昆虫観察会で習ったのと、YouTubeで標本の作り方を何回も見て、気づいたら自分でやれるようになっていました。最初はパパとママと一緒にやっていたけど、今は一人でやっています。

凌成さんが作った蛾の標本。これはごく一部で、自宅には20箱以上の標本箱がある。

――蛾は、どんなところに見つけに行っていますか?

凌成さん 家の近くや、常総市の公園にも行くし、沖縄、仙台、那須にも行きます。今年は北海道に行く予定です。蛾に詳しくなってから、いろいろな蛾を見つけられるようになりました。魚も好きだから、近くの田んぼや用水路で捕まえています。

――地域によって、飛んでいる蛾の種類は違いますか?

凌成さん はい。クルマスズメのように北海道から九州まで生息している蛾もたくさんいるけど、オオトモエは本州から南西諸島にいます。

「普段からどうしてかな、なぜかなと考えて、図鑑やインターネットで調べています」

――「エビガラスズメ図鑑」について、工夫したところはどんなところですか。

凌成さん エビガラスズメの口吻(こうふん)は普段丸まっているので、それを伸ばして標本にしたところです。

――「どうしてオシロイバナに飛んできたのかな」というページは、自分でいろいろな理由を考えていましたね。普段から「どうしてかな」「なぜかな」と考えることが多いですか?

凌成さん 多いです。そういうときは、自分で考えたり、図鑑を見たり、インターネットで調べたりします図鑑は小学館の『昆虫』『水の生物』『魚』と、『日本の蛾』(学研プラス)、『くらべてわかる蛾』(山と渓谷社)が好きです。YouTubeは『むしとりチャンネル』と『エマスちゃんねる』を見ています。

自由研究の1ページ。エビガラスズメがオシロイバナに飛んでくる理由について、まずは仮説を立てている。

――蛾を見つけるのもそうですが、捕まえるのも大変ではないですか?

凌成さん 速く飛んだり、高いところしか飛ばなかったりする蛾をとるのは大変だけど、低いところを飛ぶシャクガは網で簡単にとれます。10メートルくらいの高いところを飛んでいるときは、長竿というとっても長い網じゃないと捕まえられません。

――蛾はどんなところにいますか?

凌成さん 昼間は茂みに隠れているから、草が生えているところをパンパンって叩けば、パタパタって出てきます。

夜になったら、ライトトラップで捕まえます。気温が18度以上で風がなくて、月も見えない日はめちゃくちゃ蛾が来て、この間もベニスズメが来ました。朝になると、ライトトラップで捕まえた蛾を鳥が食べちゃうので、夜中の3時くらいにパパに見てもらいました。

――たくさんとれる条件があるんですね。では普段から月や風、温度のことを調べているんですか?

凌成さん はい。天気とか気温、捕まえた蛾の種類をノートに記録しています。

天気や気温、捕まえた蛾の種類を記録したノート。

将来の夢は南米に行って、タメリアンヤママユを捕まえて標本にしたい

生き物が好きな凌成さんは、アゴハゼやダイナンギンポ、メダカ、金魚、ドジョウ、うなぎなど、たくさんの生き物を飼育している。

――2年生になりましたが、今年の夏の自由研究はどんなことをやりたいですか?

凌成さん 房総半島以南の海に住んでいるヤツデヒトデについて、調べてみたいです。腕を切ると、またそこから再生したり、手の真ん中を切ったら二股に分かれたりするのを図鑑で見て、気になっています。

まだ捕まえたことはないけど、ヤツデヒトデは房総半島以南の石をひっくり返すと普通に見られます。

――詳しく知っているんですね。最後に、将来の夢を教えてください。

凌成さん 将来の夢は南米に行って、タメリアンヤママユっていう大きい蛾を捕まえて標本にしたいです。

――今年の自由研究も楽しみにしています。ありがとうございました。

「好きな本を、好きなときに」子どもがすぐに手に取れる環境づくり

続いては、凌成さんのお父さん、お母さんにお話を聞きました。普段はどんなお子さんなのか、そしてここまで好きなことを探究する姿勢は、どんな環境で育まれたのでしょうか。

凌成さんとお父さん。

――凌成さんは普段どんなお子さんですか。得意なことや性格を教えてください。

凌成さんのお母さん 常になにかに没頭しています。飛行機が好きだった時期は、『世界の旅客機捕獲図鑑』(イカロス出版)という図鑑を読みつつ、土日になると成田空港や羽田空港の展望デッキに通っていました。そこで飛行機の垂直尾翼を見て、「これは中国東方航空だ、ユナイテッド航空だ」「どこに行く飛行機で、どこに本社がある」とよく言っていました。

その後も貝が好きになると海で拾った貝を調べて、博物館の人に同定(生物学上の所属や種名)が合っているかを見ていただいたこともあります。凌成が初めて興味を持って図鑑を読んだのは、エイだったと思います。

――先ほどから図鑑のお話がよく出てきますが、図鑑が身近にある環境なんですね。

凌成さんのお母さん 好きなときに好きな本がとれる環境にしようと、リビング、寝室、廊下に本棚があります。図書館にもよく行っています。誕生日プレゼントも図鑑でした。

――今回の自由研究に関して、お父さん、お母さんはなにかサポートされましたか? されていたら気をつけていたことはありますか?

凌成さんのお父さん 私は写真撮影をしたり、夜中にライトトラップの様子を見に行ったり、届かないところにいる蛾を一緒にとってあげたりすることはしましたが、基本的には本人に任せていました。

あまり口を出すと反発されるので、文章を書く際も、「知っていることを全部並べてごらん。じゃあ文章にするにはこうしたほうがいいよ」「私が知らないことはきっとみんなも知らないだろうから、書いてみたら」と伝えるくらいにしました。妻は、レイアウトなどのアドバイスをしていましたね。

子どもの「なぜ?」「どうやって?」には、説明ではなく“体験”で答える

右上のスケッチブックは、「蛾のおもちゃが欲しい」という凌成さんのリクエストに応える形でおじいさんとお父さんが作ったもの。細部までしっかり描かれている。

――沖縄や仙台などに蛾を探しに行く話が出ましたが、普段はご家族でどんなところに遊びに行っていますか?

凌成さんのお母さん 子どもたちが行きたいところや、やりたいことができる場所に行っています。例えば、子どもに「牛乳って、どういう風に搾ったり作ったりしているの?」と聞かれたときは牛乳の工場見学をしたり、「しょうゆはどうやって作っているの?」と聞かれたときは、千葉のしょうゆの工場に行ったりしました。

――口で説明するのではなく、実際に足を運んで一緒に見るようにしているんですね。

凌成さんのお母さん そうですね。子どもは経験値が少ない分、口で伝えるだけではイメージがわきにくいようなので、見たほうが早いかなと思っています。ただ、子どもが疑問や興味を抱いたときにすぐにその場所に行けないと、その熱が冷めてしまうこともあるので、「ここに行ってみよう!」とすばやく案を出せるように、常にアンテナを張って情報収集しています

また、子どもの希望によっては遠出せず、家の近くの用水路で魚やドジョウをとる日もあります。

「自分の人生の20年ぐらいは子どもにあげてもいい」

――普段の子育てで大切にしているのはどんなことですか?

凌成さんのお母さん 子どもが大人になるまでにかかる期間は、だいたい20年ぐらいですよね。私が80年くらい生きるとして、そのうちの20年は子どもにあげてもいいかなという、子ども優先の考え方でいます。

――すごい! それはパパも同じ考え方ですか?

凌成さんのお母さん 一緒です。お互い仕事もやりつつなので、しんどいと感じるときや、子どもと遊んでいて寝てしまうときもありますが、そのような形で子どもと向き合っています。

撮影の合間も笑いが絶えなかった飯田さんファミリー。

驚くべき知識量の裏側には、ご両親の熱心で力強いサポートが!

取材の際、最初は緊張気味の凌成さんでしたが、好きな蛾やヒトデの話になると生き生きとし、たくさんお話をしてくれました。蛾の名前はもちろん、世界規模の生息地、生態に関することまで把握していて、その大人顔負けの知識量に驚かされました! 普段から自分で採集したり、図鑑で調べたりしてさまざまなことを吸収しているのだと感じました。

その裏側にあるのは、”自分の人生の20年くらいは子ども優先”と言いきるご両親の存在。子どもの疑問に対し、実際に現地で見たり体験させたりしていることで、より子どもの知識が深まっているのだと感じるお話でした。

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この記事を書いたのは

長南真理恵 ライター

子育てや教育、エンタメにまつわる方々への人物インタビューを多く取材・執筆。大人はもちろん、子どもたちから話を聞くのも好きです。3兄弟を育てる母でもあり、同じように子育てに向き合っている方たちが共感できたり、悩みや困りごとに寄り添えるような記事を発信しています。

撮影/田中麻以

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