「職員室をおしゃれなカフェ」にしたら、先生たちも楽しくなって会話が広がった!全国から視察も来る兵庫県の公立小学校、考えて実行したのは図工の先生

学校の先生って厳しかったりマジメすぎたりする人いますよね……。けれど、図工の先生はちょっと異次元、楽しくて、親しみやすい先生が多くないでしょうか。兵庫県明石市の公立小学校・図工教諭の渡部公貴さん(ナベ先生)も、まさにそんな先生です。職員室にカフェを作ってしまった!学校のキャラクターを作って動画で配信!いったいどんな先生なの?東京に授業発表に来ていた渡部先生と対面して、お話を聞きました。

職員室が手狭になってフリーアドレスに。そこで「職員室をカフェ」に

――ナベ先生は、小学校の職員室にカフェを作った、と聞きました。そんなことしていいんですか?

ナベ先生 2022年に兵庫県明石市の今の小学校に異動したのですが、ちょうど地域の人口が急に増えた時期で、子どもも増えて教室が足りなくなるくらい。それに従って先生も増えたので、職員室もいっぱいになって、ひとり1つの机が入らなくなり、フリーアドレス(あいている机をどこでもだれでも使うシステム)になっていたんです。企業でフリーアドレスになるところはあっても、学校で、なんて驚きますよね。

4月に学校に行ったら、みんなロッカーからパソコンを出して、あいている席にすわって電源を入れる、という状態でした。職員室がカフェみたいになってしまっていて、ホワイトボードにもマーカーでカフェのマークみたいなのがシャレで描いてあって。先生たちはこの不便な状況を少しでも楽しむために、カフェみたいにして使いたいんだなぁ、と感じました。それなら僕がカフェみたいな内装にしちゃえ!って思ったんです。

当時の校長先生はどの先生にも「やりたいことをやっていいよ、責任は私が持ちます」と言ってくれるような心の広い方で、僕がカフェ風の内装にしたらどうか、と提案したところ、「いいね、やってみたら?」と言ってくれたんです。

本来こういう話は職員会議の議案にして全員にはかって、ということなのでしょうが、そんなかしこまったことをするより、ホワイトボードに書いてあったカフェのロゴマークをちゃんとつくってお披露目して見せて、先生方の反応を見てみようか、と。そこで、僕が直径90㎝くらいの某コーヒーショップみたいなロゴ看板をつくり、ホワイトボードに貼って、教頭先生ともうひとりの先生が布で隠してから「ジャーン!」って除幕式みたいに披露したら、先生方全員から「オーッ!」という歓声と拍手が湧き起こったんです。

僕が「このスペースの壁紙をレンガ風にして、このマークをつけてカフェ風にします!」と宣言すると、拍手喝采で「合意」となりました。秋にはレンガ風の壁紙を貼りました。翌年にはほかの先生にも手伝ってもらい、壁や天井をしっくいやペンキで塗装。天井に電球のカフェっぽい照明を付け、床にはフローリングのシートを張りました。

職員室の一角とは思えないカフェ風内装。この内装になってから学年を超えて会話が広がり、先生同士のコミュニケーションもアップ。全国から視察が来る職員室に

業者さんに頼んだらお金がかかるので、できるだけ予算を使わないよう、DIYで実現しました。年度をまたいで少しずつ、自分たちですすめたんです。転勤された先生が立派な長机を贈ってくださり、給湯室でお湯を沸かしてお茶を飲むこともできるスペースにして、カフェ風の職員室が完成しました。以前より気軽に先生同士が話せるようになり、教育面でもメリットが大きいと評判で、他の学校からも視察に来るようになりました。

給湯スペースもまるでカフェみたいな雰囲気に。食器棚も
ブルーグレーに色を塗って雰囲気満点

「いいこと考えた♪それ、やっちゃえ!」を合い言葉に

――既成概念にとらわれずに低予算で改革をした結果、先生方のモチベーションが上がった、ということですね。発想を自由にしたことで、マイナスをプラスにできた。学校の自由度が高いからできたことですね。

ナベ先生 そうですね、2022年度から、うちの学校では、すべての学年の目標に「やってみよう」を掲げています。2024年に校長先生が代わった後も、その精神は受け継がれて、教員らのアイデアを生かした独自の学習の取り組みが続いています。僕も、図工室での合い言葉を「いいこと考えた♪それ、やっちゃえ!」として、子どもたちの自由な発想を引き出そうとしています。

――かたつむりのキャラクター、デンちゃんが生まれたのは?

ナベ先生 僕は学校の「掲示」の役割もいただいていて、玄関のところを、子どもたちがワクワクするように、四季折々の飾り付けで飾っています。デンちゃんは、夏の飾り付けのときに作ったキャラクターです。細めに切った長い段ボールをくるくる巻いて、アルミホイルも使ってかたつむりのような形にしました。

夏のキャラクター、デンちゃん(ナベ先生のInstagramより)

うちの学校には、「クエスト」という取り組みがあります。子どもたちがワクワクするイベントやコーナーを発生させるのですが、クエストの内容は、朝の放送の時間やオンラインの全校朝会などで、いきなり説明するんです。そのほうがワクワク感が高まります。しかも、先生がしゃべるより、キャラクターがしゃべったほうが楽しいし、わかりやすい。デンちゃんに働いてもらっています。デンちゃんは夏のキャラクターですが、全部で6体のキャラクターをつくりました(笑)。

子どもが喜びそうなことはトライし、あまりウケなかったらひっこめる。先生側の発想が自由で楽しげに図工をする姿を見せることが大事だと思っています。僕がそうしていることで、子どもたちが自由に自分らしい発想で生きていくヒントが得られればいいな、と思っています。職場の先生たちや保護者のみなさん、また児童に恵まれているからできることでもありますね。

絵を描いて褒められる」ことで積極的になれた

――ナベ先生は発想がとても自由ですし、絵も工作やDIYも「仕事だから」というより楽しんでいる様子です。小さい頃から図工が好きだったんですか?

ナベ先生 大得意でした。幼稚園の卒園アルバムでも、僕の自画像だけパッと見ただけでも完成度が高かったです。うちの母親は、1枚の絵を見せて「これに言葉をつけてみて」って言って、僕の言ったことをパソコンで打って、それを廊下に飾ってくれるような人でした。僕が絵を描いていると「すごーい!」ってリアクションしてくれて。うれしくて、ますます絵が好きになりました。幼稚園のときに絵が特賞になって、賞状をもらったことも、「絵に自信もっていいのかな」って思えるきっかけになりました。

僕は今はコミュ力が高く見られますけど、幼少期、人見知りで、ひとりで絵を描いていることが多かったんです。すると、クラスの子が寄ってきて、「うまーっ!」って言ってくれて少し仲良くなって。それで変わることができたんですよね。だから、絵の力っていいなって、どんどん絵が好きになりました。

中高のときも「絵がうまいやつ」とみんなから思われて、運動会のときの看板を描いて「看板部長」をやっていました。図工の力を、自分でも感じてきました。

幼少期から「図工の力」を実感してきたナベ先生

なんでも作れる力」を見せることで、子ども自身が成長に意欲を持ってほしい

――大学は美大に行ったのですか?

ナベ先生 絵を描くのは好きだけれど、画家とかイラストレーターとか漫画家を職業にするのは狭き門かもしれないし、つらくなるかもしれないし、図工をずっと好きでいたい気持ちがあるから、教えるほうに行こうと思いました。

子どもの頃、図工を通して自分に自信がついたから、自分がなんでも作れる姿とか、思いついたことを形にできる力とかを見せて、子どもたちにも自分の力に自信を持ち、成長に意欲を持ってもらいたいな、という思いも強かった。それで、兵庫教育大学に入学し、芸術系美術コースに進み、最初は「絵が上手な担任の先生」を目指しました。

僕は島根県の出身なのですが、教えるのは子どもがもう少し多い地域がいいかなと思って兵庫県にし、赴任先に阪神エリアと東播磨エリアを希望したら、明石市で教員として採用された、という経緯です。

――そして、晴れて新卒で図工の先生になったのですね。

ナベ先生 最初の12年はクラス担任の先生でした。国語や算数も教えるし、当然、たくさんの事務仕事や児童間のトラブル解決や保護者対応などもしてきました。

毎朝、黒板にメッセージつきイラストを描いたり、学級通信にも力を入れたりして、図工の力を生かしてはいました。しかし、学校のクラス担任の先生は事務仕事が多くて、自分のリソースの半分くらいを使うようなイメージがありましたね。でもそれも大事なことだし、人間関係のトラブルを解決しながら学級運営をしていくスキルもとても大事。クラス担任を長くやらせてもらったことで、学校全体の理解ができるし、子どもたちへの対応力も上がった。だからこそ、図工専科としての今があると思っています。

図工の専科になれるかどうかはタイミングもあるのですが、その前に僕は家庭科兼図工の専科の教員も2年経験しています。ミシンとか学習したこともなくて猛勉強しました。調理は自炊していたからなんとかなるだろうと(笑)。これも大変でしたけれど、図工に通じるところもあるし、「作ることで生活を豊かにする」という家庭科のあり方も自分自身に合っていたと思いますし、楽しかったですよ。この2年を経て今の小学校に図工専科として赴任したんです。

――自由な発想で学校生活をワクワクさせるのが大好き。そんな図工の先生がいたら、子どもたちもワクワクしますよね。では、ナベ先生が実際にどんな授業をしているのか、後編で聞いてみました!

後編はこちら

「図工の発想力」は将来どんな仕事にも役立つ。経験を積めば苦手な子も大丈夫!話題の図工教員が保護者に「お願いしたいこと」
前編はこちら 子どもたちの「自由な発想を広げる」ため、テーマは限定しない ――ナベ先生が今の学校に赴任し、図工の技術を...

お話を聞いたのは

渡部公貴さん(ナベ先生) 公立小学校図工教員

2008年、兵庫教育大学芸術表現系美術コース卒業、兵庫県明石市の小学校教員に。2022年から現在の小学校に図工専科として赴任。職員室をカフェ仕立てにした先生として話題に。

子どもたちの自由な発想や表現を大事にする授業を大事にしている。

https://www.instagram.com/nabe.zukou/

この記事を書いたのは

三輪泉 ライター

インタビューを中心に教育、子育て、医療、介護、食などのテーマで WEB・雑誌・書籍などの記事を執筆。お話を伺う方にたくさんの学びをいただいています。社会福祉士、法定成年後見人、中学校・高等学校教諭一種免許状、生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)

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