「ねえ! やめて!」寝る前に今日も始まる喧嘩。親はどこまで入る? 私が“裁判官”ではなく“交通整理”をする理由《モンテッソーリ教師の子育てエッセイ》vol.8

子どもとの毎日は、カラフルで鮮やかな瞬間だけでなく、大変なことや葛藤も含めてさまざまな色(感情や体験)に満ちていますよね。時には、喜怒哀楽をうまく言葉にできない気持ちが、脳内をぐるぐるすることも。モンテッソーリ教師・杉浦あきえさんの連載「今日は何色?子どもと紡ぐ彩りデイズ」では、あきえさんご自身の子育て中の脳内をそのままエッセイとしてつづります。

連載8話目のテーマは「寝る前の喧嘩」。正直、ママはもう寝たい。どう対応する?

・杉浦あきえ:モンテッソーリ教師


・夫:同じ年で多趣味
・長女:10歳(2016年生まれ)、何かを考えたり言葉にしたりすることが大好き
・次女:4歳(2021年生まれ)、天真爛漫でおしゃべりが止まらない

寝ようとするタイミングで、なぜか大体始まる姉妹喧嘩

「さあ、そろそろ電気を消そうか!」

1日の終わり。家族みんなで寝室に入り、あとは眠るだけ。

「ああ、今日もお疲れさま! みんな、おやすみ」

そう言って電気を消そうとした、そのとき。

「ねえ! やめて! ここに来ないで!」

長女の声が響く。

「やめて〜! 勝手にどかさないで〜!」
「あたしも、ママの隣で寝たい!」

次女も負けていない。

始まった。今宵も、始まった。
寝ようとするタイミングで、なぜか大体始まる、寝室での姉妹喧嘩。

もちろん、喧嘩は寝室だけではない。朝食を食べているダイニングで。楽しく遊んでいたはずのリビングで。楽しく出かけていたはずの車の中で。「どっちが先に降りるか」をめぐって、エレベーターの中で。

寝る前は、みんな疲れている。眠い。姉妹喧嘩がヒートアップしやすい条件が、きれいにそろっている。何がきっかけだったのかはわからない。寝転んでいる長女と私の間に次女が入ろうとして、長女がそれを阻止しようとしている。

「ああ、いつものか」

心の中でそうつぶやきながら、少し様子を見る。

「ねえ! この布団も使わないで!」
「やめてー!」

声は少しずつ大きくなる。二人とも、自分の言いたいことを相手の言葉に重ねていく。どちらも負けじと語尾が強くなり、お互いの言葉が火に油を注いでいく。

私の本音を言えば、もう寝たい。

子どもたちに寝てほしいというより、私が寝たい。もう、目が閉じそう。

「そんなことで毎日喧嘩しないで」
「いつもこうなるなら、別々に寝ようよ」

早くこの場を収めるための言葉が、頭にいくつも浮かぶ。

でも、私が娘たちの喧嘩のときに、大切にしたいと思っていることがある。手が出ているわけでも、相手を傷つけるような言葉が出ているわけでもないときには、もう少しだけ見守ってみること。

一方で、身体や言葉の暴力があれば、もちろんすぐに入る。力の強い方、言葉の達者な方が勝つ「何でもあり」の状態は、子どもたちの不安や混乱につながってしまうから。

ベッドに横になったまま、真横で起きている争いを聞いていると、

「ねえ! ママ!」

助けと怒りにあふれた声で呼ばれた。

「どうしたの?」

知っているけれど、そう聞いてみる。すると、二人の口から言葉が飛び出す、飛び出す。われ先にと、自分の側から見えていたことを話し始める。こんなふうに姉妹喧嘩に入るとき、私がイメージしていることがある。

どちらが正しいかを決める裁判官ではなく、絡まった状況や思いを、1つずつ整理する人としてかかわること。私としては、「交通整理をする人」というイメージに近い。

交通整理、スタート

まず、一人ずつ話を聞く。

「何があったの?」

そう聞くと、二人から出てくる話は驚くほど違うことがある。大人から見れば、「いやいや、それはちょっと自分に都合よく変わっていない?」と思うこともある。途中で訂正したくなったり、「本当にそうだった?」と聞きたくなったりもする。

それでも、まずは最後まで聞く。ここは少し、耐えどころ(笑)。どれほど正しいことでも、その子の気持ちが受け止められる前には、なかなか届かないから。

長女が話し始める。

「私がね、こうやって…」

すかさず次女が言葉を重ねる。

「あのね! ねえ、ママ! あのさ!」
「今は〇〇ちゃんが話しているから、待っていてね。終わったら、あなたも話せるよ」

長女の話を最後まで聞いたら、次女の話も同じように聞く。

「あなたには、こう見えていたんだね」
「あなたは、こうしたかったんだね」
「ここが嫌だったんだね」

二人の話が食い違っていても、すぐに正しい方を決めない。まずは、それぞれに見えていたものと、それぞれの思いを並べてみる。

それから、「じゃあ、どうしようか」と投げかける。二人から出てくる意見を整理して、選択肢にしてみる。それでも決まらなければ、「こうするのはどう?」と私から提案する。この日は、私の提案で二人とも納得し、眠りにつくことができた。

ただ、こんな日はまれ。10回に1回、あるだろうか。

二人とも満足して眠れる日もあれば、一人が怒ったまま眠る日もある。次女が泣き、長女が寝るのを待ってから、次女の話を聞く日もある。

喧嘩が起きること自体が、きょうだいの関係が悪い証拠でも、親のかかわり方が足りない証拠でもないと思う。

人と一緒に生きていれば、すぐにはわかり合えないこともある。少し不満を残したまま、いったん離れることもある。それでも翌日には、また同じテーブルでご飯を食べ、いつのまにか隣で遊び始める。

きょうだい喧嘩をなくすことが、親の役割ではないと思っている。

どちらが正しいかを決め続けたり、毎回きれいに仲直りさせたりすることでもない。

危険なこと、してはいけないことには線を引く。そして、二人の中で絡まってしまった気持ちを、少しずつほどく手伝いをする。

裁判官ではなく、交通整理をする人として。

もちろん、いつも落ち着いて話を聞けるわけではない。「もういいから寝ようよ!」と言って、見守っている間に私が先に寝てしまうこともある。娘たちの「もう! やめて!」という大きな声で目を覚まし、

「えええ! まだやってたの?」

と驚愕する夜だってある。それも、一度や二度じゃない。

いつも完璧な対応をするのは難しい。それでも、子どもたちが自分の気持ちに気づき、言葉にして、誰かに受け止めてもらう。そんな経験を少しずつ重ねていけたらいいなと思う。

だから、いつもベストでなくていい。その日にできる、ベターなかかわりを選んでいきたい。

夏休み。いつもより一緒に過ごす時間が長くなれば、ぶつかる回数も増えるかもしれない。

「もう、今日何回目?」

そう思ったときには、きれいな仲直りまでたどり着かなくてもいい。危険なことを止め、それぞれの話を聞く。そこまでできたら、今日はそれで十分なのかもしれない。

今夜もどこかで、同じように子どもたちの間を交通整理している人がいる。

そう思いながら、私もまた、自分らしくベターを重ねていきたい。

前回の話はこちら

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プロフィール

杉浦あきえ モンテッソーリ教師

国際モンテッソーリ教師(AMI)

幼稚園教諭、保育士、小学校教諭。二児の母。

 

幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。著書に『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』(すばる舎)、『モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック』(宝島社)、『子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『子育ての“イラッ”“モヤッ”を手放す本』(小学館)。

Instagram @montessori_akie

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イラスト/カラシソエル

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