発達障害の特性を活かして就職するとは?専門キャリアカウンセラーが語る就労までの道筋

社会は発達障害者の就職を支援する方向に動き出しています

私は、発達障害専門のキャリアカウンセラーをしています。これまで200人以上の就労に関わってきました。

おそらく、日本で唯一の発達障害専門のキャリアカウンセラーではないかと思います。

キャリアという視点から、基本、大学生以上の発達障害の傾向がある方を対象にカウンセリングを行い、障害があるゆえの就労に関する悩みや、心理面のサポートをしています。

「発達障害」を抱えたお子さんを育てている方が、最も気がかりなのはお子さんの社会での自立ではないでしょうか。

私の経験を踏まえて、現在の発達障害を抱えた方の雇用の実態についてお伝えしましょう。

AIが事業に活かされる時代の到来。発達障害者の就労の未来は明るい!

民間企業や公的機関は、働く人の一定割合以上の障害者を雇うことを義務づけられています。

これを「法定雇用率」といい、平成30年4月、5年ぶりに改定され、2%から2.2%とに引き上げられました。障害者の社会参加をさらに後押しするためです。

これまで、知的障害、身体障害だけに適用されていた障害者の雇用義務ですが、今回、対象として精神障害者が加わり、「精神障害者保健福祉手帳」を所持する発達障害者も含まれることになりました。

残念なことに、過日、中央省庁が雇用する障害者数を偽って報告していたという、障害者雇用に関する由々しき問題が発覚しました。せっかく活性化してきた障害者雇用の動きを阻害してしまうとしたら、その罪は重大です。

発達障害者の就職定着率は高い!

しかしながら、他の種類の精神障害に比べて、発達障害者の定着率が20%も高く、勤怠や職務能力も高いことを知る企業は、発達障害者の雇用に早くも前向きに動き始めています

障害者枠での就職を目指している発達障害のある人には追い風となる機運が高まってきています。

これから求められるのは、多様性のある社員がそれぞれの実力が発揮できる「共生社会」です。

また、これからはAIがどんどん事業に活かされる時代です。データチェックのような細かい検証作業が特性に合っている発達障害者の活躍の場が増えることでしょう。

「異能(健常者とは異質な脳の機能)」を活かすことで、定型発達者(健常者)には捉えきれない問題解決の糸口が見つかる可能性があることが企業に理解されれば、発達障害者の雇用はさらに進むことが考えられます。

なかなか一足飛びには実現しないかもしれません。それでも、敢えて言います。 「発達障害者の就労の未来」は明るい!

これまで200人以上の就労に関わってきて、発達障害の方に適切な仕事をしてもらえれば「戦力」となって、結果をだし、企業の力を伸ばしてくれることを確信しています。

そして、親御さんが発達障害を抱えた方の就労の仕組みについて知っておくことが、その準備の第一歩となるのです。

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発達障害者の就労までの道筋は?どんな就職先がある?

就職先には3つの選択肢が

発達障害者の就職先には大きく分けて、次の3つのパターンがあります。

1 一般就労  2 障害者枠就労  3 フリーランス

1 一般就労

障害者であることは伝えず、特別な配慮や支援を受けずに企業で働くことです。

ハローワークの求人には「一般枠」と「障害者雇用枠(以後、障害者枠と表記)」があります。

「一般枠」の1番のメリットは、「障害者枠」よりも求人が遙かに多いことです。

発達障害の方が得意な「一人完結型」の仕事や専門職もたくさんあります。

インターネットビジネスの進展とともに、在宅やテレワークが増えれば、外出が苦手だったり、人間関係の構築が難しくとも、専門的な仕事が得意な発達障害の方には、理想の働き方のような気もします。

デメリットは、障害の特性を配慮してもらえることが少ないことです。

特に、中小企業では労働組合がないことも多いので、体調が悪くなってしまったときになどに、仕事を休んだり、異動願いを出すのが難しい可能性があります。

また、中小企業では、大企業と比べて、いろいろな仕事を任せてもらえますが、同時並行やマルチタスク(複数の仕事を状況に合わせて、切り替えながら実行すること)が多いので、発達障害の方には厳しいことでしょう。

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2 障害枠就労

「障害者枠」に応募するには、障害者手帳の所持が必須となります。障害者手帳を所持している方は、「一般枠」・「障害者枠」どちらにも応募することができます。

「障害者枠」があるのは、障害者雇用促進法という法律で企業が雇用する労働者の法定雇用率(現在は2.2%)に相当する障害者を雇わなければならないからです。

当然ながら、「障害者枠」で就職した場合は、自分に障害があることが企業にオープンになります

「一般枠」の場合に障害をオープンにするか、クローズにするかは任意です。

実は、「障害者枠」の多くは、大企業やその系列会社が多いので、安定しているのが1番のメリットです。 また、障害者雇用の実績があるので、障害特性に対する理解もあり、残業もないところがほとんどです。

デメリットは職種がかなり少ないところです。 また、発達障害の方にも、比較的簡単な仕事を任せることが多いので、モチベーションの維持が難しい面があります。

3 フリーランス

フリーランスという、雇われない選択肢もあり、こだわりを活かして、やりたいときにやりたいことをやるという部分では発達障害者に向いています。

しかしながら、仕事を売り込む営業的なこと、税金処理などの事務的なことなど、発達障害を抱えた方が比較的苦手となる事も自分でやらなければならないので、パートナーを見つけて起業する方が、可能性が高いように思われます。

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発達障害者の特性に合った仕事を選ぶための「就労支援機関」とは

発達障害者の就労が難しいと言われるのは、既存の求人に、無理やり当てはめようとするからです。

発達凸凹が一人ひとり異なり、特性の違う発達障害の方に、限定された業態・職種の仕事をさせようと思うとミスマッチが生じます。

もともと興味・関心が狭い範囲に集中する発達障害の方が、興味とは程遠い仕事に付けたところで、長続きするはずもなく、成果が望めるわけもありません。

個々の特性に合った仕事を見つけるには、発達障害のことはもちろん、企業のことを良く知る「就労支援機関」の支援員のサポートを得ることが必要です。

 

本人と企業の「通訳」的な役割-就労支援機関の選び方

発達障害の方の場合、本人と企業の間に立って、言いたいことの「通訳」をしてくれる就労支援機関と繋がることは、とても重要です。

特に、就活の段階で、最終段階のサポートをしてくれる 就労移行支援事業所の利用は、ぜひお勧めしたいところです。その選び方で人生が左右することもあり、しっかりと見極めたいものです。

 良い就労支援機関の選び方ポイント

① 発達障害者の就労に特化した就労移行支援事業所であること

② 職場体験実習を重視したサービスを提供している就労移行支援事業所であること

③ 企業に対して、利用者の特性を正確に伝え、成果を出せる「職務の切り出し」を提案できる支援員がいること

④ 利用者が就職した後にも、企業単独では対処が困難な課題が生じたときに、定着支援が可能な就労移行支援事業所であること

 

就労準備でいちばん大切なのは、良好な親子関係

キャリアカウンセラーとして多くの発達障害の方、また、その傾向がある方と接してきた中で、親子関係がキャリアの意思決定を阻んでいるケースがしばしば見られます。

親は、子どもに「あなたのため」と束縛をし、子どもは親に言われたままに苦しくてもガマンするといった、「共異存」の関係が隠れていたり、反対に、親に対して心を開かない、親のアプローチを拒否するといった「回避依存症」が見られる場合もあります。

発達障害の特性の一つとして、相手との距離感のつかみ方が難しいことが原因といわれていますが、「しつけ」や「教育」という建前で、親が子どもの意思を摘んでしまい、親子関係がうまくいっていないケースは少なくありません。

大切なのは子どもをひとりの人間として尊重する姿勢

子どもの自立性を尊重しつつ、愛着を育む適度な距離感が、発達障害のある子どもの就労の未来を切り開きます。

私が接してきた方達も、親御さんが子どもの人格を自らと異なるものと認め、発達障害の特性をしっかりと理解されている方は、親子関係も良好で、就労までの道のりがスムーズでした。

発達障害の特性としての弱みを受容するだけでなく、わが子にどういった強み=適性があるのか、その適性を活かすために、弱みをどうカバーするかをお子さんと共に考えていくことが大切です。

 

文/木津谷岳(きづや・たけし)

発達障害専門のキャリアカウンセラー。19年間のデパート勤務を経て、一般企業の人事に転身。発達障害者雇用支援アドバザーとして、企業コンサルタント、セミナー講師として活動中。

専門キャリアカウンセラーが教える「これか「これからの発達障害者雇用」

木津谷岳・著 小学館・刊

発達障害者の就職、雇用についてもっと詳しく知りたい方へ。採用から働き方までがよくわかります。就労の成功例も掲載しています。

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